この作品は、ある昔話をカイメイでリトールドしたものです。
 以前に書いたレンリンの昔話リトールド【レンと不思議な馬】と同じく、もともとの昔話の主人公をカイメイに変えて、自己流でアレンジしながら語ったものです。
 なお、今回はカイトとメイコ以外のボカロキャラは出てきません。
 カプものですので苦手な方は避けてください。


 昔話リトールド【地下の国の魔法使い】

 むかし、むかしのお話です。
 とある王国の首都の近くに、大きな農場がありました。働き者の夫としっかり者の妻には、カイトという男の子がいました。二人に見守られて、カイトはすくすくと成長しました。
 ですがカイトには、どうしても気になることがありました。両親はとても優しく――といっても、イタズラをした時は怒られましたが――カイトに対して、どこか遠慮のようなものがあるのです。それに、時々遠くを見ては悲しそうな表情になることがありました。
 更に、カイトが一定年齢になると、何故か両親は家庭教師を雇い入れて、カイトに高度な教育を受けさせたのです。それも、どう考えても、農家の跡取り息子には必要のないと思える教育ばかりですし、この家に家庭教師を雇えるほどのお金があるようにも見えません。
「お父さん、どうして僕にこんなに勉強をさせるの?」
「お前は勉強をする必要があるんだ、カイト」
 カイトにはわけがわかりませんでした。が、父親に逆らう気にもなれなかったので、言われたとおり、勉強を続けました。
 やがてカイトは十八歳になりました。そしてある日のことです。朝、起きて両親のいる部屋に入って行ったカイトに、両親は深刻な顔で話し始めました。
「カイト、大切な話がある。今まで黙っていたが、お前は俺たちの本当の息子じゃないんだ」
 カイトは呆気に取られましたが、どこかでその話を納得していました。
「じゃあ、僕は捨てられていたの? それとも、実の親を亡くしたの?」
「そういうことじゃないのよ、カイト。あなたは事情があってこの家に預けられていたの。でもあなたのご両親は、もうあなたを呼び戻せると判断したのよ。そして今朝、迎えの馬車が来たわ。あなたはそれに乗って、実のご両親の許へ行きなさい」
「……どうして預けられていたの?」
「それは俺たちの口からは離せないんだ。実の親から聞きなさい」
「家に来ていた家庭教師、あれって……」
「お前の実の親御さんがよこしたものだ。いずれお前に必要になるだろうからと。お前の養育費も払ってくれていたんだ。カイト、お前の実の親は事情があって、お前を手元に置いておけなかった。だからといって、お前を嫌っていたというわけではないんだよ。むしろ誰よりも愛していたんだ。そのことを疑ってはいけない」
 カイトは家を出ようとしましたが、足を止め、振り返りました。両親の目には涙がにじんでいました。
「ねえ、父さんと母さん。僕は……」
「カイト、お前はここに戻って来てはいけない。いいから早く行きなさい」
 辛い気持ちでいっぱいでしたが、カイトは家を出て、迎えの馬車に乗りました。


 カイトを乗せた馬車が向かったのは、この国の王宮でした。王宮に到着すると、カイトは馬車から降ろされて、謁見の間へと連れて行かれました。そこにあった玉座にはこの国の王と王妃が座っていましたが、カイトの姿を見ると二人とも立ち上がり、こちらに駆け寄ってきました。
「お前がカイトか! カイトなんだな!」
「こんなに大きくなって!」
 カイトの実の両親は、この国の王と王妃でした。つまり、カイトはこの国の王子だったのです。突然明かされた真実に、カイトはただ呆然とするしかありませんでした。
 再会の喜びから両親が落ち着くと、カイトは知りたくてたまらなかったことを尋ねました。
「どうして、僕をあの家に預けたの?」
「それは……話すと長いことになるが」
「教えて。どんな長い話でも構わないから」
 カイトの実父である国王は、ため息をつくと、話し始めました。
「あれはお前がまだ二つの時だった。この国の外れには、邪悪な魔法使いが住むという、深い森がある。私はまだ若くて恐れ知らずで、その森で狩りをしていた。そして、迷って出られなくなってしまったんだ。
 困っている私の前に、白い髭の老人が現れた。そいつこそが件の魔法使いだったわけだが。そして言ったんだ。『家に帰った時に、お前を最初に出迎えた物をくれるというのなら、この森を出る道を教えてやろう』と。私はそれを承諾した。いつも私が王宮に帰る時、真っ先に出迎えるのは犬だからだ。もちろん犬のことは可愛かったが、命には代えられない。
 ところが、私が王宮に戻った時、よりにもよって真っ先に出迎えたのは、よちよち歩きのお前だった。私は自分の愚かさを悔やんだ。こんなことになるというのなら、絶対に承知などしなかったのに!」
 カイトは聞かされた話に唖然とせずにはいられませんでした。
「じゃあ、その魔法使いの目をごまかすために僕を王宮から離したの?」
「……そうだ」
 カイトは一応、話の流れに納得はしました。
「でも、それなら僕を呼び戻していいの? その魔法使いが諦めたってどうしてわかるの?」
「それに関しては多分大丈夫だ」
「どうしてわかるの?」
「どうしてもだ」
 カイトは重ねて尋ねましたが、国王は答えてはくれませんでした。


 その疑問が解けたのは、その日の夜遅くでした。寝付けずにいたカイトが、夜の王宮内を出歩いていると、古株らしき侍女たちの噂話が耳に入ったのです。
「王様も王妃様もお喜びだけれど、本当にあれでいいのかしら?」
「しっ、滅多なことは言うもんじゃないよ」
「でもやっぱり、どうかと思うのよ。だってあれじゃ、自分たちさえ良ければいいってことじゃない」
「ああ、そりゃ、わたしだっていい話とは思わないね。自分たちの子供の代わりに、他所の子供を渡して身代わりにするなんてのは」
「しかもその身代わりになった子供の親に、王子様を育てさせたなんて、どう考えても酷な話じゃないの」
 カイトは思わず扉を開けて、部屋の中に踏み込みました。
「ねえ、今の話って本当なの!?」
 カイトの姿を見て、侍女たちはしまった、という表情になりました。そんな二人に、カイトは詰め寄りました。
「教えて! 僕は真実が知りたいんだ」
 侍女たちは顔をみあわせて話すことをためらいましたが、カイトが何度も何度も頼み込むと、根負けしたのか詳しく教えてくれました。
 魔法使いとの契約により、国王は我が子を渡さなければならなくなりました。ですが、息子を渡すことはできませんでした。故に国王は一計を案じました。とある農家の子供と、自分の子供を交換したのです。カイトは農家に預けられ、カイトの育て親の子供は、王宮に連れて来られました。そして、「国王の子」として、魔法使いに渡されてしまったのです。
 話を聞いたカイトは呆然としてしまいました。だから、育ての両親はよく悲しそうな顔をしていたのです。きっと、引き換えになった我が子のことを案じていたのでしょう。それなのに、そんなことは一度も口にしませんでした。
 カイトはたまらなくなりました。カイトを育ててくれた両親の実の子供は、その恐ろしい魔法使いに連れて行かれて、無事かどうかもわかっていないのです。本来の原因である自分は、ここでこうして安穏としているのに!

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

昔話リトールド【地下の国の魔法使い】その一

まだめーちゃん出てきませんが、カプものですのでタグに入れておきます。

今回は思い切って冒頭の部分をかなり変えました。実際の話は、王様が道に迷ってるところからスタートします。また、もとの話だと育て親は実子のことをどう思ってるのかまでは出てこないんですが、「それはないよ」と思ったので設定変更。

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閲覧数:431

投稿日:2011/06/20 19:03:05

文字数:3,051文字

カテゴリ:小説

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