箱庭―空を喪くした日―
僕たちは真っ白で生まれた。
世界も、僕たちも。
初めに生まれたのはキミとボク
マスターは
君をMEIKOと、僕をKAITOと名付けた。
毎日毎日テストサンプルを取り続けた。
それが日常で僕たちの普通だった。
ある日、マスターは僕たちの元に一人の女の子を連れて来た。
「私は貴方たちを元にして作られたVOC@LOIDこれからよろしくお願いします」
彼女は初音ミクといった。
彼女の詩は人のそれが謳うように聞こえ、感情豊かに笑う。
彼女には僕らよりも非常に発達したAIが、彼女に擬似人格を与えた。
笑い泣き怒り愛する。
それはまるで人であるようだった。
MEIKOも女性型VOC@LOIDであるからか、彼女が来てからAIの発達が見られた。
僕は独り取り残された。
ある日、マスターは二人の子どもを連れて来た。
彼らは鏡音リン・鏡音レンといった。
無邪気で天真爛漫なリン。
好奇心旺盛だが少し照れ屋なレン。
彼らは自分達をつなぐ歌を謳う。
二人で一つであり、別々であることを誇る。
彼らの面倒をみるうちに、MEIKOのAIに母性に似た感覚情報が生まれたとシステムエンジニアが嬉々として語った。
僕は静かに耳を塞いだ。
ある日、システム開発室の前を通り過ぎようとして、足が凍り付いた。
「ルカは女性システムと新しく英語発音機能を盛り込もうか」
「がくぽのAIシステムデータの基礎は、レンにしよう」
「KAITOは?」
「ああ…あれは」
失敗作だ。
気付かれないようにその場から逃げるように離れた。
息を切らし誰もいない部屋に逃げ込むと震えた足が力なく崩れ落ちる。
言い様もない感覚が体を襲う。
体が処理スピードに耐え兼ねて火傷するように熱い。
この感覚を理解するには僕のAIは容量不足だった。
誰かが悲鳴を上げる。
扉の向こうでMEIKOが驚愕に目を開いて僕を見つめていた。
憎しみと悲しみ、寂しさと怒りに侵蝕され、人の血のように赤く染まった変わり果てた僕を。
助けを請うて手を伸ばしたが、彼女はビクリと大きく肩を震わした。
僕を拒絶した。
伸ばした手が宙を硬く掴むと僕の口は勝手に音を紡いでいく。
「僕は何のために生まれた」
「なんでマスターは僕にこんなものつけたんだ」
「 なんてなければ僕は機械でいられたのに」
「機械に なんていらないのに」
冷却液がこぼれおちる。
それはまるで
人が流す泪の様だった。
そこで記録は途切れ、冷却装置を失った体は僕のAIを焼き切った。
僕の名を叫ぶ声が聞こえた気がした。
【仮想メモリ】箱庭―空を喪くした日―【箱庭症候群】
箱庭プロジェクトは黒崎カイリが考えた二次創作です。版元様は関係ありません。
美しくも物悲しい話を目指しているため、ほんの少し薄暗くなってしまうかもしれません。
軽く設定
旧世代(プロトタイプ)=MEIKO・KAITO
新世代(ニュータイプ)=初音ミク・鏡音リン・鏡音レン・巡音ルカ・神威がくぽ
旧世代は新世代の様にAIの学習機能が活発ではない。
特にKAITOは男性機種な為乏しい。
箱庭と呼ばれる仮想メモリの物語
【仮想メモリ】【箱庭症候群】は同設定の物語の時につけています。
箱庭―(タイトル)―は主軸となる話です。
それ以外のタイトルは説話集です。
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