*いろいろ注意*
昔は絵なんかよりも音楽が好きだった。でも適職と天職は違う。
ある日限界を知った。それで、諦めたんだ、何もかも。
公共機関を乗り継ぎまくってきたのは東京。
流石に都会だ、空気が酷いし建て物凄いし色んな意味でくらくらする。
「東京のバナナ、有名なのか?」
そんな感じの歌詞が土産店にあった。
コーヒーの香りがする。都会の駅前ならさぞかし旨いだろう。
「なあ、ちょっと休憩しな「ほら、何ボーっと突っ立ってんの!早く早くー!」
仕方ない、こいつの付き合いで来たんだから決定権は自分にない。
そうでなければ絵を描いて音楽聴いて読書する。バレンタイン?何それおいしいの?しょっぱいんだけど。
「で、ほんとにあんの?KAITOといえば既にインストールできるパソコンも化石名ゲームソフトだろ?」
「ゲームじゃなくて音声ソフト!部活で歌聞かなかったの?」
ああ、あのうろついたーだかマジ蜘蛛だーだかってやつ?ゲームのテーマソングかと思ったが違うのか?
「まったく、”文化”部なのになんも知らないんだから!動画見てみなよ!すっごく面白くてかっこよくてかわいいんだから!」
その3っつが同時に成立するもんなのか?
「あ、でも亜種はどうでもいいかなー。えーとくんはすきなんじゃない?」
えーと君とはあだ名だ。絵を描いてばっかりだから絵人。悪かったな、そんな奴で。
「ここ!ネットで親友になった人の家!」
「あやしさ満点じゃないか。」
「いいの!信用できるんだから!それに何度もオふかいしたなかだし!」
おふか・・・なんだそれは。
「そんなのもしらないのー!?あんたばか?ばかなの?しぬの?」
「馬鹿だから死ぬならお前はすでにこの世にはいないな。」
「冷たいー!良いもん!KAITOに励ましてもらうー!」
音声ソフトに自分で支持していわせるのか?イタイってこういうことを言うんじゃ…
そんな自分の感想をよそにさっさとチャイムも押さずにドアを…
「あけるな!お前はアホか。そこまで常識が欠落してんのか?」
「なんだよ、まったくまともな教育受けなかったわけじゃないもん!ただ、シューの家は特別なの!許可も得てるしいつもこんなだし!」
でもやっぱ人ンちを当たり前に開けるのはどうだろうか…
「ああ、いらっしゃい。」
騒ぎを聞きつけてか、ドアが開いた。
「こんちゃ!シューさん!友達連れてきましたー!」
ネットの時の口調だ。テンションが高い。うざい。
シューと呼ばれた人はどう見ても20台。で、チャライ。
「ああ、これがクールで冷たい絵人ちゃん♪」
「…どういう紹介してんだ。」
「へへ~♪で、かいとは!?」
無視か。
「研究所だよ。一緒に行こうか。」
ああ、これがフラグって奴かな、誘拐の。
断る隙もなく、幼馴染に押し倒すように詰め込まれた揚句に座布団にされて走るもんだから天井と空以外見えやしない。
「痛い、足しびれた。どいてくれないかな。」
「へ?車に寝っ転がる方が悪いんじゃないの?さっさと座らないで邪魔だから上に座るしかないじゃない!」
…ああ、顔はそこそこなのに性格最悪ってこういうやつだろうな。
結局、走ってると動きようがないので付くまでこのままだった。しびれて、動かせなかったしな。
「ここだ。」
新しげな建物。綺麗な白。病院とか学校みたいで好きじゃない。
「ほら、これがカイト。頼んだよ。」
目の前には小さい箱ではなく、むしろ自分よりは10センチは背の高い濃い青の目髪の青年。…あいつが巨人ではなく標準なのは知ってるさ。
「はじめまして、えっと…どちらがマスターですか?」
「はーい!はいはい!ますたーです!こっちが友達ー。一緒に住むことになってるからよろしくね。」
「一寸待て!電気水道ガス光熱費家賃のほかにまだ負担かける気かお前は!」
「う…気は乗らないけど描人は人間じゃないから、そういうの書けないでおくこともできるんだよ?」
・・・いま、なんつった?
「だからアンドロイドなの。ちょっとしたお金持ちの会社で秘書とかならもうあるでしょ?今度はちょっと裕福なら買える娯楽用のが出るの!それのモニター頼まれちゃった!」
「…ああ、そうかい。勝手にしてくれ。」
…バイト増やすか。どうみても人なのに飲まず食わずでいろなんて無理。
「いろちがうけど、あれもKAITO?」
暇そうにふらつく真赤な少年、陰で体育座りして黒髪のきゃしゃな青年。
「はい、廃棄前の型(タイプ)KAITOのアンドロイドです。」
「え?廃棄前?廃棄されたらどうなる?」
「壊されます。」
そんな、人みたいな形してるのに…当たり前のように?人型なのにモノだから?
「そんな事よりも、早く行きませんか?マスター付かないと思ってたから嬉しいです!家に着いたら歌以外も何でもしますよ!家事だってできるし、買い物で冷蔵庫持ち帰ったりもできます!」
「へぇ、すごいね!今度買い物付き合って!」
「はい!マスター!」
目の前のカイトはこんなにも表情豊かで、本当に人間じゃないかと思う。
「…なあ、なんで廃棄されたんだ?」
「? 同居人さんはそんなにあれが気になります?」
「良いから教えてくれない?」
「赤い方は不良品で言葉使いも悪いし幼くできてしまったんです。黒い方は方通事故でマスターを亡くして、あっちこっち歪んで壊れて直せないんですよ。見た目も悪いし、本職の歌なんかの機能に障害はありませんが壊れるのを望んでます。充電も全くしてませんし。」
そんなのおかしい。
思い通りにできなかった子供を殺すのか?
見目悪く、自殺を望むから殺されるのか?
人間じゃないといわれても、どう見ても彼らは人間じゃないか。
「実は過去にもよく似た不良品がいた。その二人はマスターを自分で見つけてしまったから今もどこかで幸せに暮らしてるんじゃないかな。」
前例があるならば。
「シューさん、じゃああいつらもマスターができれば壊されないですか?」
「へ?まあ、工場においても邪魔だから処分されるけど…引き取り手がいるなら別だな。」
「…引き取ります。自分。」
「な!?でも、あの子らがついてくかわかんないし…そりゃあ自分も壊すのは反対だけど構ってやれないから引き取れないし…」
「なら説得します。」
早速、陰に向かった。
「まいったな、クール心かホットじゃないか。」
「ほっとけないんだよ。優しいから。仕事で忙しい親にいつもほっとかれて育ってたから構ってあげてたんだよ?」
「ああ、だからわかるのか。奴らがさびしがってるのも。」
「…何?」
「!」
うわ、どうしよう、すげー好みの声だ。低音。
音楽ソフトとのことだしぜひ、歌を聞いてみたい。
「あ、あのさ、はじめまして。よかったらマスターになれないかと思ってきたんだけど…」
「ナンパ?逆ナン?」」
「…まあそうなるかな。」
右目に眼帯、ところどころは包帯やガーゼで大変痛々しい。
「同情は、要らない。」
「ああ、ごめん。あまり見られていいものじゃないね。」
「…そうじゃない、マスターのなるって方。」
「ああ、そっちか。」
確かに同情だった。音感ないしうまくは歌も教えられないけど。
「最初はそうだった、でも、おまえの声が気に入った、じゃ、だめ、か…?」
本心だ。
「うまくは歌わせられないだろうし音感もないけど、自分にできることは何でもする。だから、歌って欲しい。」
暗く、光のない目に一瞬何かが見えた気がした。
「…似てる、尽くさないといけないのは俺の方なのに。」
「へ?」
「壊れて高い音も出ないし、食事以外の充電法もイカレタ。そんなガラクタでいいのか?」
「いいんだ、その声が。それに食事させないわけない気は毛頭ない。」
「そう、か。」
顔を少し伏せて、迷っているようだった。
「よろしく、マスター。」
薄く、笑った様な気がした。
「いいのか?」
「今更聞くな。それに、全部本音だろ?一度も目をそらさないで、はっきり言い切った。」
「まあな。」
立ち上がるのに手を貸してやった。
「ひゅーひゅー。かいちゃんが心開くとはねー。」
茶化すのは少年。この人も、カイトより低い声。
「お兄さん、いつのまに?」
近くに来たのに全く気付かなかった。
「割と最初の方から。どう口説くのかなぁと。」
くど・・・
「ケンシューセーから聞いた。で、俺のマスターになってくれんの?」
「マスター…」
黒い方は心配そうに見る。ああ、解ってる。連れてくつもりだ。
「二人ともよろしく。ぶっちゃけ音感ないけど。」
「それでも、構わない。」
「まあぜいたく家ねーってだけだからな。珍しく構ってくれそうな人間がいて嬉しいとかじゃねーし、おれよりちびでせいべつわかんないよーなやつすきこのんではついてかねーっつーか・・・」
「…そこまで言わんでも。」
「あ、あー!あー!冗談!冗談だから!マスターよろしくな!」
その後、書類手続きや二人についての説明を受けてから引き取った。
「カイト引き取るとき反対しといて自分は二人も連れ帰ってるんじゃない。」
「いいんだよ、バイト増やせば。それに生活費払ってるのは自分だし何しても勝手でしょう」
「う…せめて家賃の半額払えるよう頑張ります。」
あれから10カ月以上たつ。
ヴァレンタインだったからケーキを焼いた。アカイトがアイスが苦手だというので生クリームも用意して、ガトーショコラ。
昔作った曲がばれて歌われたこともある。
恥ずかしいけど、好きな声で聞けてうれしかった。
そのうち、KAITOを調べるようになって、高音も悪くないと思った。
3人で歌う歌を聴きたいと思った。
目を覚ます。月光が室内に入り込んでいた。
「だから、来てくれたの?」
あしゅだけど、KAITO。
オリジナルがこないあたりが自分らしい。
つぶすからと隣っで寝せてもらえないからと勝手に布団に入ってきたチビ。
わりいが、絶対つぶすからどかすぞ?
「あれ?帯人がいない…」
アカイトは最初はベッドによっかかっていたのだろうが、床で爆睡している。
まったく…チビにはハンカチ、アカイトには毛布1枚やるか。
「・・・あ。」
ふと、何か聞こえる気がして耳を澄ます。集中すれば、拾えそうだ。
低い、歌声。
窓を開けたら、動いたら。他の人を起こしてしまうような、聞こえなくなってしまうような気がした。
今まで聞いたこと無い位上手くて綺麗。そしてすぐに、帯人の歌声だと解った。
月が赤い。
こういう日の夜中はいつの間にかいなくなってて、次の日には委縮していた。きっと、壊れて命日もわからないからこうして前のマスターの為に歌うのだろう。
やりたいならやればいい、悪気を感じたのは自分の方だ。
こんなにも歌く歌わせる才能を持っているのに、自分がつぶしてる気がした。
どうにも寝つきが悪い。
結局うだうだしてるうちに帯人が戻ってきた。
「ねれないのか?」
「起きてたんですか?」
驚いたように、反射的に言った。
心配させるわけにはいくまい、首を傷に響かない程度にふる。
「一寸、昔の夢見てさ。…帯人は、自分に引き取られたくなかった?」
「いえ、引き取ってもらって、感謝してます。来たくなかったら、残ってた」
「…そっか。」
目を見れば本心かどうかはわかる。安心したら、すぐに寝れた。
現金な奴…ああ、でも、良かった…。
優しい月明かりは意識を手放す邪魔をすることもなかった。
諦めていた音楽をもう一度させてくれた君たちに、いったい何を返せるだろう。
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