――――――――――#14

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 彼女は、機械越しの白黒の世界の中で雑草をむしっていた
 名のない草はない、そうは言うけれども僕に命じた人は言った
 『その草の名前は、かくかくしかじかでまるまるうまうまの悪さをする』
 愛された事のない雑草は、それでも名前を知られている
 敵だけが覚えている名前に、仲間という言葉は何の響きがあるのだろう
――――――――――

 などと、グミは自分用のリリックコードを夢想しながら雑草取りをしていた。リリックコードを考えたからといって使えるわけではないし、メモに残しても取り上げられてしまう。今この瞬間の紛らわし以外に意味はないのだが、当て付けみたいな内容が少しでも伝わればいいなと思うと楽しかった。

 HATUNEMIKU――――――――――僕達の楽園は すでにある世界

 AKITANERU――――――――――やべぇ!!!!
 YOWANEHAKU――――――――――ちっ、新造した用水路も駄目ですか!!!

 HATUNEMIKU――――――――――同じ過ちを 繰り返さぬ為に 

 ぼんやりと聴いていた。幻聴に似たそれは、間違いなくショートエコーだった。

 キュイイイィィィンン……・・・・・

 可聴域ギリギリの、金属音に似た安定して持続する、物理的な音が聞こえた。教導団では、これが聞こえない兵士の見分け方を訓練させられたなあ、と、ふと思い出して、頭を防御して地面に身を投げ出した。

 「第2、いや第3、なにが」

 すでに空中で、膝の高さ50センチメートルくらいで受身を取りかけていたのだが、突然フワッとした何かが地面から浮き上がってきた。

 ――――――――――これは、ハーモニックシールド!?

 重力加速度を相殺しながら変形しているが、この感触はハーモニックシールドである。

 バヂィィィ

 ハーモニックシールドが霧となって輝き、複雑な境界面を電撃が迸った。

 ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……

 非幾何学的な防壁を築いたそれは、激しい圧力を受けて工業機械の様な悲鳴を上げる。安定して編成する音の定位から、グミがいる空間は安全であると判断される。ハーモニックシールド、恐らく初音ミクによる防壁が、恐らく初音ミクのリリックコードの砲塔となって、外側の何者かに襲い掛かっていったのだろうか。

 内側からは、空間が軋む音しか聞こえない。だが、かなり大掛かりな攻撃が発動されたのは明らかだった。

 「第3種、はありえない、でも、第2種?何が、何と戦っているの?」

 第3種だと、まず間違いなくエルメルトの一部が消える。けれども第2種でも十分に大規模であって、少なくとも敵地どころか前線でもない後方では決して行わない攻撃でもある。

 ――――――――――このまま発動すれば耳が潰れてしまう。このエネルギー量、視認するアーク光から推定して、TNTで、何千万トン?ああ、どうか

 ブオン。

 ――――――――――音が消えた?

 突然無音になった。不自然なくらい、突然音が消えて、ハウリングのような耳鳴りがグミを襲う。それは痛さを伴うほどに。グミは予測不可能な未知の出来事に驚きながら、祈りながら身体の万全を試行錯誤し続ける。

 まだ大丈夫。初音ミクも同じシールドの中にいるのだと、まさか自ら耳を潰すような攻撃しないと無理矢理に安心した。

 しかし、青い白色の可視光が目を襲った。

 「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 目を塞ぐ、ああ、それはしなきゃならないんだな、眩し過ぎて、意識を失いそうに、いや、失った。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

機動攻響兵「VOCALOID」第6章#14

地味に連載再開_(:3」∠)_

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投稿日:2015/01/10 19:26:55

文字数:1,541文字

カテゴリ:小説

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