悪の召使ラスト部分のみSSにしました。
知らない方にはネタバレかと思います。(有名すぎて知らない人は少ないと思いますが)


厳密に言えば、処刑直前です。






縺れた足が砂埃を上げた
急がなければと
焦る思いが更に足取りを悪くするということに気付きもせずに走る
走る
走って
届かない指先を伸ばして
途方に暮れてはまた走った
まだ
まだ間に合うはずと
焦る思いのまま足を動かして
冷えた空気が喉を痛めた
それを気にしている暇なんかないと
顔を上げた瞬間聞こえる観衆の怒号
あぁ
あぁ
もう時間がない
愛しの偽者を殺されてしまう
殺してしまう
私の愚かな行いのせいで
待ってと
人ごみを掻き分けながら進む最前列
肩で息をしながら見上げた先
まさに
今まさに
彼が殺されようとしていた
処刑台の下
逃げられないようにと嵌められた手錠と足枷
「あ・・・・あ・・・!」
痛んだ喉が上手く声を紡がない
今すぐ飛び込んで行きたいのに、走り疲れた膝が震えて動かない
伸ばした手に、観衆は見向きもしない
気付きもしない
ただただ
怒号
罵声
悲鳴
違う違う
彼が悪いんじゃないのと
叫ぶ声はけれど音にならず
引き攣るような痛みを訴える喉だけがリアル
まるで悪夢のような光景
処刑台に首を嵌められた彼が私のフリをして笑う
違う
そんなことしなくていいの
そこには私が居ればいいの
あなたはどこかで笑っていればいいのよ
「レ、ン・・・・・」
不意に彼が首を小さく横に振った
目は合ってない
誰に向かって?
私に?
なら私を見て
今すぐにあなたと入れ替わるわ
それが正しいんだもの
「待・・・・・っ」
途端喉に走るぴりりとした痛みに咽る
あぁなんて役立たず
視線の先で、また彼が小さく首を横に振っていた
どういう意味なの
何も分からないわ
首を振って駄々をこねたいのは私のほうよ
あなたがいなくちゃ私は生きていけないなんて、あなたはとっくの昔に知っているでしょう?
今更いなくなるなんてずるい
「・・・・レ」
途端鳴り響く時計台の鐘
処刑の時刻を告げる合図
私の大好きだったおやつの時間
「っ、レン!」
必死で絞り出した声は観衆の歓声で掻き消された
さあ殺せ!
悪の王女を殺せ!と
沸き立つ観衆にも目もくれずに
彼は笑った
目が合う
微笑って
リン、と
空気を震わせることなく紡いで
途端、嘲笑う
嘲笑って
残酷な言葉を吐いた

「あら、おやつの時間だわ!」

シンと静まり返った観衆の中
残酷にも彼は確かに悪の王女だった

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

ラスト直前

一ヵ所だけ、本当に僅かに加筆。
気付く人はいないと思うなぁ。

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閲覧数:167

投稿日:2011/05/03 14:03:56

文字数:1,054文字

カテゴリ:小説

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