昔々、あるところに。
それはそれは美しい、姫様がおりました。

 雪のように白い肌が、その美しさをより引き立てていました。
名前を、「白雪姫」。

 その美しさに囚われる男たちもいれば、憧れを抱く女たちもいました。

 白雪姫は、人々に愛されていました。

 しかしそれを面白くないと、見ていた一人の女王がおりました。
女王もそれは美しかったのですが、自分より美しい白雪姫を、羨まずにはいられず、やがてそれは憎悪や嫉妬へと変わってゆきました。

 そんな白雪姫。
彼女にも少し、欠点というものがありました。

 


 「ぷは―――――っ、くぅ~ったまりませんなぁ~」

 ジョッキを片手にそんなオヤジ臭いことを叫ぶのは、国中で有名な彼の「白雪姫」。
その目を奪うような美しい容姿とはかけ離れた、雄叫びだ。

 「……姫様…。もうその位で御止めになっては如何でしょうか…。明日も職務があることですし…」

 「は―――あ!!?るっさいわねえ!!私のこの束の間のぉ幸せをぉ…ヒック……奪おうってぇいうのねぇ!!!?―――もっと寄越しなさいよぉ!」

 「は、はい!只今!!」

 そう言って、空中に姫のために作られたバーのマスターは急いでカクテルをグラスに注ぐ。

 「ちょっと。なんでぇカクテルぅ?……まったく…ここはビールとカクテルしかないのぉ!!?ウォッカはないの!?ウォッカはァ!!!」

 カクテルを注がれたのがとても嫌だったらしい。
といってももうウォッカが飲めるほど意識ははっきりしていない。
呂律は回っていないし、歩けばきっと千鳥足。
べろんべろんのぐでんぐでんに酔っぱらっているのだ。

 「申し訳ありません…」

 マスターは小さく謝る。

 「…じゃあ泡盛は?」

 「申し訳ありません…」

 「もう!!何にもないのね!!いいわよもう…」

 遂に姫はテーブルに突っ伏した。

 「……シンデレラ時間になったら、起こして頂戴…」

 「御意」

 姫は寝息を立て始めた。




 「姫!!姫!!!」

 「んもう…何よ!グミ!!」

 姫の側近、グミが、何やら神妙な面持ちでバーに飛び込んできた。

 「女王様は、姫を殺害するおつもりです!!はやくにげて!」

 「…そんなのいつものことよう…また未遂に終わるわ…」

 「いいえ!今度は本気です!!女王様の目は完全にイッておりました!!」


 姫は反応しない。


 「…世話の焼ける姫さんだな!くそっ」


 グミはその小柄な体のどこからわいてくるのか、姫を軽々と持ち上げた。
そして窓へと近づく。


 「治安が落ち着くまで…帰ってくんなよ!!!」

 「ちょっ…グミ!!?なにし…」

 「そぅれ!!」



 姫ははるかかなた、森の方まで飛んで行った。
姫の悲鳴は夜の深い闇にどこまでも響いた。

「…少しの間、さみしくなりますね…」

 マスターが呟いた。
その目は少し潤んでいるように見えた。








 目が覚めると、姫は森の中。
こんなところに家があるはずないのに、温かい暖炉の前のソファーに横になっていた。

 「…あら…私…?」

 体を起こす、姫。
ソファーでなど寝たことのない彼女の体には、何とも言えない痛みが走る。

 「ぅう~…ここはどこ……」

 「俺らの家だけど。なんか文句あんの?」

 「こら、レン。もっとちゃんとした言葉遣いできないの?」

 金髪の、少女と少年が言い合っている。
信じがたい、現実。





 目の前には7人の小人がいた。




 「はじめまして。私、ミク。あなた誰?」

 小人の中の一人に訊かれた。
ツインテールの可愛らしい女の子。

 姫の顔を珍しそうに覗き込む。

 「し…白雪姫……」


 「えええええええ!!!??お前が!!?ないわ―。もっとお淑やかで儚げな美人かとおもっ…」

 「レン!?失礼でしょ!!そこは心の内に秘めておくのが礼儀ってものよ!思っても口には出しちゃダメ!あたしも我慢したんだから!」

 フォローになっていない。
金髪の少女も、言葉の使い方がだいぶ荒いようだ。

 「あ、ごめんなさい、あたしはリン。こっちは…」

 「弟のレンです」

 二人揃ってお辞儀をする。
釣られて、姫もお辞儀。


 「…まさか、俺らは見ることもできないと思ってた白雪姫が、落ちてくるとは思ってなかったよ…。おかげで明日は大忙しだ」

 「落ちて来…?」

 「ああ、落ちてきたんだよ、姫様は。ほら」

 リンが上を指さす。
豪快且つダイナミックにぶち破られた天井。

 瞬く星がよく見える。

 「あの…それで、ミクちゃん、リンちゃん、レン君はわかったんだけど…あとの…4人は……」

 「ああ、訊かないであげてください」

 ミクが即答。
どうやら名無しのようだ。

 「俺戻っていい?ド○クエ10したいから」

 「あたし、お菓子食べてくる―!!」

 次々に散ってゆく、小人たち。




 姫は唖然、茫然として見るしかなかった。




 

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

ボカロと愉快なボカロたち。

新作です。
あと1・2話で白雪姫を終わらせて
次の童話…って感じで進んでいきます。

まずはメイコだ!

閲覧数:235

投稿日:2012/09/03 14:41:09

文字数:2,107文字

カテゴリ:小説

  • コメント2

  • 関連動画0

  • しるる

    しるる

    ご意見・ご感想

    いや、どうしたしwwww

    正直、私もメイコ姉で日本昔話の単発やりましたから、勢いと楽しさはわかりますww
    是非是非、見てみてください←おい

    なんだろう、イズミさんとは、こういうのまで通ずる物があるのかww 嬉しいですw

    2012/12/06 04:16:17

    • イズミ草

      イズミ草

      なかなか、こういうギャグなんて思い浮かんできませんからww
      ノリで書いちゃえーって感じですwww

      おお! 見に行きます!!!
      ですね、もうこれは赤い糸で結ばれてるとしk(黙れ

      2012/12/06 15:59:43

  • Turndog~ターンドッグ~

    Turndog~ターンドッグ~

    ご意見・ご感想

    どこが少しだ!?
    他の長所を補って余りあり過ぎる欠点だっ!!wwwwww

    グミちゃん。白雪姫は投げるもんではありません。
    巨大なシャンパンのビンのコルクに結び付けて撃ち出すもんです(なんのこっちゃ

    レン君きついな!リンちゃんもきついな!!www
    そして天井をぶち抜いて無傷の白雪姫。姫が丈夫なのか家がぼろいのかどっちだろう。

    不憫です、四人www

    2012/09/03 23:38:04

    • イズミ草

      イズミ草

      欠点はめ―ちゃんのイイところだ!!www

      ああ、シャンパンのコルクに括りつけても、
      面白かったな…。
      どうしてもっと早く言ってくれないんですk(逆ギレww

      双子は毒舌なのでしたww
      …家がボロかっ…いえ。
      白雪姫がじょうぶd((殴

      2012/09/04 20:07:11

オススメ作品

クリップボードにコピーしました