すっかり日が落ちて辺りは暗がりになって来た。ブレイクコールが何人も出て、今残っているのは数人…。一般客を掻き分けながら浬音を探していた。

「花壇…良かった、無事で…。」
「鳴…ウサギさん…。」
「あれ?ウサギ?何で?花壇って帽子屋じゃねぇの?」
「え?二股?」

まずいな…しかし客に説明するのも面倒だし…兎に角場所を変えた方が。

「わっ?!」
「きゃあああ!!!」
「グリフォン来た!!」

ざわめきと共に客が弾かれる様に一斉に道を開けた。闇の中に更に黒い影が佇む。グリフォンに関しては俺は何も知らされていない、多分幹部の人しか知らないんだろう、だったらコイツからは逃げた方が得策だな…。

「違う…。」
「え?」
「帽子屋さん…ですね?」
「………………………………。」
「帽子屋?髪無くね?」
「じゃあ味方って事?どうなってんの?」

少しの沈黙の後、『彼』はスコープとマスクを解いた。長い髪がそこには無く、だけど本当に密だった。

「よく判ったな。」
「…バラの香りがしましたから。」
「正体を見破ったご褒美に見逃してあげようか?元々『Treasure』なんだし。」
「え…?」

見逃す…?その言葉に何かがプツリと切れた。何だよその上から目線…!

「花壇、帽子屋のプレートを。」
「え?」
「…?何の真似だ?」
「貴方のプレートは此処にある…これを賭けて俺と勝負しませんか?俺が勝ったら…
 ネクタイ返して下さい。」
「ハッ…お前が?止めとけ、恥かくのがオチだぞ?」

イラッ…!判って言ってやがる…!こう言う所が無性に腹が立つんだよ…!浬音にキスはするわ痕は付けるわネクタイは取り上げるわ…一回ぶん殴ってやりたいと思ってたんだよ…!

「やってみないと判りませんよ?」
「へぇ…。」

そう言って少し笑うと黒いマントを解いた。

「皆さん、危ないですから少し離れていて下さい。」
「ふ…二人共…?!冗談でしょ?!」
「おい、ウサギと帽子屋のガチ?!」
「ちょ、どけって!そこ詰めろよ!」
「見せろって!」

気付けば観客がぐるりと取り囲んで輪が出来上がっていた。ざわつきの中、密の目付きと空気が明らかに変わった。

「カーカカカカカカカ!!何か中央広場でウサギと帽子屋のバトルが勃発!危ないので
 皆様は余り近くでご覧にならない様に~!!」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

DollsGame-127.紅花-

FIGHT!

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投稿日:2010/09/19 16:38:53

文字数:979文字

カテゴリ:小説

ブクマつながり

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