永久に忘れ得ぬ約束を。
叶わずのコトバと知っても、諦めないから。


日が沈んだのは何時の事でありましょうか。
気付けば、私のいる世界は闇に包まれておりました。
待ってはおりますが、ここは果ての国なのです。
今となっては遠くなった彼の人の姿を捜せど、塗り潰された闇の中にはその欠片すらありません。
何時になれば会えるのかと宛てもなく問い、闇に請い、どれだけの時が過ぎたのでしょう。

『ねぇ、市花・・・一緒に逝かない? 君に置いて逝かれるなんて考えたくないんだ』
『蓮様・・・この市花、嬉しゅうございます。ならば、約束を交わしてくりゃれ。永久に愛してくださると』
『約束しよう、いち―――』
『凜。それがわっちの、親からもらった名にありんす。この名にかけて誓ってくりゃれ、蓮様』
『約束するよ、凜』
『永久に、貴方と共に』

そう、あれは何時かの冬の日の事。永久を誓った約束と、絡めた小指と手毬歌。叶わぬ思いを叶えられると思って、共に堕ちた日を歌うのです。
叶わないと知った今も歌うことを止めません。
私は、決して名高いとは言えない梅毒に侵された遊女。そして貴方は商家の三男坊。遊郭を出る二十四よりも先に、病は私を黄泉に堕とす。
だから、一人より二人と貴方と共に堕ちたのに。
今の私と貴方には、久遠の旅路が横たわる。死に損ねた生者である貴方と、確かに死んだ死者である私。されどそれこそ飛び越えてみせましょう。黄泉平坂だって、駆けぬけてみせる。
今ある全てを擲って、貴方に会いにいきましょう。

全ては、約束を果たすために。約束を守るために。貴方が約束を違えないように、私が約束を違えないように、あの歌を歌うのです。

ライセンス

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【勝手小説】手毬歌・1 遊女凛

mayukoの神楽曲、手毬歌の1番にあたるところです。
リンとレンの間の温度差がある曲ですね。この後はっきりしますが。
今回はリンだけでしたが、遠くない次回に2番のレン、そして二人の視点を交互に載せたラストの3部作になる予定でいます。
最後までお付き合いくださると嬉しいです。

閲覧数:181

投稿日:2011/03/17 14:38:35

文字数:708文字

カテゴリ:小説

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  • 翔破

    翔破

    ご意見・ご感想

    読ませていただきました。
    やばいです、言葉遣いが物凄く好みです!続きが気になります。
    是非続きをお願いしますっ!

    2011/03/17 18:13:54

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