曲を短い物語にしてみた。その1【嗚呼、素晴らしきニャン生】

投稿日:2013/08/23 01:15:27 | 文字数:4,169文字 | 閲覧数:97 | カテゴリ:小説

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勝手なことしてます。
イメージ壊したら、ごめんなさい。

本家様⇒http://www.nicovideo.jp/watch/sm14990051

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TEXT
 

月が綺麗な夜だった。
仲間の群れから離れて、屋根の上でのんびり夜空を眺めていた。
ここは僕の特等席。月が一番大きく、綺麗に見えるんだ。

かたん。

背後から小さな音がして、すぐ側の一つの家の窓に近づいて行く。
少し開いた窓から風が入り、カーテンが揺れている。
窓際にちょこんと座っていたその子と、目が合った。

大きな目が更に開かれて、黒い瞳がかすかに揺れた。
突然現れた汚い野良猫を怖がっているんだろう。
飼い猫には、見慣れない姿だろうから。

僕は慌てて取り繕うように声をかけた。

 「こんばんは、可愛いお嬢さん。真っ白な毛が素敵ですね」

女の子を喜ばせる言葉なら、いくらでも持っている。
日頃からどれだけ喋り捲っていることか。
本気になって振り向かない子はいない、そんな自信があった。

 「こんな月が綺麗な夜は、僕と一緒に遊びませんか?」

……ぷい。

その子は、冷めた目でそっぽを向いてしまった。

あ、あれ?おかしいな。
よしもう一押し。

 「ニャン生は一度きり!楽しむが勝ち。
  あなたを縛るその首輪…僕が噛み千切ってあげましょうか?」

そう囁いて妖しく微笑み、自慢の鋭い牙をちらりと見せて。
僅かに開いた窓から前足を忍ばせ、その細く白い首元にゆらりと近づけば…――

――しゃっ

一瞬何が起こったのか分からなかった。
目の前の彼女は、きつい目で僕を睨みつけていて、前足からは光る爪が飛び出していた。
そのうちに顔がカッと熱を持ち始め、僕はようやく悟る。

僕は怒った彼女に、顔面を引っ掻かれたんだ。

ショックで言葉が出ない僕に背を向けて、その子は部屋の奥へと去って行った。


***


 「それで、すごすごと帰ってきたのか?」

翌朝、恥ずかしい大失態と隠せない傷の理由を僕は仲間に正直に話した。

 「飼い猫はやめとけよ。ろくな事ないぜ」

 「そうそ。あいつら絶対俺らのこと馬鹿にしてるよ」

 「でもお前なら、どんなお高いやつでも落とせるかと思ってたな~」

仲間達の意見はばらばらだ。皆好き勝手に騒いでいる。
そんな中、一番仲の良い猫が近づいてきて、言った。

 「でも、また行くんだろ?」
 
 「え?」

そいつはにやりと笑っていった。

 「だってお前、なんか今すっげー楽しそうだ」


***


その晩、僕はいつもの特等席に向かった。
正確にはそのすぐ側のあの窓だ。

しばらく月を眺めた後で、そっと背後を窺う。
暗い夜の街、部屋の窓から四角く漏れる明り。
真っ白い彼女は、つんと澄ました顔でそこにいた。

 「こんばんは」

意を決して近づき、声をかけた。
彼女は一瞬こっちを見たけど、すぐにまた目をそらす。
僕はめげずに話し続けた。

 野良は最高ですよ。
 ごはんは魚をくすねたり
 ハトを追いかけて遊んだり
 昼間は働く人間達を眺めて
 屋根の上で日向ぼっこ…

野良生活の楽しさを分かって欲しくて、
僕に興味を持って欲しくて、
彼女と外に遊びに行く日を夢に見て。


ニャンニャンニャン、ニャンニャンニャン。

たくさん、会いに行った。
たくさん、話し続けた。

 あなたも自由になりたくはないですか。
 今日は素敵な仲間も連れてきました。
 僕等と一緒に遊びに出かけませんか。
 さあ、その窓を大きく開いて。

 飛び出すのです!

そんな日々を過ごし、僕はいつしか彼女に夢中になっていった。
毎夜毎夜と話し続けるうちに、彼女も視線を合わせてくれるようになった。
話も少しは楽しそうに聞いてくれるようになった、…と思う。

けれど彼女は頑なに部屋から出ようとしない。
何がそこまで彼女を縛り付けているのか。
その理由を、僕はすぐに知ることになる。



***


つんと澄まして。お高くとまって嫌な女。
ぴんと背筋を伸ばせば、まるであなたを見下しているようでしょう?

 「これは気ままな野良猫さん。
 今夜もまた来たの?ご苦労様。
 闇の中、目だけが光ってるわ。
 随分口が上手だけど…私はそこらのバカな女とは違うのよ」
 
毎夜そこで空を眺めるあなたを、その自由な姿を、
ずっと見ていたのは私のほうなの。
あの時、初めてあなたと言葉を交わした時、
あなたに気付いて欲しくて、私窓を開けて音を立てたの。

かたん。

月ばかり見ていたあなたはあの日、ようやく私の存在に気付いた。

 「ニャン生は一度きり!だからこそ飼われるのよ。
 このブランド首輪の価値、あなたには分かるのかしら?」

ほんとはいっそ噛み千切って欲しかっただなんて。
外の世界に連れ出して欲しかっただなんて。
そんなこと言えなかった。
照れ隠しに引っ掻いてしまったこと、今でも後悔してるの。

 「私の生活はとっても優雅よ。
 美味しい食事にふかふかベッド。
 水はちょっぴり苦手だけど…
 毎日シャワーだって浴びて清潔だし」

毎夜来てくれるあなたの話を聞くことが、
最近の私の一番の楽しみだったなんて…。

 「それに比べて、あなたは誰に守ってもらうの?
 明日車に轢かれるかも知れないじゃない!」

ニャンニャンニャン、ニャンニャンニャン。

そんなこと、言えなかった。ふん、とそっぽを向くしかなかった。
可愛くない私。きっとあなたはそのうち愛想をつかして、ここへ来てくれなくなる。

そう、思っていたのに。



 「そんな強気なとこも素敵です
 一層あなたを好きになりました」

――…お願いそんなこと、言わないで。
顔が熱くなる。涙が出そう。
その手を取ってしまいそうになる。

ぐっとこらえて、またいつもの通り何でもないように鼻で笑う。
 
 「あら、正直ね。でもそんなやり方じゃ全然ココロ揺らがないわ」

私には、どうしても素直になれない理由があるの。




***



 「――どう思うよ。あいつ」

 「どうもこうも。最近付き合い悪くなったよな。つまんねぇの」

 「あれだろ、屋根の上の白猫に夢中なんだろ」

 「手に入んないからむきになってるだけさ」

 「無理やりにでも連れてきゃいいのにな」

 「…俺達でやればいいんじゃねぇの?」

ニャンニャンニャン、ニャンニャンニャン。

仲間達がそんな話をしていたことを、僕は知らなかった。
その日は彼女に送る為の花を探しに行っていたから。




***



きれいな花を見つけて、浮かれ気分で彼女のもとへと向かっていた僕を、仲間の一人が呼び止めた。
彼の話を聞いて、僕はびっくりしてくわえていた花を落とした。
それから彼に案内されるままに走った。

全力で走って着いたのは、見慣れた僕らの隠れ家。
一番に目に入ったのは、たくさんの仲間たちに囲まれて、怯えて小さくなっている彼女の姿。

僕は駆け寄った。そしてたくさんたくさん謝った。
安心したのか、彼女は静かに泣いた。つられて僕も泣いた。

みんなが彼女を連れてきた理由は、走りながら聞いていた。
みんな僕のことを思ってしたことだから、怒れなかった。

でもそんな僕の姿を見て、みんな悪いことをしたと気付いたらしい。
バツが悪そうに俯いて、小さくごめん、と呟いた。




***




 「僕の夢は、いつかこの街を飛び出して、
 はるか北の国に旅して、オーロラをこの目で見ることです」

隣で寄り添う彼女に、夢を語る。
空には満点の星空と大きな月。

あの騒ぎの後、彼女は一日だけ僕に時間をくれた。
その一日だけは、ずっと一緒にいた。
すっごく、幸せな時間だった。

 ……その時、あなたがこうして隣に居てくれたら、なんて素敵でしょう。

その願いは口には出さない。
それは叶わないらしいと、僕はもう知っている。
彼女が頑なに部屋を出ようとしない理由を、僕はもう知ってしまった。

だからせめて今だけは。
このぬくもりを大切にしよう。

 「叶えてね。その夢、絶対叶えてね…」

愛しいぬくもりの中で、彼女の小さな声を聴いていた。



***


 ――生き方は、そう簡単には変えられないの。


彼の仲間達に外に連れ出されたあの日。
初めはすごく恐ろしくて、どうしてって思った。
だけど彼が息を切らして駆けつけてくれて、本当に心配してくれてて、
仲間の人達にも謝られて。
私を連れ出した理由を聞いて、みんな彼が大好きなんだって分かった。

そこで私は自分から言ってみた。

 一日だけ、私を仲間に入れて。

それは私の知らなかった世界。
ご飯がなくて、寝床が硬くて、シャワーはなくて……でも、そこには自由があった。
美しくて広い世界があった。楽しいことがいっぱいあった。
彼の話は全部本当で、体験するほうがずっと楽しかった。

もっともっと、知りたかった。
もっともっと、彼といたかった。
だけどもう、帰らなきゃ。

 ――生き方は、そう簡単には変えられないの。

 それに私を飼っている、女の子を一人にできないわ。

それが、私がここを出られない一番の理由。
私はずっと昔から彼女の飼い猫なの。
まだ小さな子猫だった頃から、彼女に守られてきた。
ここであなたを見つける、それよりずっと前から。

一日しか家を空けてないのに、家に帰った日、彼女は私を見かけるなり抱きしめた。
その温かさにとても幸せな気持ちになった。彼女の愛情をとても感じた。

私の居場所はやっぱりここなの。

 「話の途中よ!あらもう行っちゃうの?ねえちょっと!
 明日もここに来ていいのよ。

 待ってるから…」



***



――数年後。

僕はあの街を飛び出した。
はるか北の国を旅しに来たんだ。オーロラをこの目で見るために。
夢を、叶えるために。

道中、僕の隣には一匹の子猫。
置いていくつもりだったのに、どうしてもと着いてきてしまった。

彼女にそっくりな、つんと澄ました真っ白い子猫。

長い旅になる。ゆっくり行こう。

彼女も見ているだろう、あの月を見上げながら。

 

                                     ――――――END

動画つくります!小説書いてます!詞も書きます!絵も描きます!
とりあえず色々やってみたくて、でも全てが我流なので上手くいかないことも多いです。
それでもやっぱり創作大好き(*´v`*)

お友達・仲間ほしいです。
お気軽にワサビ盛るなり足ひっかけるなりしてみてください。
一緒に作品作りしてくれる同志さん等々随時募集中*゜

一応社会人\(^O^)/

*制作物マイリスト   →http://www.nicovideo.jp/mylist/33595698
*ピクシブ (見る専門)→http://www.pixiv.net/member.php?id=1594999



   

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