ザワザワ ザワザワ
人が集まる。斬首台の周りに。 そして、
斬首台で命を狩られるのは この国―黄の国の王女。
その金色の髪を風に任せ、その蒼色の瞳は固く閉じられ――
国の頂点に達していた時の煌びやかなドレスではなく、みずぼらしい服を着て
齢十四で国を率いていた少女の刑が始まるのは――― 午後三時。
ザワザワ ザワザワ
人が集まる。 斬首台の周りに。 刑執行の時は近い――。
そんな中、一人の少年が走っていた。 走って 走って。斬首台の近くまで。
帽子の隙間から見える髪は金色に輝き、その蒼色の瞳からは涙が零れ。
王女が斬首台に上がる。歓声が沸き上がる。
殺せ、と。 今まで国を苦しめてきた悪の娘を殺せ、と。
王女はその固く閉じられた瞳を薄らと開いた。 人々が、 己を見ている。
恨みの篭った目で。 そして、狂った目で。
あぁ、死ぬのだ。 改めてそう思わされる。 人々の叫びは完全には聞き取れない。と、
「レン!」
今、確かに、己の名を呼ぶ声が聞こえた。しかしその声は王女・・・にしか届かなかった。いや、届いてなくて良かった、と言った方が良いか。 そして、もう一度。
「レン!」
あぁ、間違いない。この声は・・・ この声は・・・。
王女は周りをそれとなく見回す。そして、その中に、見つけた。己と同じ、金色の髪を持ち、蒼色の瞳を持つ少年を。
「リン・・・」
唇だけ動かして少年の名を呼ぶ。それでも相手には通じた様で涙の浮かぶ目を此方に向けていた。
「レン! 変わろう! 今からでも遅くないよ! ねぇ! 元に戻ろう! 死ぬのはあたしなんだから!」
少年はボロボロ涙を流し、尚人混みを掻き分け王女に近付こうとしている。
「ねぇ、何で!? 殺されるのはあたしの筈だよ!? ねぇレン! レンが何をしたの!? レンは何も悪くない! 悪いのはみんな、みんな、あたしの所為でしょ!? 殺されるのはあたしで助かるのはレンの筈でしょ!? ねぇ、ねぇ何で!? レン! レン!」
流され、押され。それでも尚少年は近付く。斬首台に。
「さぁ、刑の時は来た」
刑執行人の冷たい声が王女の耳に入る。
もう遅いよ、リン。僕は死ぬ。これから 大きな罪を背負って―――。
心の中で呟くと少年の足はピタリと止まる。大粒の涙が流れる、その顔には
――何故?
只其れだけが浮かんでいた。
僕は今まで沢山罪を犯してきた。其れを今、償うだけだから。
「そんな・・・っ! そんなっ! それは、あたしがっ! 自分の為にレンをっ・・・!」
うん・・・そうだね。でも、リンに言われて罪を重ねてきたけど、罪を重ねたのは、リンじゃない。
「僕だから」
王女の体が固定されていく。手、そして、首。王女の頭上では長い刃が妖しく黒光りしていた。
いよいよ少年の顔が青ざめていく。「止めて!」と叫ぶ声は人々の狂った声に押され、消されていく。
良いんだ、リン。此れで罪を償えるのなら。 あぁ、でも――・・・
王女は固定された首を出来る限り伸ばし、空を見る。晴れやかな――空。
僕はこれから今まで犯した罪よりも、もっと大きな罪を抱えて死ぬ事になる。それでも構わない。
君が笑ってくれるだけで。 リン。
空を見据えた後、王女は少年の方を見、そして、
ニッコリと、微笑んだ。
僕は君に何もしてやれなかったね。双子なのに。たった一人の キョウダイ、なのに。
ごめんね。 ごめんね。何一つ出来なかったけど、 此れだけは言わせて。
教会の鐘が鳴る。刑執行時刻――午後三時。
王女は少しの間、瞳を閉じ、そして、
「あら、おやつの時間だわ」
何時もの口癖。そして、その一瞬後。
王女の首は 狩られた。
ワアッ と人々は歓喜立つ。そんな中、一人の少年だけはガクリと膝をつき、目からは涙を零していた。
「レンの馬鹿! 如何してっ・・・! 如何してあたしなんかの為にっ・・・! ねぇっ・・・! 笑えないよ! あたし、もう笑えないよ! 如何して・・・? 何で・・・?」
でも――
少年は王女の最期の言葉を聞いていた。
生まれ変わったら、 また一緒に遊ぼうね―――――――
「生まれ・・・変わったら・・・」
グイ、と目尻に浮かぶ涙を拭い、少年は立ち上がった。
生きないと。あたしの代わりに死んだレンの為にも、あたしは生きないと。
ごめんね、レン。我儘なキョウダイで。あたしは何時も、自分の事ばかりで、
レンの気持、少しも考えてあげなかった。
レン、貴方の大きな罪はあたしの罪も全て抱えて死ぬ事だったんだよね? ごめんなさい。 ごめんなさい。 でも、
あたしは貴方を忘れない。いや、忘れられない。
あたしの・・・ たった一人の キョウダイだから。
これからはあたしも罪を償おう。 その為に生きよう。
今からじゃ遅いけれど、それでも――――――・・・
ぐい、ともう一度目尻に浮かぶ涙を拭い、少年はこの国を出た。
その時、風が吹き、少年の帽子を飛ばしていった。その中からは――・・・
金色に輝く髪がサラリと肩の高さで揺れた。
そして少年――いや、リンは何処を目指すでもなく、歩き出した。
少女の名は、リン。
かつて、黄の国を治めた
齢十四の王女――・・・
悪ノ (ラストのみ)
最後だけです。中も書いてたら果てしない量になりそうなので。白ノ娘だってルーズリーフ十二枚、合計二十四P書きましたから・・・。
でも悪ノは実を言うと書きたくなかったんですよね。悲しいから。一時期PV見て回ってボロ泣きしましたから。悪ノほのぼのは笑えたけど。
なので書きたくなかったのですが・・・色々なサイトさんでやっぱり悪ノ書いてる方多いし・・・それに白ノ娘も発表されるしで・・・。
カッとなってやった。後悔はしてないが反省はしている(←
拙い文章で悪ノのイメージが壊れてしまったら御免なさい。あ、きっとリンとレンはテレパシー的な何かで喋ってたんだと思います(←
それでは読んで頂き有難う御座いました!
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