「VOCALOID HEARTS」~第21話・革命の胎動~
投稿日:2014/02/11 12:36:49 | 文字数:4,949文字 | 閲覧数:313 | カテゴリ:小説
皆さん、今晩は!
いよいよ5月か…また夏バテの季節が…
というわけで、今回は21話を投稿させて頂きました!
前回も含め、今回も最後まで拝読して下さった皆さん、本当にありがとうございました!
メッセージ並びに、ブックマークしていただいた読者様に重ね重ね感謝を!
僕は鏡音レン。
ここ暫くの間、毎日が驚く事の連続で何だか気持ちが落ち着かない。
今日もルナさんから告白されて…と言っても勿論¨愛の告白¨じゃないからね!
その後、僕は数年前にMARTへやってきたルナさんに初めて出会った時の事を思い出した。
…今でも覚えてるよ。
メイコ「…嫌よ!!」
カイト「めーちゃん、分かってくれ…ルナはもう俺達の敵じゃないんだ。今はMARTの一員で大切な仲間だ。」
メイコ「…大切な仲間、ですって?まさか忘れたって言わないわよね?この女は私やカイトの命を狙っていたのよ!?私達の目の前で仲間を殺そうとした時もあった!そんな奴を仲間にする?馬鹿言わないでカイト!」
メイコは厳しい表情と態度でカイトに迫った。
元トリプルエーの天音ルナを仲間に迎える?信じられない、といった感じに。
だがカイトは何とかしてメイコを納得させようと試みていた。
だがメイコのその表情は壁そのものだった。
カイト「ルナは変わったんだ。確かにこれまでの戦いで幾度と無く俺達とぶつかった。だけどMARTの事を知って、俺の思いを聞いて信じてくれた。ルナはめーちゃんの知る悪い奴じゃな…」
メイコ「嘘よ!信じないわ!ふざけないでカイト!」
カイト「気持ちは分かる、だけどめーちゃん…」
パチンッ!
きついビンタの音が、むなしく部屋に響き渡る。
不意の痛みで、カイトは思わず顔を押さえた。
カイト「痛っ…!」
メイコ「…今の私には、もう信用できないわ。カイトも、ルナも…!」
カイト「…待って、めーちゃん!」
メイコ「…もう知らない!!」
カイト「めーちゃん…!!」
遂にメイコは我慢できなくなってしまい、この場を飛び出した。その目に涙を浮かべながら
その後に残ったのは、沈黙だけだった。
棒立ちになったカイト。そしてずっと2人を見ていたルナが口を開いた。
カイト「めーちゃん……」
ルナ「…無理もありませんわ。例え貴方がそう思わなくても、あの人にとって私はいつまでも悪夢を植え付けた¨魔女¨なのですから。」
カイト「ルナ…」
ルナは暗く、重々しく言った。メイコが自分を憎んでいるのが誰よりも分かっていたからだ。
そこへ起床してきた鏡音レンの明るい声がやってきた。
レンはいつもと変わらず、カイト達に笑顔を向けようとしていた。
レン「おはようございま……あれ?カイトさん?」
カイト「レン君…」
レン「カイトさん、この人は?」
カイト「あ、ああ。この人は今日から俺達の…仲間になってくれる天音ルナさんだ。」
レン「初めましてルナさん、鏡音レンです!」
ルナ「…宜しくですわ、レン君。」
ルナは少し微笑んだ…といっても作り笑いだったが、何の抵抗も無くやってきたレンの方に歩み寄っていった。
だがそれを見たモモが突然ルナの前に立ちはだかった。
その場にいた全員が一体どうしたのかと思った。
モモ「…ごめんなさいルナさん。レン君に近寄らないで下さい。」
レン「…モモさん?」
ルナ「…貴方も、私を許していないのですのね?」
ルナはほんのちょっと、睨みつけるようにモモを見た。あたかも敵を見るような目で。
だがそんなルナにモモは動じていなかった。
モモ「いいえ……ルナさん、私はあなたの事を信じたいです。私はメイコさんのように、ルナさんへの恨みはありません…でも1つだけ無理な事があるんです。」
ルナ「…………………」
モモ「今のルナさんに、レン君へ近寄らないで欲しいんです。」
カイト「モモ、お前…」
ルナ「…どうしてですの?」
モモ「今のルナさんは…とても怖いんです。カイトさんからお話を聞いてルナさんは昔は悪い人だったけど、今は良い人なんだって分かりました。」
ルナ「え…?」
モモ「それでもルナさん、あなたの¨目¨がまだみんなに牙を剥いているように…見えるんです。だからそんな人を、レン君に近づけたく無いんです。」
ルナ「…そう。そうですわよね。」
モモ「ごめんなさい…どうか気を悪くしないで下さいね。」
ルナ「…いえ。貴方の言葉はごもっともですわ。私はこれまでずっと、無知の場所で無知の知識を与えられ、罪悪感も無く知らず知らず最悪の罪を犯してきたのですから。なら目や心が汚れているのも、必然と言う事ですわよね?」
モモ「ルナさん…」
ルナ「…私の¨目¨がそうなら、早く皆さんに近づけるように…心を入れ替えなければいけませんわね。」
ルナは目をつぶって、下斜めを向いたままゆっくり椅子に座り込んだ。
その日は満月の夜で、MARTの本部には明るい月の光が射していた。
カイトの方には見えていた。月光に照らされたルナの右目から落ちた小さな涙が。
この頃が、天音ルナにとって一番辛かっただろう。
自分の過ちの重さ。
それが改心したルナに、大きくのしかかった。
ルナ「私は…」
…そうだ、あれからもう何年が経ったのかな?
気がついたらルナさんのいる生活が当たり前に、ルナさんのいないMARTが考えられなくなっていた。
ルナさんが昔MARTの敵だったとか、もうそんな事は関係ない。
僕もみんなも、ルナさんの事が大好きだから。
今となっては、メイコさんも同じ気持ちの筈だ。
レン「ただいま!」
ルナ「ただいまですわ。」
いろは「あ、お帰りなさいですにゃ!」
メイコ「2人ともお帰りなさい。これから夕食の準備があるんだけど、手伝ってくれる?」
レン「分かりました!」
ルナ「勿論ですわ。」
メイコ「今日はね、ルナの大好きな月見団子を作ろうと思ってたのよ!」
ルナ「メイコさん、まだお月見の時期じゃありませんわよ。」
メイコ「いいのいいの。月見なんて別に時期じゃなくても良いじゃない。それに今晩は晴れだそうよ!」
ルナ「それなら、今夜はベランダでみんなと月見パーティーですわね。」
メイコ「良いわね、そうしましょ!」
ルナ「ふふっ、多めに作らないと団子の数が足りなくなってしまいそうですわね。」
レン「ルナさん、団子一緒に作りましょうよ!」
ルナ「よし、それなら私とレンで幾つ団子を作れるか競争ですわ。」
レン「負けないですよルナさん!」
ルナ「いきますわよ?」
レン「はい!」
メイコ「あの…ルナにレン君?」
ルナ・レン「はい?」
メイコ「まだ生地の準備すらできてないんだけど…?」
ルナ・レン「あ……」
メイコ「もう、2人ともせっかちなんだから。」
ルナ「ふふっ…!」
レン「あはははっ!」
私はMARTという大切な家族ができて…とても幸せですわ。
本当に良かった。こんなボーカロイド達と出会う事ができて。
みんな、ありがとう…!今の私は本当に、幸せだよ…!
そんな幸せに包まれていたルナに、一本の電話が。
¨プルルルルル…¨
メイコ「はい、こちらMART北部支局です。」
???「失礼ですが、そちらに天音ルナという方はいますか?」
メイコ「ルナですか?ええ、います。貴方のお名前は?」
???「申し訳ないのですが、ご本人でなければお話できません。ルナさんと代わって頂けますか?」
メイコ「分かりました。暫くお待ち下さい。」
ルナ「メイコさん、どうしましたの?」
メイコ「貴方に代わって欲しいらしいの。名前は本人じゃないと名乗らないって…」
ルナ「…代わりますわ。」
ルナは恐る恐る電話に出た。名前を名乗らない相手の電話に出るのはいかがなものか…
嫌な予感がする。
そう思うのとは裏腹に、ルナはちょっとした¨興味¨をもっていた。
???「天音ルナ、だな?」
ルナ「どちら様ですの?」
???「ああ、名乗る必要は無い。ちょっとした朗報と悲報を届けてやろうと思ってね。」
ルナ「何を…?」
???「朗報からいこうか。キミ達の大嫌いな理事会とトリプルエーは、暫くの間はMARTに手を出さないだろう。」
ルナ「…手を出さない?どういう事ですの?」
???「距離を置く事にしたのさ。例の¨銃撃事件¨によってな。」
ルナ「銃撃事件…カイト総長が襲われた、あの?」
???「次に悲報だ。天音ルナ、今日をもってキミはとある組織に狙われることだろう。」
ルナ「!?」
???「人気の無い場所を通る時は、せいぜい気をつけるんだな。」
ルナ「さっきから何を…」
???「月から舞い降りた女神、キミに幸あれ。」
¨ガチャッ、ツー、ツー¨
ルナ「…………………」
メイコ「ルナ、何があったの…?」
ルナ「…何でもありませんわ。私に対するただのイタズラ電話だったようですわ。全く最近のボーカロイドはモラルというものが欠けてしまっていますわ。」
メイコ「そう…」
メイコは分かっていた。ルナが明らかにごまかしているのが。
メイコはルナのように読心術をもっている訳ではないが、その感じからしてただの悪戯電話だったとは思わなかった。
ルナは何かを思い詰めたように、自分の部屋へと戻っていったのだった。
メイコはそれ以上、話を突っ込む事ができなかった。
そのまま夜が明け、いつもと変わらない朝を迎えたのだった。
今日でMART北部支局を離れ、東京の本部に戻る予定になっていた。
カイト「よし、準備もできたな。じゃあ出発しようか。」
メイコ「本当ならルカが帰ってくるまでいたかったんだけどね。」
カイト「仕方ないさ。いつまでも本部を離れている訳にはいかないからな。」
モモ「いろはさん、ルカさんに宜しく伝えて下さいね!」
いろは「分かりましたにゃ!帰り道は気をつけて、行きはヨイヨイ帰りはコワイですにゃ。」
カイト「おいおい…いろは、縁起でもないぞ。」
いろは「ごめんなさいにゃカイトさん。」
いろはは悪戯に笑った。こうしてMARTの一行は東京に帰るのだった。
再び、命を懸けた戦いの備えをする為に。
そして別れの時が来た。ルナは世話になったいろはに礼をした。
ルナ「お世話になりましたわ。」
いろは「いえいえ、またいつでも来て下さいにゃ。ルカさんも喜びますにゃ!」
リン「いろはさん、また遊んで下さい!」
レン「僕達のMART本部にも、いつか来て下さいね!」
いろは「嬉しいにゃ…鏡音ちゃん、また近いうちに会いたいにゃ!」
カイト「さあ、リンちゃんとレン君も行くぞ。」
リン「バイバイ、いろはさん!」
レン「さようなら、いろはさん!」
いろは「みんな、元気でにゃ!」
いろははとっても嬉しそうだった。だがそれとなく名残惜しそうな感じがしていた。
本当に短い時間であったが、それはリンとレンも同じだった。
別れの時が近づく。
でも東京行きの飛行機は待ってくれない。
MARTの一行は、いろはに見届けられてこの場所を後にした。
いろは(カイトさん、後は頼みましたにゃ。私達ボーカロイドの未来を、どうか…!)
カイト(いろは、任せろ。成し遂げるさ…俺達の手で必ず…!)
2人はまるで心の内で通じ合っているような想いを持っていた。
そしてそれは、未来への希望を託した想いだった。
全ては、アンドロイド達の未来の為に。
カイト達MARTは、これまでに無い果てしなく強大な敵に戦いを挑む。
たとえそれが、蟷螂の斧を振るような戦いであるかもしれないと、心の何処かで思っていても。
作品へのコメント1
ピアプロにログインして作品にコメントをしましょう!
新規登録|ログイン-
ご意見・感想
こんにちは! コメ遅れてごめんなさいませ。
さて、前半最後のお話ということで、後半につながる形で展開していきましたね。さて、狙っているのは誰なのか? 楽しみです。
そして、なにげに”いろは”さんの”にゃ”口調が好きだったりしますにゃ。私もシリーズ通して、ミクさんキャラの口調はほとんど”ミクミク”だったりしますので、結構くせになりますよね。
さて、後半は書き方を少し変えるとの事で、結構、興味津々だったりします。私は頑固に変えてないしなぁ。
ブクマも頂きました。ではでは~♪
P.S 天候不順で気温差もありますので、是非ともご自愛くださいませ。2012/05/02 16:05:53 From enarin
-
メッセージのお返し
enarinさん、今晩は!
いつもながらメッセージのお返事が遅れてしまい申し訳ありません(汗)
今回の21話でボカロハーツの前半が終わり、この物語の節目になりました。と言ってもまだ後半に入る雰囲気があまりしないままですが…w
ルナを狙う者の正体についても、ストーリーの終盤に明らかにしたいところですね。
いろはの感じはこのボカロハーツでは少し異色(?)のような感じになってます。enarinさんのミクも¨ミク¨が口調になってますよねw
口癖が無くても良かったようにも思いましたが、語尾に¨にゃ¨がつくキャラがあっても良いかなって考えました。
その方が魅力があって←
リア友の意見もあって、「より小説らしくしようか…」と思い、次回から文体を変えてみようかなと考えました!
どんな感じになるかは大体構想はできているのですが、良い方向に向かうのかが不安です…
ブックマーク本当にありがとうございます!
enarinさんのメッセージも大きなモチベーションになっています。
今回も拝読して頂いて、重ね重ねありがとうございました!
追伸:5月にも関わらずこちら京都は強く寒い風が吹いています…おぉ、さみぃ……
体調にも気をつけます!2012/05/13 18:33:14
オレアリア
オススメ作品10/23
-
或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』
雪の降る国 名将と名を馳せた
若き一人の 少女の話
権力も財産も 彼女はいらないけど
戦場へ…
噂だけはとおくとおく広がり 武勲をしらぬものおらず
或る詩謡い人形の記録『雪菫の少女』
-
高校デビュー
僕は今日高校デビューします
野暮ったい眼鏡はコンタクトにして
髪型も今風のおしゃれにして
服も雑誌を見て研究したよ
めざせリア充
高校デビュー
-
或る詩謡い人形の記録『言霊使いの呪い』
遠く 遠く 森の奥深く 住まうのは
双子の 魔術師 兄妹の 物語
一つの魂を 分けた 二人には
ただ半分ずつの力しか 与えられない
「片割れいなくなれば 力は一つになれるの?」
或る詩謡い人形の記録『言霊使いの呪い』
-
境地
勘違いばかりしていたそんなのまぁなんでもいいや
今時の曲は好きじゃない今どきのことはわからない
若者ってひとくくりは好きじゃない
自分はみんなみたいにならないそんな意地だけ張って辿り着いた先は1人ただここにいた。
後ろにはなにもない。前ならえの先に
境地
-
推し事
推しが尊い過ぎてヤバすぎる
マジでヤバいのどこがヤバいって
語彙力無すぎて
推しの良さが伝えきれない
誰か語彙力を下さい
推し事
-
幼なじみ
幼馴染みの彼女が最近綺麗になってきたから
恋してるのと聞いたら
恥ずかしそうに笑いながら
うんと答えた
その時
幼なじみ
-
水中歌
A 聞き飽きたテンプレの言葉 ボクは今日も人波に呑まれる
『ほどほど』を覚えた体は対になるように『全力』を拒んだ
B 潮風を背に歌う 波の音とボクの声だけか響いていた
S 潜った海中 静寂に包まれていた
空っぽのココロは水を求めてる 息もできない程に…
水中歌
-
Twilight ∞ nighT【自己解釈】
いったいどうしたら、家に帰れるのかな…
時間は止まり、何度も同じ『夜』を繰り返してきた。
同じことを何回も繰り返した。
それこそ、気が狂いそうなほどに。
どうしたら、狂った『夜』が終わるのか。
Twilight ∞ nighT【自己解釈】
-
ブラックペッパーナイト/短編
夜を胸いっぱいに吸い込む。季節は冬が近く、空気は冴え渡っている。
明日には地下へ向かわなければならない。この星ほどの夜景を後にして。
ギラギラした夜景と天空の月光が、星を食うように光っている。
高層ビルの上から見る夜景って言うのは、「沈み込みたくなるような衝動」を起こさせるものだ。
「何かお願いしてみたら?」と、彼女は言う。「最期の願いくらい、叶うかも知れない」
ブラックペッパーナイト/短編
-
【VanaN'Ice】背徳の記憶~The Lost Memory~ 2【自己解釈】
少女の後を追って建物の中に入ると、そこはまるでどこかの屋敷のようだった。
「ひ、広い…」
「…そう?普通ですよ」
「え…」
「むしろ…けっこう前に住んでた家に比べると…狭いほうです」
【VanaN'Ice】背徳の記憶~The Lost Memory~ 2【自己解釈】
初めての方は初めまして、オレアリアと言います! 最近、さりげなく名前変えました(笑)
様々なクリエイターさんの創作作品を見たい思いでピアプロにやって来ました。そのピアプロのユーザー様のおかげで、底辺の作家ながら今日まで創作活動を続けられています。
現在はシリーズものを中心に、番外編も交えながら小説を書いています。イラストは自身の画力不足で、とてもうpできません…でも、ごくたまに晒すかも? そんなワケで、ここでは身内や友人のイラストを投稿させて頂いています。更新の方は自身の都合上で、なかなか思うようにできていませんが、時間の合間を縫いながら少しずつ書いています。
なお、7月下旬から「VOCALOID HEARTS」シリーズ多数が注目の作品入りしています。こんな駄作が…ありがとうございます!
軽い挨拶と紹介になりましたが、皆さんよろしくお願いします! 余談ですが、カラオケでの十八番はいろは唄とかだったり←
メッセージ等は必ずお返しします…とか言っときながら返信おせーよ!
お友達やフォローも大歓迎です!(フォローして下さる時は、メッセージで報告して頂けると、フォロー返しがしやすくて嬉しいです)
プロフ画像の重音テトは、リア友のwestさんが書き下ろしてくださいました! 絵のイメージは「VOCALOID HEARTS」作中に登場する査察部隊・トリプルエーのテトからです。
2014年も、よろしくお願いします!
・ツイッター
http://twitter.com/ocelot0207
・ユーザーID
ocelot0207
※現在、7話~21話までのボカロハーツの文章とストーリーを修正しています。