「はい?」
こう答えるしかない。
探偵部?そんな部活あること自体知らなかった。
というか、部活紹介でなかったような・・・
「いいからいいから~」
「え!?ちょっと・・・!」
彼女は私の手を掴み、走り出した。
私と彼女の髪が勢いよくなびいた。
~孤独な少女は夢を見るか?~
「第二話 八方美人(?)」
*
*
*
*
*
私達一年生の教室がある4階に着いた。
彼女が思い出したように自己紹介した。
「あっ、私初音ミクっていうの。よろしく~」
「えっと・・・鏡音リンっていいます・・・よろしく」
顔を赤らめながらも、なんとか自己紹介する。
「じゃあ、探偵部、考えといてね~。私4組だから」
そういって教室に入ろうとする初音さん。
でも、ひとつ重要なことを伝えなければならない。
「初音さん・・・」
「なに~?」
「私も4組なんだけど・・・」
*
*
*
「さっきはごめん・・・」
初音さんは異常な速さで頭を下げる。
「いいよ・・・慣れてるし・・・」
私は今にも消え入りそうな声でつぶやく。
実際、私は極力目立たないようにしていたので、初音さんが私の存在に気づかなかったのもしょうがないだろう。
「私こそごめん・・・昨日話しかけてくれたのに・・・」
とっさの事とはいえ、あれでは失礼だろう。私は素直に頭を下げた。
ところが、初音さんは呆気にとられたような顔をしていた。
私、なにかマズイ事でも言ったのだろうか・・・
「え・・・?いつのこと?謝る事なくない?」
どうやら初音さんは心当たりがないようだ。私は昨日話しかけてくれたのに逃げてしまったことを謝った。
「なあんだwそんなこといいよ。気にしないで☆」
初音さんが私に笑いかける。
見計らったようにチャイムが鳴る。
「あっ、席もどんないと」
初音さんは小走りで自分の席に戻っていった。
ドアを開け、担任が入ってくる。
今日も、一日が始まった。
昼休みになった。
入学して間もないのでコミニュケーションをとることが多く、疲れた。
私は他人と意思疎通をとることを好まない。
しかし反面、どこかで他人とかかわりを持ちたいと思っている。
私はこんな自分が嫌いだ。
「鏡音さん~ゴハン食べようよ~」
初音さんが弁当を戦利品のように掲げながらこっちに寄ってくる。
いいよ、と言おうとしたが、周りにも何人か人がいるのを見て、固まってしまった。
何を言おうか思案していると、初音さんの周りにいる人の一人が初音さんに何か耳打ちした。
初音さんが一瞬暗い顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻った。
耳打ちした子達ああが、みんな残らず別の場所に行ってしまった。
私は初音さんにOKを出した。
「じゃあせっかくだから中庭で食べようよ」
初音さんはそういうと、私の手を掴んで歩き出した。
しかし私は聞えていた。耳打ちの内容が。
「ミク、あたしたちこの子といっしょに食べたくない。ミクがどうしてもっていうなら、あたし達別の場所で食べるね」
やはりこうなのか・・・
私は・・・・・・
弁当を食べ終えたが、昼休みはまだ15分ほど残っていた。
初音さんがいきなり質問してきた。
「ねえ、昨日読んでた本、アニメにもなったやつだよね?」
「うん、そうだけど・・・初音さん何で知ってるの?」
意外だった。確かにアニメ化されたことで知名度は上がったが。
でもアニメ化されたとはいえ深夜帯だ。私も試しに見てみたがはっきりいって原作の方がいいと思った。
「初音さんじゃなくて、ミクでいいよ。・・・え~っとね、うちの弟がそういうの好きでさ~。いっしょに見てたの。私も、そういうミステリー系好きなの」
初音さんもミステリーを好むことに、私は驚いた。錯覚だろうが、親近感が沸いた。
しかし、どんな話題を振ろうか、困ってしまった。
いきなり、コアなミステリー小説の話を振っても、初音さんが知らなかったら困ってしまうだけだ。
「えっと、初音さn「だ・か・ら!!ミクでいいってばあ!」
初音さんがすごい剣幕で私に迫る。
私は「でも・・・初音さん・・・」と言おうとしたが、ここで初音さんに失望されたくない。
「ミ・・・ミク・・・?」
私は勇気を振り絞り、消え入りそうな声でつぶやく。
さっきまで仏頂面だったミクが、みるみる笑顔になっていく。
「わあ~い!リン大好き!あっ、私もこれからリンって呼ぶね」
私はうなずいた。
友達・・・か・・・
しかし私はまだミクを信じきることができない。
昼休みの事・・・ミクはどう思ってるんだろうか?
「ねえ・・・ミク?さっきの昼休みの・・・」
「ああ、あれみんなが宿題が終わってないって言ってt「私、聞こえてたの。私の悪口みんなが言ってたのを」
ミクが呆然とした顔をする。
「私、友達なんていらないの。昔裏切られたから。みんな都合のいいことばっかいって、都合が悪くなったら平気で手のひら返す。私そんなの嫌。ミクは私とほんとに仲良くしたいの?それとも「都合がいいから」仲良くしたいだけ?」
ミクが今にも泣きそうな顔をする。
私は、ひどく後悔した。
また、やってしまった・・・
昨日の放課後と同じ・・・いや、それ以上。
今度こそ、完全に、嫌われた・・・
(謝らなきゃ・・・)
私が言葉を選んでいると、ミクが口を開いた。
「・・・私も、同じなの。」
・・・え?
「私、あの子達・・・あっ、昼休みの子達ね。私・・・嫌いなの。理由はリンが言ったとおり。」
私が口を挟む間もなく、ミクが話続ける。
「リン、初音ネギカって知ってる?」
もちろん知っている。
初音ネギカ。性別は女。
職業は探偵。
まだ23歳という歳でもあるに関わらず、警察にも度々捜査協力している。
メディアにもたまに出ている。
私がうなずくのを確認すると、ミクは話し始めた。
「ネギカは私の姉なの。ネギカがあまりにも有名になりすぎたせいで、「名探偵の妹」である私はたちまちクラスで人気者になった。でも私はそんなの嫌。そんなの、「名探偵の妹」の私と仲良くしてるだけ。だれも「初音ミク」としての私と仲良くしてくれない。そんな友達、私はいらないの。探偵部を作ったのも、ネギカと張り合うため。本当の私を見て欲しかったの・・・」
ここまで話し終えると、ミクは懇願するような目で私を見てきた。
「だからリン。私と、「初音ミク」と友達になってくれない?」
ここまで聞いて、私に「信じない」という選択肢は残されていなかった。
私は、静かにミクを抱きしめた。
ミクも、黙って私に体を預けた。
見計らったようにチャイムが鳴った。
それでも私達は、しばらく立ち尽くしていた。
「・・・ああ!!」
ミクが叫ぶ。
「授業始まってる!!」
続
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