*亜種・崩壊注意*

 朝、泣き喚く奴を預けて脱兎の如く逃走してしまったが大丈夫だっただろうか…。
 不安を感じながらも待ち合わせの店へ。
「あ!マスターここです!」
 漫画なら花がポンポンと出てきそうな満面の笑みで帯人が迎える。頭の上に青が見えるからきっとちびが乗ってるのだろう。いつもは手を振るなりしてもっと喜んで迎えてくれるのだがちびが落ちないように遠慮してんのか?

「ますたぁ!おかえりなさぁい!」
「へぶ!?」
 顔にくっつくな、落ちる!息止まる!
 首根っこをつかんではがすと、コートの上にあつらえたようなデザインの上着を着ていてあったかそうだった。
 自分がいない間にアイスを食べて生えてきたのかと思ったら帯人が作ったらしいことを必死に説明される。
 小さい子は何やっても全力だな。

「にしても器用だね、こんなちまいの。」
 冷凍室で生まれるのに寒いとかあるのだろうか?北極で氷食って生活してる野生の種っ子がいてもおかしくないんじゃないかと思う事がある。
「片目が見えない分次官はかかりましたけどね。」
 手を上着から出さない理由がわかった気がする。
 とりあえず今日もアイスはブルーベリーにしてやろう。

 必要なものをかごに突っ込んでレジに並ぶ。自分の前の人でで交代の時間なのか転院が入れ替わる。おばはんからさわやかな笑顔の染めているのか地毛なのか茶色とかじゃなくてほんとにバラのような赤毛の高校生位の少年になる。
「いらっしゃい、ま…す…た…?」
 オタクかと一瞬思ったが違う。驚いた時の表情はものすごく見覚えがあった。
「にーちゃんだー!」
 そう、アカイトだ。あんまりにもさわやかに笑ってるしそんな顔1度も見てないからわかんなかった。雰囲気もがらりと変っていたし…真面目にさっきまでの彼はどなた?と言いたくなるほどだ。

「うっわ!めずらしー!」
 いつもいない間にバイトしてるので働いてるのを見るのが初めてだ。
 名札には赤糸と書かれてあった。…下の名前が気になる。
「…その、今日クリスマスだろ?バイト代上がるし、これない人も多いからさ…2800円になります。」
「そっか。今日自分がご飯作るから夜には帰ってきなよ。」
「朝帰りするほどヒネてねーよ。ありがとうございました。」
 さっさと帰れ、という目だったので名前のことは後で聞くとする。

 速攻で帰ってビーフシチューをなるべく急いで作る。煮込んだ方がおいしい詩できる限り抵抗したい。
「さて、みんなでクッキーの型を抜こうか。」
 ちびがジンジャーマンクッキーを食べれるかどうかわからないので普通のクッキーも作る。
「ますたぁ・・・」
 困ったようなちびの声が聞こえる。

 風呂も入ってないのに食べモノの上に置くのは荒れなので作業服を作って着せたのだが、唯一出ている顔が真っ白だ。帽子も、確か白じゃなくて青で作った気がしたのだが…
「型がね、これ以上ね、沈まないよ?」
 確かに半分までしか埋まってない。しかも肩の上にしがみついて全体重をかけて、だ。トビはねろと言いたいところだがさすがにこんな細い足場じゃそれだと食いこんでいたそうだ。最悪、型の内側に落ちてハマってしまうかもしれない。
「一寸待ってろ。」
 仕方ないので小麦粉を少し水でこねる。
 うどん生地・・・もとい小麦粘土だ。
 作業中これでちびには遊んでもらおう。

「へぇ、亜種マスターって何でも玩具にするよね。おいしくなかったさつまいもは判子にするし。」
「食べ物を無駄にするのはあまり好まないんだが…」
「でもさすがにあのイモは食べられる代物じゃなかった。」
「…だね。」
 中がとろけるほどたき火で焼いても甘くならない芋をどう食えと。…粗末にしてごめんなさい。

 ぴー、ぴー、ぴーっ!
 レンジから音が鳴る。ケーキが焼けたようなので他のやつらにつまみ食いされない所に移して冷ますと型を抜いたクッキーを焼いた。流石にデコれるほどようではない視しようとも思わないので抜いただけである。カイト作成のだけはちゃんと顔やボタンもあるし普通のクッキーもかわいく作られていた。

「きらきら!ぼくも、つかう!」
「アラザンのこと?でもそれうどんだし…僕が抜いた奴につけてみる?」
 あー、子供ってビー玉とか光物好きだよな。というかお前もうどんっていうか。既に絵の具まで混ぜて遊んでいたようで色が混沌としている。
 絵の具は絶対カイトが出しっぱなしにしたものだ。
「…ってえの具がついた状態でクッキー作るな!まず拭いてからだ!」
「絵の具ぐらい混ざってても平気ですよ。」
 さすがアイスに入れるだけの事はある。
「あのさ、人間は黒い絵の具一本飲んだら死ねるぐらい有毒なんだよ?」
 カオスな粘土はすでに十分黒に近い。毒に見えてくる。
「へー、そうなんだ?食紅みたいに使って平気だと思った。」
「…。」
 カイトがカイトならマスターもマスターだった。

 とりあえずティッシュが切れて取りに行くのが面倒だったのでウェットティッシュでふく。除菌もできて一石二鳥。
「ますたぁ・・・くらくら・・・・ゆらゆらぁ・・・」
 しまった、アルコールで酔ったか。
 ちびはその場で倒れて寝てしまった。様子を見てみるが大丈夫そうなので放置。このほうが静かで早い。

「よし、抜き終わった。」
 机とレンジを3追う踏むもすれば全部焼きあがるだろう。
 焼いてる間に使わなくなったモノの後片付けを済ませると、ちょうど3時にちびがおきてきた。…おやつをよこせと?
「帯人、何がいい?ブルーベリーは夜出すから他で。」
 ちびはバニラ、ブルーベリー、ストロベリーしか食べたことがないので聞かない。聞くのはもっといろんな味を知ってからでいいだろう。

「チョコがいいです。」
 じゃあ自分が好きなアイスにしよう。
「海達は?」
「えーと…リッチミルクってまだ残ってますか?」
「ありますよー。」
「じゃあ僕はそれで。」
「う~んと・・・最中!」
 各自にスプーンやアイスを渡して帯人の隣へ。

 例のごとく半分食べるためである。数時間おけばまた食べられるようになるのに絶対残したアイスは口にしないので仕方なくこうなるわけだがもう慣れた。
 今回は棒アイスなので棒を抜いて小皿に分けた。
 ちびはお腹いっぱいになって夕飯食べられなくなっても困るのでさらに自分と半分子。昨日も文句言ってこなかったしいいよね。

「ますたぁ、ぼくは、おなかね、ならなくなるけど、たりるの?」
 あ、やっぱきになってたか。ちびのちっこいまゆ毛が微妙に下がってる。
「大丈夫だよ。それにおやつでお腹いっぱいになったら夕ごはん食べられないよ。」
「ほほえましいねぇ。種KAITOそだてようかな?カイト解雇して。」
「ま、ますたぁ!?」
「その方がかわいい詩面白みがありそう。どこまでバカイトに育てられるかな?」
「ええ!?頭のねじ緩めてもいいですから解雇だけはやめてください!」
 …緩めたらほんとに馬鹿になるのだろうか?とはいても人工皮膚の下じゃ手だししようがないのだが。

「あははははは。冗談に決まってるじゃん、本気にしちゃってさー!大体種の入所法なんて知らないしねー、あはははは!」
「酷いです!」
 机をばしばし叩いて豪快に笑うマスターに起こりながらもホッとしてる涙目のカイト。
 君たちも十分微笑ましいと思うが。

「にしてもほんとどこで手に入れてきたの?種。」
「さあ。ぽっけにあったからついノリと勢いで使ってしまったが・・・持ち主が必死に探してるようならこいつを返した方がいいのだろうか?」
「別にいんじゃない?誰かのモノであってたまたまぽっけに入ったんだとしてもさ、常時配布中らしいしきっとおとした人もまた取りにいけるよ。」
 そうだろうか…なら、いいが・・・

「あーあ、私も欲しいなー。そんな子供から育てられるんじゃずーっと一緒に入れそうだし。」
「僕だってずっと一緒に居ますよ!」
「…ほら、大きさて気にカバンに入らないじゃない?」
 一瞬、真剣な顔して出す答えがそれか。というか連れてく気か。
「さて、ケーキー!」
「あ、だめだって!それ今日のデザート!」
「お固いこと言いなさんなって。さ、たべよー!」
 あんたが食うと全部なくなりそうで怖い。

 結局攻防はアカイトが帰ってくるまで続いた。

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「亜種注意」手のひらサイズの彼 その⑤「KAITOの種」

http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=onにて。
クリスマスネタ…というか2日目は次で終わる予定。
無駄に長くてすいません;

閲覧数:133

投稿日:2009/12/25 17:00:33

文字数:3,452文字

カテゴリ:小説

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