人生リセットボタン

投稿日:2013/04/13 18:23:48 | 文字数:3,004文字 | 閲覧数:169 | カテゴリ:小説

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ボーカロイド自己解釈小説第五弾.

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体が酷く重い。
寝ている間こそ気づかなかったが、目覚めたらそうわかった。
鈍器で殴られたような感覚だ。
動くとギシギシと体が軋み、起き上がることさえ楽ではない。







そこまでして、はっと気づく。
目の前に、小さなボタンが転がっていた。
その横に、一枚のメモ書きがある。







"Cela fait votre vie refaire."







フランス語で、"これがあなたの人生をやり直させる。" ――そう書かれていた。
要するに、人生リセットボタンということだろうか。







しかし、こんなものが実在するはずがない。
あったとして、ずっと死ねなかったこの僕が。
途端、過去に少し触れられただろうか、眩暈がした。







そうだ、こんなものは所詮玩具だ。
人生リセットボタンを象った、影武者のような存在。
きっと……そうに違いない。







僕は、幼い頃から一人だった。
孤児として拾われ、人と接することなく時は刻まれてゆく。







弱い自分が嫌で嫌で仕方ない。
そう思い続けて、それが中学生まで続いた。
強くなった僕は何でも一人でこなし、とうとう天才神童と呼ばれるようになる。







そして、中二のある授業参観日前日。








拾った野良猫と野良犬を連れて遠い森の中で座っていると、背中に痛みを感じた。
じわり、と熱いそれが自分の血液だと気付くのに、数秒かかった。
熱と痛みの中で、この森に人が訪れることを不思議に思った。







こうして、無敵の僕は中二で朽ち果てた。















――はずだった。
覚めることのない目が、覚めてしまう。
この感覚は、ちょうど今さっきと同じだ。







僕はどうやら、死んでも生き返るらしい。
生物的には一度死ぬので、死ねないことはないようだが。







現在に至るまで、何度これを繰り返したことだろう。
意味のない死をループして、心はボロボロだった。
体は生き返る際に自然治癒するようで、目覚める度に無傷である。







でも、僕は何度死んでもこの死を受け入れられない。
駄目だ、とこの人生を拒み続ける。







累計、これまでで何百年かかっているだろうか。
ひょっとしたら、もっとかかっているかも知れない。







一体誰が、こんなことをしているのか。
はたまた自分の体質か。







どこぞのネバーランドの囚人あたりが、自分と同じように死ねない苦しみを味わえと、悪戯紛いなことをしているのかと、変な妄想に憑りつかれてしまう。







最も、僕のこれは死ねないのではないから、些か違い生き地獄ではないのだが。
どちらにせよ、強さを求めてきた僕にとって、痛みへの恐怖という弱さは、極上の終身刑だ。







妙な経験と思考を繰り返しているせいで、海馬はショート寸前だった。
異質すぎる感情入力で、もう時空間情報を正確に捉えることはできなくなっている。







八つ当たりをするように、自分の手を掻き毟った。







翌日。
今日はフォークで目を抉られ、視力を失った。
傍から見れば、さぞ酷い顔をしているに違いない。
死には直結していないので、ただただ盲目となった。
不便なことに、死ぬようなダメージでない外傷は、そのまま残るのである。
それが僕に残された、数少ない人間らしさだった。







殺されこそしなかったが、無理矢理ここに連れたれ、強引にレイプをされた。
僕は心は強くとも、力は圧倒的に男に及ばない。
抵抗など無駄だった。








男は事後の後、騒ぎにならないようにと目を潰したのだろう。
もう普通の人間ではないし、騒ぐことはしないのでそう言えばよかったのだが、到底信じてもらえるはずがない。







今回のようなことは、別段初めてではなかった。
このように外傷を負わされたケースだけは、初めてだが。
大抵の男は、犯して痕をつけるくらいのものだ。







何度目になるかわからない強姦は、とっくに慣れてしまっている。
この特殊な体は、膣内射精をされても妊娠しないようにできでいる。







遣る度に甘い蜜だ、だなんて冗談も大概にしてほしい。
気持ち悪い、吐き気がする。







いくら言い寄ったって、愛想はゼロ。
僕は怨嗟を抱くだけ。
そんな感情はもう十分。
いや……最早そんな言葉では言い表せないかも知れない。
僕のボキャブラリは、既に限界を超えていた。







告白だけでもう三千回を超え、すべての人間を "タイプじゃないんです" と切り捨ててきた。
この有様を見たら、囚人は笑うだろう。
それこそ無機的だが、昔はもっと素直に笑えたはずだ。







いっそ、海馬だけ未来にワープできたらいいのに。
先回れば、恐怖を感じずに現実を受け止めることができるから。







ブラフを張ってみたって、ちっとも気が晴れないことは明確。
その手には乗らず、僕は笑うことをやめた。
こんな状況じゃあ、嘲笑や苦笑さえままならない。







そういえば……
僕が強かった頃、将来の夢があったっけ。
何だったのだろう、まったく思い出せない。
酷い耳鳴りが、思い出すことを止めた。







その雑音の中で、僕はどうでもいいことを思う。
あの頃の自分は横暴すぎた。
頭脳明晰で心が強かれど、本当の強者とは呼べない。







あのとき誰かが叱ってくれていたら、何か違っていたかも知れない。
求めすぎると結局手に入らないことに、今更気づくなんて……







でも、今思うべきはこれじゃない。
何か別のことなのだと頭ではわかっているが、答えが喉で止まってしまっている。







……そうだ。
昨日放置したままのボタンがある。
視界が闇に包まれる中、手探りで探してみた。







するとコツン、と指先に硬いものが触れた。







「見っけちゃった。」







掻き毟った手で、人生リセットボタンを掴む。
どうしようもないなら、賭けてみるのもいいかな。
そう思って、ふらつく足取りで立ち上がる。







そして廃工場を出て、五感と勘を頼りに森を目指した。







暫く歩くと、どうやら無事に辿り着いたようで、難なく最深部の湖と対面できた。







ここは午前五時、僕が初めて刺された始発の湖。
同時に、人生の終着点でもある。







移動しているとき、ずっと考えていた。
あの耳鳴りはもうない。
やっと答えが出た。
間違っていようがいまいが、否定できる人は誰もいないが、何となくの気分で自分の海馬に問い掛けてみた。







「僕のいない世界こそきっと答えだと思ったが、どうでしょうか。」







無論返事はない。







そして、無言で掌を開き、人生リセットボタンを外に晒す。
僕は何の躊躇いもなく、小さなボタンを押した。







瞬間、すうっと魂が抜けた。
その感覚は自分でもわかる。
そのまま体がふわりと浮かび、僕の骸は湖の底に沈んでいった。















End.

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