頭が重くて。痛くて。
息が苦しくて、辛い。
昨日から体調が悪かった。それは自覚している。それでも軽かったし、大丈夫だろうと思っていた。
朝も辛かったが、無理して活動していた。それが祟ったらしい。
会う人会う人皆に心配され、友人にはことごとく帰れと言われた。
体調も最悪だし、仕方なく帰ることにしたが、あまりの体調の悪さにドアが開けられないでいる。
身体が重くて、腕が上がらない。…このまま倒れ込みたい。
しかしそうはいかない。僅かにに残る理性と根性で腕を上げる。ドアノブがやけに冷たく感じた。
鍵を開けて中に入るとそのまま足が折れた。支えを失い身体が崩れる。
バタンとかドサリとか、そんなような音が遠くで聞こえた。
………鍵、かけてないなぁ…。
床が冷たい。なのに寒くはなく、熱い。
もはや立ち上がるという考えはなく、だんだんと意識が薄れていった。
突如、目が覚めた。
頭が痛いと思った瞬間、ぞわりと悪寒が走る。
……さむい。
全身が粟立っているのがわかる。異様に寒かった。
壁に手をつきながら立ち上がる。視界の隅に鞄が落ちているのが見えたが、どうでもよかった。
横になりたい。
身体はそう訴えていた。重い。
しかし寝室には入らず、足はリビングへと向かう。
だるい。しんどい。………着がえたい…。
リビングのドアを開ける。暖房が効いていて生暖かい空間。温度の変化に二度目の粟立ちを感じた。
「…………マスター……?」
「みー?」
声がする。
そうか、ドア、あけないとこいつら外、でれないな。
今更ながらリビングに来た理由を確認する。何のために来たのかわかりきっていた自分と、今になってやっと理解した自分。二人が頭の中にいた。
不思議そうにこっちを見上げるモカとコウに何かを言う。何を言ったか全然自分でわかっていなかった。混乱した頭は自分の発言が妙なことはわかっても、どこが変なのかわからなかった。
もう駄目だ。早く寝よう。
自分が自分に言う。わかってると言い返す。
上着を脱いでソファに投げ捨てる。軽くなったその分、寒い。
……………わるい、ねる…。
呟いてリビングを出る。…本当に声が出ていたのだろうか。何も言わないできたかもしれない。
ぐしゃぐしゃな思考が整理される前に寝室にたどり着く。
直前まで考えていた内容はどこかへ消え、無心でベッドの上に倒れた。
ひんやりとしたベッドの温度に心地よいと思うも、直ぐに寒さが勝る。身体を転がし布団に潜り込むと安堵の息が出た。横になれて多少身体が楽だ。
未だ凍える身体を温めるように丸めて、ちくりと感じた頭痛と共に意識を手放した。
そこは真っ暗だった。
暗闇で己の掌すら見れない。闇と言うよりも黒と表現したくなるような所。
纏わり付くような空気に不快感を感じながら一歩分進むと、今度は極彩色の束が視界に入った。黒い背景に赤や黄、青といった色の糸が大量に迫ってくる。
目を閉じても瞼に張り付いたその光景は消える事なく瞳に映る。
怖いと、何故だかそう思った。
頭を抱えてしゃがみ込む。塞いだ耳には自分の鼓動さえも聞こえず、無音だった。
音のない暗闇の世界に痛いほどの極彩色。未だ纏わり付く空気。
それらに怯えて、震えた。
怖い。助けてほしい。そう叫んだ声すら音にならずに闇に溶けた。
自分が見えない。声が出ない。鼓動すら聞こえない。
はたして自分は、本当に存在しているのだろうか。
そう感じた時だった。
音が。無音の闇に音が聞こえた。
意識と視界がはっきりしていくにつれ、真横で聞こえる声が大きくなった。
みーと騒ぐコウの姿が目の端に映り顔を向けた。モカとコウの姿が見える。
コウと目が合う。涙目になりながら叫ばれた。高音の泣き声が頭に響く。ガンガンと呼応する頭はまだ体調は治っていないと告げているようだった。熱も上がったのか汗をかいたせいで服がべたついていて欝陶しい。けれどもそれ以上に頭が痛かった。
そんな考えが表情に出ていたのかモカがコウを諌める。半泣き状態のコウも納得したのか口を閉じた。
礼を言おうとしたが口の中が渇ききっていて声が出なかった。馴染めない感覚を不快に思っていると、モカが呟いた。
「……大丈夫、ですか…?」
生唾を飲み込み、無理矢理口の中を潤してから返事を返す。
だいっ……じょう、ぶ…だ。
そうは見えないといった表情でモカが見てくる。
確かにモカの目には大丈夫に見えていないかもしれない。
でも意識もはっきりしているし大丈夫だと思う。それにこれ以上の心配をかけられない。
これだけ考えられているんだ。家に帰って来た時よりも良くなっている。
己に言い聞かせ、息をつく。
起きてから大して経っていないのに酷く疲れた気がする。しかも体力を使うような事は何もしていない。
寝た気がしないせいだろうか。夢を見たせいで疲れが増した気すらする。
熱が高い時は妙な夢を見る。さっきのもそうだろう。決して良い夢とは言えない夢。どんな内容だったか、もうほとんど思い出せなかった。
………確か、音が聞こえたんだ。
夢の終わり、何かが聞こえた記憶があった。どんな音だったかわからないが、その音で目が覚めたのだ。
…………モカ……、コウ、は……ずっとさわいで……いた、のか………っ?
起きて始めに聞こえたのはコウの声だった。それで起きたのだろうか。
しかし予想に反してモカは首を横に振った。
「……………マスターが…起きてすぐ、です……」
…そう…っ……か。
ではあの音は何だったのだろう。
夢の中の出来事だし、気のせいという可能性もあるが、何かが聞こえた気がしてならない。
…それとも、本当に気のせいなのだろうか。わからない。
混乱してきた頭はそろそろ正常な思考力が失われてきた。ぼぅっとして上手く考えをまとめられない。
あぁ、ねむい。
そう思ったが最後、睡魔の波が襲ってきて瞼が重くなる。
「…みー?」
小さなコウの声は自分を心配してのものだろう。話しかけられ、僅かな根性で目を開ける。見えた二人の姿は揺れていた。
わる……ねかせ、て………くれ…………っ。
「み…みーみみー?」
…だいじょ……だ………。
掠れて上手く出ない言葉。
コウが心配そうに見てくる。モカも不安げだ。
説得力なんてかけらもないだろうが、大丈夫だともう一度呟く。
後ろめたそうにモカが俯いた。
どうしたのだろう。
しかし聞けず、瞼が落ちていく。
暗くなっていく視界。モカの声が聞こえた。
「………さっき…起こしてしまい……ました、か…?」
……さ…、き………?
何の事だろう。
わからず呟くとモカの済まなそうな返答が返った。
もう目は開いていないから見えないが、きっと俯いているのだろう。
「…………マスターが、起きるちょっと前……歌、を………」
歌ってたんです、とモカは言った。
歌。
それだろうか、夢で聞こえた音は。
もしそうだとするならば、その歌が夢から覚めた原因だ。もう覚えていない夢だが、良いものではなかった。
本当ににあの音が歌なのかはわからない。でもそうならばいいと思う。
滅多に歌わないモカが歌ってくれ、その声が自分を夢から救ってくれた。そう思うと、辛い身体が少し楽に感じられる。
…早く、体調を治さなくてはいけないな。
モカとコウを心配させないためにも。
………ねる、まで…………うたっ…て、くれない……か?
言うと間が開いたのち、モカよりも先にコウが歌い始めた。
少ししてからその声にモカの声が重なる。
綺麗な歌だった。
その歌を子守唄がわりに、再度意識を闇に沈めた。
KAITOの種31(亜種注意)
一年間書きたくて書きたくて仕方がなかった話し。
温め過ぎて後半部の内容忘れたとかそんな馬鹿な。
もっとマスターには苦しんでもらう内容だった気が…しなくもないな…。
次はこれの番外が書きたいなー…。
ぎゃあああすみませんすみません。
投稿の時にサイトが妙に重くて、何回チャレンジしても投稿終了画面にならなくて連打してました!
今リベンジしにきたら同じのがいくつもあって驚きました。うわあああ…。
新着メールとか何件も行ってたらすみません…;
御本家はこちらでござーい。
http://piapro.jp/content/?id=aa6z5yee9omge6m2&piapro=f87dbd4232bb0160e0ecdc6345bbf786&guid=on
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ご意見・ご感想
純チョコ
ご意見・ご感想
新着登校メールで同じ分が何個か並んでとうとうPCがぶっ壊れた(もしくはKAITOが重くてぶっ壊した)かと思いました(笑)
1通にまとまってたから大丈夫ですよw
自分の場合は暖め過ぎて最終話や終わり方はともかく途中経過忘れます←
マスターさんお大事に・・・
某小説の高里○奈さんと霜降り五葉さんの表現方法は憧れてたりします。
自分も会話文ばっかになんないでもっと綺麗に書けたらなぁ・・・
これからも陰に隠れて応援してますw(コメントしてる時点で出てるとかきにしない
2010/03/02 17:58:22
霜降り五葉
純チョコ様
す、すみませんです;
投稿したことになってるならその画面を出せ!って感じです。
このお話は前半部を書きたかったので後半部は印象が薄かったのですww
マスターの病気ネタはもう少し引きずりますw物凄く書いていて楽しいです←
綺麗に書くのは自分も憧れですねー。あ、自分を目標にしても上手くはなりませんよw
というかどこらへんに憧れ…?
閲覧&コメありがとうございました!
2010/03/02 23:13:09