使い古したママチャリをいそいそと漕ぎながら、集合場所へと向かう。後ろにはドでかい荷物――
「カイトー、このままじゃ遅れちゃうよ~?」
 荷物以外の何物でもない彼女は、呑気に言う。ちょっと待て、お前が言うなよ! っつーか笑ってんじゃねーよ!
「こんなにのんびりしてたら、みんなに怒られちゃうよ~? ニシシシシ」
 息を切らして自転車を漕ぎ続ける俺に、これでもかと発破をかけてくる。……悪気がないところが余計に鬱陶しい。
「ほらほらー、頑張んなって! へへへへへ――」
 前歯を丸出しにして笑っている顔が目に浮かぶ。ていうかね、メイコさん……
「さ、か、み、ち、く、ら、い、お、り、ろ、って、の!!」
 やっとこさ坂の中腹に差し掛かり、かろうじて声をひねり出す。俺、全力で立ち漕ぎ。方や……ああ、鼻歌っすか。『ふんふふ~ん♪』っておい、待てェ!
「く、そ、は、な、う、た、と、か、や、め、……て、か、お、ま、え、お、も――」
 言いかけ――ノドが詰まる。これは……殺気!?
「それから先、口にしたら……わかってるわよね?」
 ッ!! ヤバい、今のはマジでヤバい! 本気だ!!
「うふふ、おも……なぁに?」
 追い打ち!? 追撃!? むしろ……トドメか!? くそッ……おも、おも、おも――
「おも……しろいよな! ハ、ハハ、ハハハ……ハハハハハ――」
 登り切ったところでぜえはあしながらそう告げる。しかしながら、自分で苦笑していては世話ない。案の定、メイコは俺の背中に爪を立ててきて――
「××××××××……」
 痛ェ! 絶対これ背中に痕ついてるって! いいや、そんなことよりも、あまりに小さな声だったため、上手く聞き取ることが出来なかった。聞き返したくねぇ……。
「えと、な、何だって?」
 しかし黙っていたところでメイコの怒りに拍車を掛けるのは明らかである。ともかく、意を決して聞き返す。すると指先に込められた力がより一層強くなり、
「つまんないッ! 馬鹿! バーカバーカ!! このバカイト!!」
 罵声を浴びせられる。
「ちょ、やめろ馬鹿、暴れんなって! だあああああ、わかった、悪かった、俺が悪かったから! だから暴れんなああああああ」
 突如暴れだしたメイコを、何とか諫めようとする。しかしながらコイツが一筋縄でいかないことは、今までの経験から知っている訳で――ゴツン。
 ゲンコツが降ってきた。
 メイコは基本的には呑気で陽気で愉快な良い奴なんだ。でも、急に機嫌が悪くなったかと思うと、すぐに暴れ出す。年頃の女の子が〝ゲンコツ〟ってのもどうかと思うんだけど……って、ミクちゃんやリンちゃんと比べたらただの年ま――
 バコンッ!!
「いてっ! ちょ、いってーな! 何でだよ!?」
 今日イチの力の籠もった一発に、非難の声を上げる。絶対変な音したって!
 するとメイコは、こちらの背中にもたれかかってきて――
「だってなんか……ムカついたんだもん!」
「ひ、ひでぇ……」
 理不尽な暴力を受け、本来ならばこちらが怒る側なのだが……でも、全力で頬を膨らましているであろう表情を想像してしまい、そんな気もすぐに失せてしまう。……むしろニヤケ面を押さえられない。うん、人通りが少なくて良かった。
 『女の勘』というやつなのか、メイコは俺が何やらやましいことを考えていると、かなり高確率で機嫌が悪くなる。結局の所俺の考えていることなんて全てまるっとお見通しなのかもしれない。暴力さえやめてくれれば特に嫌な気はしないんだけどな。


<つづく>

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
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私立防歌炉大学 海洋学部 海洋生物学科 神威研究室① <いつも通りのある日の飲み会> Part.1

私立防歌炉大学に通うボーカロイド達の日常を描くコメディー作品。
筆者が自信を持ってお届けするスペクタクル感動巨編に刮目せよ!(嘘)
いや、だからコメディーなんですって。ああすいません、茶番ですね、ごめんなさい。
ともかく、そんな茶番劇が描かれていたりいなかったりラジバ(ry



すいません、処女作です。原稿にすると短編の長さなんですけれど、いざピアプロに投稿してみようと思ったら、その長いこと長いこと・・・
どうかどうか、拙作におつきあい下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。





コメントとかいただけたら、裸になって泣いて喜びますよ?

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投稿日:2010/09/17 00:28:29

文字数:1,471文字

カテゴリ:小説

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