＃２７－３「みんなから逃げた理由」



僕は、かつてめーちゃんと初めて出会った街に来ていた

そして、かつて待ち合わせをした場所にやってきた

しかし、辺りにめーちゃんの姿はない

それでも、諦めきれなかった僕は街を走り回った









メイコは一人、空を見上げていた

空は昨日に引き続きどんよりとしている


私は寮のみんなから逃げてきた

責められるのが怖くて…

罪悪感に耐えきれなくて…

テト達を拒んだことで、あの人たちは、また居場所を求めてさまようことになる

今では私たちボーカロイドのことを知っている人も多くなったが、毛嫌いする人も多いのも事実

そんな世界に、安息の居場所をつくろうとカイトと一緒に言って、建てたのが今の寮だった

それなのに…私は……




メイコは視線を足下にうつす

コンクリートで舗装された歩道の脇から、コンクリートを突き破って雑草が伸びている

しかし、その雑草はしおれていて元気がない


「あなたも疲れたのね…自分で道を切り開いてきたんだものね……」


メイコが雑草に向かって話しかける


「私、なにやってるのかしら…相当気落ちしてるみたいね……宿にもどりましょう」


そういって、メイコはうつむいたまま歩きだした





「………………ちゃ……………ぇ－……………」


遠くで何か叫んでいる……子供か…


「…………………ちゃー…………めー…………」


子供は元気で無邪気でいいな……私にそんな時代…あったかしら…


「…………ちゃーん………………めーちゃーん」


え？この声……
私はゆっくりと後ろを振り返る…

すると、そこには私のよく知るあの優男が走ってくる

どうして…ここに……
いや……責められる……

私はそう思い、自然と逃げるように走りだしていた





「めーちゃん！待って！」

しかし、逃げる私の腕を、彼はつかんだ


「いや！放して！」

「めーちゃん！おちついて！」


私は気が動転していたのかもしれない


「いや！放して！」


次の瞬間、私の体が彼の腕の中に吸い込まれる


「いやだ！誰が放すもんか！！」

「え？カイ…ト…」


私の体はカイトの腕の中に埋もれた


「めーちゃん…よかった…会えた……もう、どこにもいかないで…」


私がカイトの顔を見上げると、彼の目にはうっすらと涙が見えた


「カイト…どうして、ここに…」

「めーちゃんを失いたくなくて…必死に探したんだ」

「え？」







「僕のそばから、勝手にいなくならないでくれ…メイコ」


私の体が軽くなるのを感じた

私の心が温かくなるのを感じた

そして、涙が止まらない


「カイ…ト……私…」

「何も言わなくていい…全部、わかってる」


私は彼の腕の中で黙ってうなずくと、往来の真中でしばらくそうしていた

空の雲の隙間から、スッと光がこぼれる

それは、私の心の闇に一筋の光をくれたカイトの存在そのものだった