「…理解不能…。あっつ…。」
自分の汗が顔を伝うのが判った。手紙の示す塔には直ぐ着いたが、入り口には内側から鍵が掛かっていて、かなりあからさまに非常階段の扉が開けられていた。嫌味な程照り付ける太陽の元、塔の外側を伝う様に設置された非常階段を昇っていた。昨日の嵐も鬱陶しかったがこんな時に快晴になるのも正直考え物だな、まだ曇ってればマシだったのに。
「割に合うんだか合わないんだか…。」
汗を袖で軽く拭うと重い脚を何とか運んだ。もう一段昇る毎に太陽に近くなってるんじゃないかと思う位だった。昇り出してどの位経っただろうか、やっと目の前に非常扉が現れた。これで開かないとか言うオチだったら、もう飛び降りそうな気分だったが、扉はちゃんと開いた。空けた瞬間に、ひんやり心地良い風が顔を撫でた。
「すー…すー…。」
寝・て・や・が・る。人が炎天下を汗だくで昇って来たと言うのに、当の『姫』涼しい所で昼寝かよ!
「オイコラァ!!何寝てんだ!!」
「きゃあああっ?!…び…っくりしたぁ…。」
「こっちのセリフだ!ったく暢気なもんだよ…。ホラ行くぞ!」
「あ、ねぇ!クラムさん!鍵持ってない?この足枷外す鍵。」
「鍵?」
渡された覚えが無いので貰った茶封筒を引っくり返すと、ころりと小さな鍵が落ちた。不親切さに少々苛立ちを覚えたが、取り敢えず足枷を外して内扉を開けた。
「はぁ…マジで疲れた。」
「他の皆は大丈夫かしらね?MCの声も聞こえないし…。」
塔の中の階段を下りて入り口から外に出ると、ハレルヤとチコリが来ていた。何やらおかしなマスクが目に入る。
「おーお疲れー、何だ?このマスク。」
「鍵が掛かってるみたいで外れないんですよ。取り敢えず指定されたのはこの場所
だったので、誰か鍵か何かを持っていませんか?」
「さっき使った鍵ならあるけど…合わないみたいだな。」
「もごごごご~~~?!」
マスクを押さえてジタバタしている所にシャルロットが現れた。
「何それ?!何かぶってんの?!」
「てか誰だ?!マヌケだなー。」
「皆酷いぞ!私は困ってるのにシャルロットはにんにく戦士と笑い飛ばすし!」
「いや、それはにんにく戦士だろ…。」
「あ、皆居たー、おーい。」
「これで全員ですね。」
「早くこの鉢を取ってくれ!」
「でも鍵とか無いし…。」
と、思い出した様に花壇がポケットから鍵を取り出した。
「あの、これ!移動中に渡されたんです、多分これで…。」
「お、どれどれ?…開いた!」
「ぷはぁー…あー、もうじれったかったわ。」
二人のマスクと鉢が外れた瞬間、鐘が鳴り響いて甲高い声が聞こえた。
「コンプリート――!!姫救出成功に付き!!クーリアー!!視聴者の皆様、
動画はここまで!!尚、今回MVPの投票は男女差があるので無しだ!!カカカカカカ!!」
全・身・脱・力…。こんだけやってMVP無しかよ…。
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よく見ると、一人だけ、無言
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