「ねぇ、なんで二人は戦っているの?」
「あんたには関係ない」
女王に睨まれながら即答されるも、ここで引き下がってはまた戦いが始まってしまう、と思った王は勇気を振り絞り睨み返しました。
女王は王がすぐに引き下がると思っていたのですが、意外にも睨み返してくるのでたじろいでしまいました。
「な、なによ」
「だから、どうして二人は戦ってるの?」
「それは是非私も聞きたいな」
王の後方から姫が声をかけました。
「森の奥に逃げた日から会っても話なんて聞ける状況じゃなかったし、話し合っても無駄だろうと判断してケンカを買ってみたのだけれど」
「姫は昔から売られたケンカは買う主義だったね。いい加減子供じゃないんだから、そういうことはやめなさい」
姫は納得がいかない顔をして文句を言い始めました。
「・・・・・・いじめられた誰かさんの代わりにケンカをしてあげていたのだけれど」
「昔僕をいじめた相手が次の日に必ず怪我をするという噂は姫だったんだね・・・」
「何を今更。それよりどうして私を殺そうとしたのか、聞かせてほしいね」
二人に責め立てられうつむく女王。少しの沈黙の後、口を開きました。
「・・・・・・一番強い者でいたかったから」
「一番強い? なんでまたそんな。女王は一番強いと思うけど・・・」
姫はむしろそうじゃないほうが不思議だとでも言うように、首を傾げます。
「一番じゃないのよ・・・。そこの鏡が言うもの」
女王はつぶやき、王が持ってきた鏡を指さしました。
「鏡? あの鏡喋るの?」
姫はおもしろい物を見つけたとばかりに目を輝かせ、鏡に近づきました。そしておもむろに鏡をつつき、言いました。
「鏡、鏡。あんたしゃべんの? 今すぐなんか言いなさい。言わないと割るよ?」
「なんで姫はいつもそうケンカ腰なの? 女の子なんだからもうちょっとおとなしくしなさい」
王にたしなめられ、姫はこれまた不服そうに文句を言いました。
「・・・・・・ヘタレの誰かさんみたいだとなめられるから、イヤでもこうなるのよ」
「・・・・・・なんで僕を例えにするかな・・・」
王があきれていると鏡が話し出しました。
「乱暴な姫さんだなぁ。それよりもう戦いは終わったのかい?」
「休戦中よ。ねぇ、女王が一番強い人じゃないってほんとなの?」
鏡の答えを全員が息をのんで待ちました。
「一番強いのは女王様だ」
「・・・・・・とか言ってるけど。女王が聞き間違えたとか?」
「そ、そんなはずない! だって確かに姫の方が強いって言ってたもん!」
女王はどういうことだと鏡を睨みます。
「まあまあ、落ち着けって。あの時は確かに姫さんの方が強かったんだ」
「気持ちとか体調の問題で変わるとか?」
王が尋ねます。
「いいや。女王様にとってはそんなのは些細なことだ」
「じゃあ、なんなのよ」
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