編み棒片手にミクが唸っている。
熱心にやっていたらしいが、どうにも不格好で、ほどいたり編み直したりを繰り返しているせいで、毛糸が絡まり始めている。
「ミク姉ー、KAITO兄呼ぼっか?」
「ダメっ」
見かねたリンが横から口を出すが、間髪入れずにミクに却下される。
むっとしたリンの表情に気づいて、慌ててミクは言葉を足す。
「あの、あのね? コレ、お兄ちゃんにあげたいなって思って……」
編み物といえばマフラー。KAITOといえばマフラー。
安直な連想ではあるが、なるほどとリンは納得する。
「KAITOお兄様はミクさんの練習台というわけですね」
『編み物 初心者』といったキーワードでネット検索をして、知識を集めていたルカが納得したように相づちを打つ。
「確かに編み物の中でも、マフラーは初めての方向きのようですし」
「ずーっと同じ様に編んでくだけだもんねっ」
帽子とか、手袋とかどーなってんのかぜんっぜんわかんないけど、マフラーなら何となくわかる、とリンもルカの意見に同意する。
「あぁ、それに誰かにあげるって目標があるなら、やりがいもあるものねえ」
いいわねえ、上手になったら私の分も頼むわ、といつのまにかMEIKOも会話に加わっている。
ミクは顔を赤くして、あうあうとうめき声を漏らす。
「べ、別にミク、お兄ちゃんを練習台にしようとか、そういうんじゃなくて……」
「冬だもの。わかるわー」
「だよねえ、あたしもなんか作ろうかなーぱぱっと作れてー使えそうなのーっ」
「では、髪飾りなどは?」
どれどれ、とルカが見つけたサイトをリンも覗いて、おぉーと感嘆の声を上げる。
「リン、ルカ。初めてなら、かぎ編みをオススメするわよ」
じゃん、と毛糸とかぎ針を取り出すMEIKOにリンとルカが目を輝かせる。
「……お姉ちゃん、編み物得意なの!?」
だったら教えて貰えば良かった! と自力でどうにかしようとしていたミクは肩を落とす。
「KAITOほどじゃないし、棒編みよりはかぎ編みの方が得意よ。ミクもかぎ編みにする?」
「うー……」
ぼろぼろと目が落ち、どうにも哀しいことになっているマフラーもどきをミクは見つめてから、初志貫徹とばかりにMEIKOの誘いを断る。
「そうね、かぎでも棒でも、慣れるまでが辛抱よ。練習あるのみ!」
新しい毛糸あげるから頑張って、とMEIKOに励まされてミクは元気よく頷き、再度マフラーに挑み直す。
「ねーMEIKO姉ーこの編み図? っていう謎の記号なにー?」
「それはねー」
居間での女性陣の楽しげな会話をドア越しに聞きながら、うーんと腕を組んでKAITOが唸っている。
「入ればいいじゃん」
そこにいられると居間に入れないんだけど、とレンはKAITOに文句を言う。
「いやーだってさー……みたら手を出しちゃいそうで……」
教えてあげるつもりで全部やっちゃいそう、と編み物職人顔負けらしいKAITOが呟く。
それにしてもとレンは思う。
リンがミクのマネをして、レンのマフラーを編む! などという話にならなくて本当に良かった。
飽きっぽいリンのことだ、途中まで勢いで編まれた物が、中途半端なまま押しつけられるに決まっている。
そう考えると、KAITOの気持ちも分からなくもなく、うーんと二人して悩み出す。
MEIKOを講師にかぎ編み教室が始まったらしく、リンの目がそろわないーという叫び声が聞こえる。
「いいなー僕も編み物したくなってきたなぁ」
悩んでるのにも飽きたという風に呟くKAITO。
どうやらKAITOは居間にはいるのを諦めたようだ。
「……兄貴、マフラーはやめてくれよ」
比べられたらミク姉さんが泣くから、とレンが頬を引きつらせながら注意する。
「んーじゃあ指編みにしよう」
それなら被らないから大丈夫だ、とKAITOは妥協案を考え出す。
「レン君、レン君。教えてあげるから一緒にやらない?」
「鬼コーチを発揮しないなら?」
「えー僕そんな鬼じゃないし」
KAITOが毛糸を腕一杯に取り出して、ほらほら好きな色を選んでとレンに笑顔で詰め寄る。
編み物教室の後には、努力の成果を披露する作品展がお待ちかね。
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