「私は……間違って生まれてきたんじゃないって……
言ってくれる……?」
リンは、泣いていた。
それは、両親が死んだとき以来見たことのない、
姉の泣き顔だった。
リンはこれまで、自分に辛い部分を見せないようにと
無理して笑って過ごしてきたんじゃないか。
そう思ったら、リンの弱い部分を受け入れることができなかった
弱い自分が情けなくて、自分に腹が立って、レンは拳を強く握り締めた。
「リン……ごめん、本当にごめん」
そう言う声は、かすかに震えて、思うように声が出なかった。
「……レン、謝らなきゃいけないのは私の方だよ」
リンの声は、優しくしっかりしたものだった。
レンが顔を上げると、手すりに座るリンはこちらを見て微笑んでいた。
「ずっと1人にして、ごめんね。
寂しかったよね?もっと、レンと一緒に居れば良かったなあ……」
「そんな、そんなこと言うなよ!!これからは、ずっと一緒に居られるよ!
また、2人で暮らそうよ……リン……」
最後の方は、声にならなかった。
リンに聞こえていたかすら、分からない。
それでも、あふれる言葉は涙となって頬を伝い落ちていった。
「レン、」
レンははっと顔を上げた。
姉の笑顔が、目に映る。
2年前の、別れる前の、あの笑顔だ。
『はいっ、チーズ!』
「ありがとう」
時が、止まったような気がした。
スローモーションのように、消えていく。
信じたくない現実は、優しい笑顔とともに、落ちていった。
すべての感覚が、一瞬、途切れた。
「……!!!!」
叫んだ声は虚しく反響し、消えていく。
慌てて駆けて、手すりに身を乗り出す。
落ちそうなほど、身を乗り出したが、その下に姉の姿を見ることは出来なかった。
下は、光の海だった。
熱風が、顔に吹き付ける。
眩しい、熱い。
そこにいるのは、レン1人だけになった。
「嫌だ……嫌だよリン!!僕も連れていっ……」
「連れて行って」、そう言おうとしたとき。
誰かに白衣をつかまれた気がした。
それとも、ただ自分が飛び込む勇気すらなかっただけなのか、分からないが
レンは飛び込むことが出来なかった。
力なく、起動室に戻る。
レンの目に飛び込んだのは、赤く染まる空だった。
先ほどの曇天が、うそのように晴れている。
夕暮れが辺りに拡散していた。
――リン。
君が、いなくなったからだろうか?
曇天が、綺麗な夕焼け空に変わったよ。
変だろ?もう、涙すら出てこないんだ。
もし君が、この世界にとっていらない歯車だったとしても
僕の世界には、君が必要だったよ。
もう、僕1人になっちゃったじゃないか。
リンは本当にバカだよ。
僕は、ただ君がいてくれるだけで良かったのに。
リン、聞こえてる?
僕は君が、本当に大好きだったよ……――――。
私のいない朝は、今よりずっと素晴らしいものですか?
私がいなくなったことで、この世界の歯車は、すべて噛み合いましたか?
私がここにいたこと、許してくれますか……――――?
-Fin-
炉心融解 ~melt down~ 12
皆様のおかげで、無事に最終回を迎えることができました~(笑)
毎回毎回、駄文を投稿してしまって、次回はもっと良い文を……!と思いつつ、最終回です。
初投稿の作品が、こんなに長くなるのは予想外でしたが、
メッセージをくれる方もいらして、自分なりにがんばって
書けたんじゃないかなあと思います。
次回作は未定ですが、気が向いたら
また書かせていただくかもしれません!
その時は、またよろしくお願いします。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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