【第十七話:少女のおわかれ】

 カラオケから、そして自分の気持ちにはっきり気がついてから3日目。

 レンが、私のところへ来た。

 今まで季節なんて、全然気にしてなかったから気付かなかった。
今は、もう夏だ。

 蝉が、忙しく鳴いている。

 横にはいつも通り、ぐみがいる。

 「リン。」

 蝉の声にかき消されてしまうような、小さな声。
けれど、私は聞き逃さなかった。

 「ミクは、憂鬱少女だったよ。」

 ずき、と痛む胸。

 「…よ、かったじゃん。これで、憂鬱少女とずっと…」

 「ちがうよ。」

 私の言葉に、レンの言葉が割って入った。

 レンは、ずっと憂鬱少女を捜していた、そう言っていた。
ではどうして、“ちがう”のだろう。

 「憂鬱少女には、ただただ、逢いたいだけだったんだ。」

 どういう意味、だろう。

 よくわからない。
逢いたかったからこそ、これから一緒にいればいいんじゃないのか。

 今までの話を聞く限りでは、レンは憂鬱少女のことを、好きなはず…。

 「突然だが、俺は、今日家に帰らないといけない。」

 「え!?」

 私も、ぐみも、同じように驚いた。

 「今日が、最後なんだ。」

 じゃあ、もうレンには会えないのか。
こんなに急に。

 何の準備もできていないのに、どこかへ行ってしまうというのか。

 「それと、瑠花の異動が決まった。……だから、俺の情報を掴んで、リンや、ぐみに知らせる人は、いなくなる。」

 そんな……

 「…んなの、自分勝手にもほどがあるよ!!?」

 叫んだ。

 のは、ぐみだ。

 「あたしちゃんと言ったよね?リンを泣かせたら許さないって。どうして!!!?そんなことしたら、リンを傷つけるの、わかってんじゃん!!?」

 そんなこと言ってたんだ。

 「なんで、なんで!?じゃあなんで、リンは今泣いてんのよ!!!?レンくんの所為でしょ!?」

 「ぐみ?何言ってるの?私、今泣いてなん…」

 頬をするりと滑り落ちる、何かの感覚があった。

 泣いてる。

 違うよ、これは、レンの所為なんかじゃない。

 「……憂鬱少女への思いは“恋”ではない。」

 恋じゃないなら何なんだろう。

 「憂鬱少女なんかより、もっと大切な人に出会った。」

 大切な人って、誰。

 「この、数日の間に、その人をたくさん傷つけた。」

 痛い。

 「これからいう言葉も、傷つけると思うんだ。」

 レンは私の瞳をまっすぐ見つめて、そう言う。

 あの日のように。
憂鬱少女は私がいいといった日のように。

 「今日で、しばらくのお別れだ。今度いつ会えるかどうかもわからない。」

 少しずつ、私たちに袴姿の少年は歩み寄る。

 「たぶん、おとっつぁんの会社を継ぐことになると思うんだ。そうなると、今までのように自由はできない。」

 蝉が、鳴いている。

 日差しは容赦なく照りつける。

 「だから、待っていてほしい。」

 レンは私たちの、5歩くらい前でとまった。

 「必ず、必ず、迎えに来る。だから、待っていてくれないかい…?」

 とく、とく、と私の心臓は、少しずつ高鳴る。

 

 「―――――…リン…………。」



 わたしの、なまえ。

 さっきより、涙は流れだす。

 目の前にいる、レンの顔は見えない。


 「…ん…、うん…っ……待ってる…よおっ」

 
 急に体のバランスが崩れたと思ったら、私をレンが、勢いよく抱きしめていた。

 「…ありがとう……。」


 相変わらず、涙は止まらない。








 レンは私を放して、歩き出した。






ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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憂鬱少女と陰日向

閲覧数:112

投稿日:2012/07/16 10:09:30

文字数:1,528文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

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  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    継ぐと自由がなくなる……
    うーん、考えさせられるなぁ…(妖精さんの話w

    待ってるのは待たせるよりも辛いけど…大丈夫かなぁ(・へ・)

    2012/08/25 21:51:16

    • イズミ草

      イズミ草

      そういえば、リンちゃんがそうですねw
      ん?いや、ルカさんも、メイコさんもそうか。
      皆当てはまっちゃいますねww

      2012/08/27 10:26:39

  • つーにゃん

    つーにゃん

    ご意見・ご感想

    つーにゃんです。
     「必ず、必ず、迎えに来る。だから、待っていてくれないかい…?」
    ここのところでグミって呼んだら面白かったのに…
    とにかく、リン、おめでとう!

    2012/07/17 14:19:28

    • イズミ草

      イズミ草

      それだと、リンが不憫すぎる……!!

      そうだね。
      ここは素直に祝福してあげよう!!
      おめでとおお!!

      2012/07/17 18:05:09

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