リーンゴー―ン。午後二時の鐘がなる。
 『悪ノ王女』の命はあと一時間。
  なんかなぁ・・・と『悪の王女』の僕――入れ替わった弟はつまらなかった。
 (あっというまだよな・・・)
 たしか、青の王子が緑の娘―――『王女』のところのお菓子作りの娘―――に乗り換えたことが
 判明したのが一ヶ月前。
  その子を殺すのに飽き足らず、彼女の祖国も滅ぼしたのが半月前。
 『赤の女騎士』に革命を起こされたのは一週間前。
  そして僕らが入れ替わり、『王女』が革命軍に捕まって、
 とうとう今日は革命のクライマックス、『悪ノ王女』の処刑の日。

  本物の王女と僕とは双子の姉弟。
 しかし大人の都合で僕は王族追放の憂き目に会った。

 王女と再会したのはその数年後、リン王女の14歳の誕生日。 
 純粋で無邪気でわがままな僕の姉さんは、別れたときから変わらなかった。

 純粋すぎて、姉さんは国民の言っていることが分からなかった。
 食べ物をほしがる彼らに君はこういった。
「なんであんなにみんな怒っているのかしら?
 お菓子を食べれば、みんな幸せな気分になって、いいのにねぇ?」

 無邪気で、純粋。僕と別れた直後に親に死なれ、孤独な君の甘えられる相手は、
 フィアンセの青い王子さまだけだった。
 しかし、その王子様は、君のそばで働いていた、緑の国から来た娘に恋をした。
 彼は娘と婚約し、君との約束は破り捨てた。
 怒った君は娘を殺し、緑の国を滅ぼした。

 「傲慢横暴、残酷な『悪ノ娘』を打ち破れ!」
 赤の女剣士が前からそういっていたことも知らず。

  しかし、君は分かってなかっただけだった。
 「シュクセイ」は「粛清」、「グミンドモからシボリトル」は「国民から搾り取る」だったことに。

 そして革命は起きて、僕は君と入れ替わった。
 なぜ、僕が入れ替わったか分かるかい、姉さん。
 君にこの世界を見せたかったこともあるけどね、
 これは僕なりの復讐なんだよ?

 緑のあの子とは、ある時緑の国で出会って、一目惚れしたんだ。
 あの子の作るブリオッシュはとてもおいしかっただろう?
 あの子は、僕も後で知ったんだけれど、君のおやつ係だってんだって。

 君は僕にとても残酷なことを言ったね?
 「緑のあの子を殺しなさい」
 うん、僕は殺したさ。 
 あの子は、僕の大事な人。
 懸賞金目当てのへんな奴に殺されてたまるか。

 そして君は、あの子が作った最期のブリオッシュを、とてもおいしそうに食べてたね。
 ぼくは、ブリオッシュを見るとあの子を思い出して泣けてきた。
 でも君は泣かずに、食べてた。

 君は、僕の大事な姉さん。僕は大事な君の弟。
 僕は、そのとき思いついた。

 そして、革命は起き、僕と君はいれ変わった。

「大丈夫僕らは双子だよ きっと誰にも分からないさ――――!」

 姉のために犠牲になる弟のふりをした。
 きっと君は一生、僕の事で悔やむだろう。
 あんなにわがままじゃなきゃよかった。
 あんな命令しなきゃよかった。
 緑の娘を殺さなきゃよかったって――――!

 僕のほうは、処刑され、もうすぐあの子のところへ逝ける。
 最新式の、痛みも苦しみもない、ギロチンっていう処刑方法。
 完璧な、復讐―――!

 もうすぐ三時。教会の鐘がなる時間。
 僕はもうすぐギロチン下に寝かされて、処刑人に聞かれるだろう。
 「何か言うことは?」と。
 そしたらこういってやる。
 傲慢で民をまったく見ずに、まっすぐ教会の時計塔を見て。
 「あら、おやつの時間だわ」

 さよなら、姉さん。
 僕は結構幸せでした。
 もしも、生まれ変われるのならば
 そのときはまた、遊んでね―――

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悪ノ・・・

昔書いてた小説をアップします。

閲覧数:202

投稿日:2016/01/25 12:29:59

文字数:1,612文字

カテゴリ:小説

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