秋の宵。
月こもり。
障子を閉め切っていても、秋の雨は冷たい空気を部屋の中に運んでくる。
指先とつま先がひどく冷える。
君が今朝までいたこの床は敷いたまま。
頼りない行燈の灯りが揺れて、そこに君の名残を心なし、よみがえらせる。
布団の中に君のぬくもりがあるような気がして、凍えた指をそっともぐらせるけれど、重い綿がつまったそれは、ただただ冷たく、尚更この身が切なくなるばかり。
それでもどこかに君の心が残っていないかと、僕は君がいた場所に頬をあてる。
『夜には帰るよ』
そう言った君の微笑みはいつもの通りの形。
けれど、その瞳はいつもと違う色。
出会ったときに見たのと同じ色。
君からは甘いにおいがした。
抱きしめられた時、不思議な甘いにおいがした。
鼻に残る、何となく怖い、甘いにおい。
君は幾度か僕のところを訪れて、何度も抱きしめてくれる。
そのうちに、僕はなんとなくわかった。
その甘いにおい。
いく度目かの夜に、抱きしめられた時に見た、襟もとについた小さな赤。
誰かの赤。
『あなたは ひときりなんだね』
そう、つぶやいた。
ひときりでも、僕の君への心はかわらない。
いく人もが僕を通りすぎて行ったけど、君は僕で立ち止まり、僕は君に立ち止まった。
君といたいと僕は思った。
君が好きと、僕は言った。
君は何も答えずに、悲しそうに優しく微笑んで僕を抱きしめた。
誰かをきるたびに増す甘いにおいが、抱き合う君と僕を包んでゆく。
『夜には帰るよ』
そう言った君は明け方に出て行った。
寒い朝靄。
赤々の落ち葉。
君の微笑みはいつもの形。
でもその瞳はいつもと違う色。
出会ったときにみたのと同じ色。
孤独の色。
雨の音と
風の音。
いつの間にか消えた灯り。
砂利を踏む音。濡れ葉を踏む音。
障子の向こうに、籠った月明かりで浮かぶ影。
後ろで一つに束ねた長い髪。
見慣れた細かな癖。
『夜には帰るよ』
僕は微笑んだ。
いつもと違うのは、手に刀を抜いていること。
肩で息をしていること。
障子を一つ挟んだだけなのに、君からは何も聞こえない。
君は何もしゃべらない。
ただ障子の向こうに、いる。
また誰かをきってきたのだろうか。
それとも、正体を知った僕をきりに来たのだろうか。
どちらでもいい。
君は帰ってきてくれた。
君が言ったとおりに。
僕は布団からでて、障子に手をかけた。
これを開けた時、僕が見るのは君の微笑みだろうか。
それとも君の刀の閃きだろうか。
――どちらでもいい。
僕は障子を開いて、言った。
おかえり、大好きなきみ――
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