(第4話までのあらすじ)
アイ:ルカの世界を変えたことで起こった“異常な時間変化”を罰するためにやってきた、「ミキ」、「ユキ」、「テル」の時間管理局の3人。世界が変わっても時間が変化しても記憶を失わなかった喫茶店常連のメンツに「はぐらかされた」事に腹を立てたミキの令で、喫茶店のメンバーと時間管理局のメンバーは戦うことになりました。結果はユキとテルの連勝により、時間管理局の勝ち。結果、喫茶店のメンバーは、時間管理局に行くことになりました。
<続・ようこそ、木之子駅前商店街へ! 第5話 異変>
(商店街中央通り)
ゾロゾロ…
ミキ:もうすぐですよ~
学歩:ミキさん、ちょっと訊きたいのですがいいでござるか?
ミキ:なーにー?
学歩:喫茶店のメンツ全員、この商店街の事は良く知っている方だと思っています。“時間管理局“なんて施設、無かったと思うのでござるが…
レン:僕も知りませんよ
ミク:ミクもそんな所にお使いに行った覚えはないミクよ?
ルカ:私もコーヒーとか注文を受けた覚えはないです
テル:無理もありません。“見える世界”にはありませんから
学歩:え?
ミキ:はい、着いたー!
そこは、非常に目立たない狭い路地の入り口だった。
リン:ここって、単なる路地裏じゃん!
ユキ:はい、皆さん、ちょっといいですか?
ユキは路地裏の入り口の目の前に立って、ポーチから何かを取り出した。
ルカ:それって… 鍵ですか?
ユキ:そうです。管理局へ通じている通路の鍵です
学歩:でも、近くに扉なんてないでござるよ?
テル:当然です。保安上、見える扉だったら困りますから
ユキは鍵を、路地裏に通じている通路の面を扉だと見立てた時に、鍵穴がありそうな所に鍵をさして、そしてくるっと90度ひねったのでした。
ガチャッ ギギィ…
学歩:と、扉が…
ルカ:出てきて、開いた…
そう、ユキが鍵を差し込み、ひねって開けて、鍵を抜いてポーチにしまったその間に、木製の扉が現れて開いたのだった。
ミキ:さぁ、皆さん、先に進むのだぁ! あ! でも、局長はミキだから、ミキが一番先!
ミキは先頭を切って、扉の先に進んだのでした。
テル:さぁ、皆さん、先に進みましょう。この先に時間管理局があります
ミク:驚き、桃の木、山椒の木、ミクミク
ルカ:時間管理局って、異次元にあるんですね
テル:いろいろ、こっちの人に知られると困るので、向こうの世界に置いてあるんです。あ、でも安全ですから
学歩:じゃなきゃ、行かないでござるよ
ゾロゾロ…
一行はその扉を越えて、路地裏になかった“石造りの通路”を通っていったのでした。そして全員が扉を抜けると、先ほどの扉が閉まり、そして、異次元側からもレン達の世界からも、見えなくなって、消えてしまいました。
(時間管理局前)
その建物は、意外にも“普通のコンクリートの建物”でした。階数は4。大きいわけではないが、建物のあらゆる所に、どこから通じているか解らない“ケーブル”が無数に敷かれており、異様といえば異様な建物でした。
ミキが通路の終点にある、建物の入り口のインターホンに向かって、元気に挨拶した。
ミキ:局長のミキちゃんが、今帰りましたよー!
インターホンの声(アイ):わかりました、今ロックを外します
ガチャッ
ガラス扉のロックがはずれた音がした。
ユキ:既にそちらに連絡したが、例の件に関する向こうの世界の客人を連れてきている。局内に入れて大丈夫だな?
インターホンの声(アイ):ユキ様やテル様に同行するのなら、問題ないです。スキャニングは完了してます。
学歩:拙者の刀はいいのでござるか?
ユキ:それは、局に入ってすぐの受付で預けて頂きます
こうして一行は受付を通り、コンピューター部屋の一階から二階に上がった。
ミキ:ここは、局員のアイちゃん達が、頑張って働いてくれる部屋なんだよーん!
レン:“達”って…うわ! 同じ女の子だらけ!
そう、そこで働いている女の子は、全員、幼稚園児としか見えない、同じ女の子“アイ”ちゃんだらけだったのだ。
ミク:これ、全員見分けついているミクか?
ミキ:もっちろん! あの子がアイちゃんで、こっちがアイちゃんでしょ、それで
学歩:もういいでござる。頭がこんがらかるでござる
ルカ:凄いスキルですね
レン:だから、調査員も受付も、同じ名前で同じ声だったのか…
一行は似たような3Fを越えて、3人の各自の執務室がある場所に移動した。今回は局長自らの部屋で説明する事になった。
***
(局長の執務室)
テル:さて、議題に移る前に、そっちのメイコさんの事を訊いておかないとならないです
学歩:拙者達の世界のメイコさんは、前の世界の“めいこ人形”が人間化した存在だから、今の世界に変えた張本人のメイコさんとは、厳密には違うでござる
ユキ:そう。だから会っても、“なのだなのだ”と言っているだけで、拉致があかなかったんです
ミキ:なら、メイコさん以外で、事情を知っている人に会うことが出来るかって事だね? 該当者は向こうの世界の、ルカさんと子供のルカさんしかいないけどね
レン:それはどちらも無理だと思う。既に前のルカさんの世界は、こっちの世界に変わって、ルカさん自信も別の子供に戻り、そして成長して、今、ここにいるわけだからね
ルカ:え? え?
リン:今のルカさんは知らなくて良いのよ?
ルカ:すみません、全く記憶が無くて
ミク:こんな状況ミクよ? やっぱり無理ミクよ
ミキ:それが、無理でもないんだよーん!
ウィーン!
パソコンの横から、スキャナーのような装置がせり出してきて、部屋の中央で止まった。
レン:なに、これ?
テル:接触式センサーです
リン:スキャナーでしょ? これ?
ミキ:ちっちっちっ、違うんだなぁ
テル:この装置は、あなた達のような、この件に深く関わっている人物の手から記憶をコピーして、詳細に分析するための装置なんです
学歩:分析するって、何でも知っているのではなかったのでござるか?
ユキ:我々でも限界はあるし、今回の件は、当事者から直接引き出さないと解らない情報が多すぎるのだ
テル:できればメイコさんが一番だったのだが、アレではどうしようもない。だから、あなた達の出番なのだ
レン:でも、今のルカさんは関係ないと思うけど?
テル:いや、そうでもない。彼女が1回子供に戻って、この状態まで成長する間の記憶だけは欲しいのだ
学歩:わかったでござる。それくらいなら、協力するでござるよ
こうして、喫茶店側のメンバーは、ルカも含めて、この機械に記憶をコピーさせ、分析して貰うことになった。
***
(テルの執務室)
分析はテルの部屋で行う事になった。安楽椅子とか紅茶とか、色々揃っていたからだ。ミキの執務室にあったのは、機械とプルーンジュース一式だけだったからだ。
テル:なるほど、我々が違反と見なした“時間の異常変化”の間、ルカさん以外は、変化せずに時間跳躍してますね
ユキ:ルカさんは、分岐点になった子供に戻ってから、こっちの生活が始まって、普通に大学生のここまで成長してますね
ルカ:レンさん、そうだったんですか?
レン:隠していたわけじゃないんだけど、僕たちは本来、向こう側の存在だからね。だからルカさんの時間軸に支配されない存在なんだ
学歩:だが、我々は、時間跳躍とか、特殊な事は、一切してないでござるよ?
リン:自然に、時間が早く動いて、あっという間に今のルカさんの所で、止まったんだよ?
ミキ:ふむぅ… こっちのデータになかった情報だねぇ
テル:この情報を掴んだことで、あなた達の時間に関する罪は消えたよ。すまなかった
ルカ:レンさん、よかったですね
レン:うん。でも、この時間跳躍は、なんで起こったんだ? 僕たちもそれは知りたいな
テル:うーん、ここまでの分析からすると、自然発生みたいだけど
ミキ:君たちがファクターになっていると考えると、1つだけあるんだよーん!
ユキ:ミキ様、本当ですか!
ミク:それは何ミクか?
ミキ:皆さんが全員、早く成長したルカさんに会いたい、って思っていたからだよーん!
学歩:そ、それだけでござるか…
テル:いや、それが一番有力だ。前の世界の記憶を失わずに、時間に左右されずに、この世界で生きている君たちが、この世界の律速のファクターになっていたと考えると、君たちの“総意”が、時間跳躍を起こした、と考えるのが自然だ
ユキ:そうだとしても、我々は君たちをとがめない。作為的に行った事ではないからな
ミキ:それくらい、前の世界のルカさんも、皆さんにとっては、大事な人だったわけだね。リンさんの記憶からも、こっちの世界での再会の時、泣いていたわけだし
リン:うん、あの時は、また会えて凄く嬉しかったから。記憶がなかったのはちょっと残念だったけどね
ルカ:ごめんなさい
リン:ううん、いいの。そういう“約束”で、この世界が作られたんだからね
テル:わかりました。とにかく有力な理由が解った以上、あなた達を調べる理由はないです。また商店街にお送りします
学歩:そうでござるな。我々にも生活があるでござる
レン:でも、引っかかっていた事の理由がわかって、むしろ、ありがたかった。礼を言うよ
ミキ:やったー! 誉められたんだよーん!
ユキ:局長…
ミク:では、帰るミクね
バタン!
その時、局員のアイが、血相を変えて、部屋に飛び込んできた!
テル:なんだね! ノックくらいしたら
アイ:はぁ、はぁ。はぁ…。局長! 大変です! “時間逆流”を起こってます!
ミキ:時間逆流?
ユキ:時間が逆に流れている事です。つまり、過去に戻っているということです
テル:それで、やっている犯人は? 今の時点でわかるか?
アイ:それが…子供のルカさんらしいんです
ルカ、レン、リン、ミク、学歩:えっ!?
***
(ナレーション)
ショウタ:時間跳躍の原因がわかった矢先に、元の世界に起こった、とんでもない事態、時間逆流。そしてその犯人は、子供のルカさんらしいとのこと。全く事態が掴めない状態で、喫茶店と時間管理局のメンバー達は、どうするのでしょうか? そして、ルカさんの運命は!? 次回に続きます。
(続く)
CAST
巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ
鏡音レン(レン):鏡音レン
鏡音リン(リン):鏡音リン
初音ミク(ミク):初音ミク
神威学歩(学歩):神威がくぽ
古河ミキ(ミキ):miki
氷山キヨテル(テル):氷山キヨテル
歌愛ユキ(ユキ):歌愛ユキ
アイちゃん、ナレーション:月読アイ
ナレーション:月読ショウタ
その他:エキストラの皆さん
コメント2
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ご意見・ご感想
オレアリア
ご意見・ご感想
enarinさん初めまして!この度は突然フォローをさせて頂いた上に、初コメと大変失礼します(汗)
早速enarinさんの小説を拝見させて頂きました!
とにかく設定・キャラ・世界観と何を取っても内容が濃く充実して凄いです!素晴らしいの一言、そんな印象を与えられました。
このストーリーには僕自身が惹きつけられる要素がたくさんありました!
かなりの長い長文、本当にお疲れ様です!
次回も期待してます!是非ともブックマークさせて頂きますね!
2011/07/12 23:59:09
enarin
オセロット様、初めまして! enarinです。ようこそお越し下さいました!
> この度は突然フォローをさせて頂いた上に、初コメと大変失礼します(汗)
フォローにコメントにご閲読、本当にありがとうございます! 私もフォローさせていただきました♪
> 早速enarinさんの小説を拝見させて頂きました!
ありがとうございます! このお話は、オリジナルシリーズの2作目”ようこそ! きのこ駅前商店街へ”の続編となっており、1,2,3話は、ラジオドラマの台本形式で進んでいたので、小説形式なのは、4話からとなってます。
> とにかく設定・キャラ・世界観と何を取っても内容が濃く充実して凄いです!素晴らしいの一言、そんな印象を与えられました
本当に有り難うございます!! 凄く嬉しいです! 設定は話により、ライトなものからディープなものまで色々あるんですが、今回はライトな部類に入ると思います。キャラはこのお話がラジオドラマの元になっており、会話に参加するのが、”持っているボカロ&ボイスロイド”に限られているため、キャラ数が他のシリーズより少な目ですね。設定は、既に出来上がった物の続編になっているため、比較的作りやすかったです。
> このストーリーには僕自身が惹きつけられる要素がたくさんありました!
ありがとうございます! 謎の施設”時間管理局”、そして、時間を乱しているのが、どうも”少女ルカ”らしいとのこと。少女ルカは既にいないはずなのに・・・。さてどうなるのでしょう?
> かなりの長い長文、本当にお疲れ様です!
どうもです! そうですね、結構、思いつくまでに時間がかかる部分もあるため、このお話の更新はラジオドラマ製作も含めて、一ヶ月単位になってます。もう1つレース物の連載もあるので、遅筆で申し訳ないです?。
> 次回も期待してます!是非ともブックマークさせて頂きますね!
有り難うございます! ラジオドラマ次第ですが、必ず続きを書きますね。
このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!
2011/07/13 13:37:16
日枝学
ご意見・ご感想
四話含め読了! いやあ時間跳躍したり並行世界の要素があったりする作品は良いものですね
多くの登場人物が登場する中、上手くキャラを書き分けることが出来ていますね。事件→解決→新たな事件の流れと、テンポの良い展開が読み手を飽きさせなくて良いと思います。
執筆ナイスファイトです!
2011/07/06 18:23:45
enarin
日枝学様、今晩は!
> 四話含め読了!
ありがとうございます?。4話はバトル編だったので、もしかすると台本にして音声化してある”ラジオドラマ”の方がわかりやすかったかもです。
> いやあ時間跳躍したり並行世界の要素があったりする作品は良いものですね
これを含めるとオリジナルは15作(+単発数話)書いてますが、趣向は、SFや推理やバトルや冒険や学園や時代劇とか、色々なものにチャレンジしているので、ほぼバラバラなんですが、タイムスリップや平行世界のジャンルは、一番多いですね。SFとかファンタジーのジャンルに入ると思うんですけど、現代の設定でこれをやってます。常連さんからは、”ジュブナイル”、って言われたことがあります。
> 多くの登場人物が登場する中、上手くキャラを書き分けることが出来ていますね
ありがとうございます!! ボカロが沢山あるからといって、沢山のキャラをシナリオに絡ませてしまうのは、私の悪い癖なんですが、このお話に出てくる位の数だと、初期設定に従った上で、なんとかキャラの書き分けは出来てます。小説オンリーだと、もっとキャラを増やしたいのですが、元々ラジオドラマの台本としてスタートした物なので、セリフのあるキャラは、持っているボカロ&ボイスロイドだけになってます。
> 事件→解決→新たな事件の流れと、テンポの良い展開が読み手を飽きさせなくて良いと思います
ありがとうございます! 最後に新たな事件or展開を持ってくるのは、どのジャンルでも王道として使われている趣向だと思ってます。話が続いている時は使えないですが、この場合は使えました。
> 執筆ナイスファイトです!
ありがとうございます! 今回は小説3 ラジオドラマ7位の割合で時間がかかりました。小説というかこういう台本がしっかり出来てないと、ラジオドラマは作れないので、頑張りました!
このたびのご閲読、コメント、有り難うございます!
2011/07/06 19:37:47