■君に似合うよ■【カイ→メイ】



「ひー・・・マスターになんて言われるかなあ」


作詞の参考にと、どうしても欲しい古書があるとマスターに言いつけられたカイトが外に出たのはほんの一時間前。
いろんなところへあたってみたものの、とっくのとうに絶版になっているそれは今日のこの時間だけでは到底見つかりそうになかった。
マスターも今は根が詰まってて、あんまりご機嫌もよろしくない。
できたら少しでも喜んでもらえたら、自分としても気が楽だったんだけど・・・。
(本とか服って、簡単に手に入ると思ったんだけどなぁ)
カイトの目が、町に並ぶショーウィンドウをとらえていく。どれも華やかで愛らしく洗練された、けれど同じようにあふれかえるモノたちの波、山。
あまり物欲がない自分には、コレ!とこだわるマスターの気持ちがほとんど分からない。好みはあれど、気持ちが揺さぶられるほどに欲しいと思うモノなど・・・・・・




「・・・!」






ため息をつこうとした唇がくっと止められ、息が詰まった。
瞳がとらえてはなさまいと、まばたきをやめた。
勝手にぴたりと止まってしまった脚は、ひとつのウィンドウに飾られている洋服に近づく為に今は存在しているかのようだった。
「・・・かわい」
触れられるわけもないのに、カイトの指先が冷たいガラスをなでた。
たくさんの華やかな洋服が飾られている中の一つ、真っ白なワンピースに二つの青い瞳が惹き付けられていた。
肌寒いこの季節にはおあつらえではない(きっとおめかし用なのだろう、と疎い自分で勝手に解釈した)ワンピースはとてもシンプルで、ふわふわと軽そうだった。一見流行りには乗じていないようなラインも、きっと“彼女”の身体をきれいにうつしてくれる。
(めーちゃんに、ぴったりだ)
すでに、カイトの頭の中では彼女、メイコが浮かんでいた。普段は深紅に身を染めた、凛々しいキャラクターを与えられた彼女。それもとてもきれいで、弟として、後輩としての自分が彼女を崇拝するには十分なのだけど。いつの間にか生まれて、いつの間にか弟や後輩という肩書を越えてしまった恋心は彼女のもつあどけなさや素直さを追っていた。
彼女にこのワンピースは絶対に似合う。
彼女の桜色の肌、ほっそりした脚、すべてをきっとこの白がひきたててくれる。
彼女の笑顔が浮かぶようで、にやけそうになった顔を慌てて手のひらでこすった。
「贈り物ですか?」
「?!!!」
ちょうどいいタイミングで、ガラス戸を開いた店員が声をかけてくる。そんなに食い入るように見つめていたんだろうかと思うと気恥ずかしくなる。それでも、なんでもないですとばかりにその場を立ち去りたい気持ちよりも、彼女へこのワンピースを渡したいという気持ちの方がはるかに勝っていた。
「はい」
ぐっと顔を上げて応えると、店員は他スタッフにさっと目配せをして準備にかかる。丁寧に箱に包まれていくのを店内で所存なさげに見つめながら、どんな反応が返ってくるだろうかと思いを巡らせる。(日々のアイスの様に)無駄遣いして!と怒るかもしれないなあなんて思うと、苦笑いがこみ上げる。
「サイズも調整しますから、彼女さんに着て頂いた後でも気軽に申しつけくださいね」
「あ、・・・///」
店員のにこやかさに、訂正をいれ損ねる。“彼女”なんて、(恋している癖に)自分で想像してもいなかった言葉に頭が真っ白になる。別に、これは単純にプレゼントなだけであって、彼女だとかそういう特別な・・・いや、特別になれればいいんだけど、今は・・・い、いや、この先がどうとかも分からないけども!
カイトの赤面に、店員はさらに何かを勘違いしたらしい。純粋さに好感が持てた故の、からかいもあっただろう。最後に大きな紙袋を手渡しながら茶目っ気たっぷりに声をひそめた。
「このワンピースで“脱いでいただける”といいですね」
「!!!!」
落とさない様に、ぶつけないようにとショップバッグを手にして歩きながら。必死に動揺を押さえるが、最後の店員のセリフが自分の小さな器をがんがん打ちのめす。
そういえば、そういう贈り物の“隠れた意図”というのがなんとなくあることは知ってる。女性が男性にネクタイを贈る時は「あなたに首ったけです」という意味とか、そんな感じだったろうか。いやでも、そんな可愛い(?)レベルの意図でないものを読みとられてしまったら、どうしたらいいのだろうか。ただでさえ自分は彼女の弟であるはずなのに!
(だ、だいじょうぶだよな・・・別に考えてなかったんだし!)
そう、これは純粋な贈り物だ。意識するからダメなんだ。唇をかみしめ、うんうんと無理やりに自分を納得させる。だいたい、彼女はちょっと天然なところがある。しっかりしてるように見えて、世間ずれしてるとこがいっぱいある。だからこう、平気だ。いや、平気であって!
ワンピースに出会った時の、ときめきに輝いた気持ちが若干、不埒でもやもやとしたものに覆われたような気がするけど、それも気のせい!言い聞かせに力を込めていると、だんだんと心も落ち着いてくる。
「・・・びっくりするかな、めーちゃん」
とりあえずはマスターの小言を聞くのに付き合って、そしてすぐに帰ろう。彼女の驚いた顔がちょっとでも笑顔に変われば、それはそれで満足だ。
でもってもう少し望めるなら、ワンピースを着てる彼女を見られたら。きっとこんなもだもだした情けない自分は最高の幸せ者だ。





END
(前のバージョンで、その後)



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■君に似合うよ■【カイ→メイ】

メイコへの贈り物。
片想いカイトのへどもどしたお恥ずかし作品です。
めーちゃんは天然系のほんわりです。

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閲覧数:800

投稿日:2011/11/09 22:58:16

文字数:2,276文字

カテゴリ:小説

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  • イソギン

    イソギン

    ご意見・ご感想

    とても素敵なカイメイでした!
    二人ともカワイイ!!
    め~ちゃんは、白とかパステルカラーって凄く似合うと思います!

    2011/11/23 10:11:42

    • いのほた

      いのほた

      イソギンさま☆
      初めまして、メッセありがとうございますヒャホーイ
      ( ´ ▽ ` )ノ

      ですよね、めーちゃんはビビットな色よりピンクとか白がめちゃくちゃ似合うと思いますhshs///
      レースとかリボンでめーちゃんを飾ってあげてるほわほわカイメイとか想像してはニヤニヤして書きましたきもいですねごめんなさい。

      可愛いカイメイこれからも目指してきますvV

      2011/11/23 14:32:20

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