彼のあたたかい腕にきつく抱き締められて耳元で優しく優しく囁かれた。
「…ならさ、ミクちゃん。いっそ『ここ』まで堕ちておいでよ」
余裕の消えた泣きそうなそれでも優しい微笑にやっと彼を捕まえた気がした…。
【小説】堕ちた天使と悪魔の囁き8
「俺もさ…君が好きだよ。出逢ったあの日から本当はずっと目が離せなかったんだ」
ぽつりと彼がつぶやいた。
髪に触れる指先とその体温を感じながら彼の胸に頬を寄せる。
もう後戻りは出来ない。
けれど後悔はしない。
出来はしないの。
だって今私確かに幸せだもの。
「誰が止めたってこの想いは止まらない。大好きなの。傍に居たいわ」
「うん。俺も同じだよ。離したくない」
お互いに離れがたく暫く寄り添っているとふいに眩暈がし膝を付く。
「ミクちゃん!?」
一緒にしゃがみ込んだレン君の焦ったような声が頭に響く。
「始まった…のか?」
こぼれ落ちた言葉と抜け落ちた黒く変わりかけた羽…。
すべてが変わっていく。
禁忌の想いが繋がっていく。
堕ちた天使が生まれ落ちる。
驚いたような気配と共に抱きしめてくれていた腕の力が僅かに抜ける。
「や…離さないで…」
宥めるように髪に触れた後再び包み込んでくれた彼の腕の中意識が落ちていく。
「ミクちゃん…誰が何と言ってもさ、俺は傍に居続けてずっとずっと守り続けるよ。…愛してる」
天使と悪魔、二つの種族。
交じり合うことは最大の禁忌。
堕ちた天使はどちらの種族からも蔑まれ疎まれる穢れた存在。
けれど平気よ。
貴方とならきっと耐えられる。
愛しているの。
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