~第三幕~ 青の王子
青の国には昔からこう言い伝えがあった。
『悪の娘が現れた時、どこかの国が滅びるだろう。
その後、赤の鎧の女剣士が現れ民を導き、
共に、青の国の王子も共に戦い、世界を平和に導くだろう。』
この時はまだ僕が小さなころだったからこんな言い伝えなど信じていなかった。
それは、君が「悪の娘」と呼ばれるずっと前。
初めて君と出会ったときの君は、先代王女、リリィ王女の腕の中で眠っていた。
そっと抱かされた赤子。
僕は初めて「命」というものにふれた気がした。
それから僕は君の事を、妹のようにかわいがった。
右に君、
左にあの子。
三人で共に笑っていた……かった。
君とあの子が五歳の誕生日にリリィ王女は亡くなられ、
大人たちの都合と生まれた順だけで、目の前で君たち双子が引き裂かれた。
今でも目をつぶると思い出す。
これがきっかけで、悲しい出来事が起きることを、まだ誰も知らなかった。
時は流れて、君は「悪の娘」になった。
そのころ、僕は恋の相手を探していた。
数知れぬ人々。けれども僕に見初められられる者はいなかった。
ちょうどお忍びで、緑の国へ行ったときに見かけた、きれいな緑の髪の娘。
「あら?はじめまして?」
やさしげな笑み。胸が高鳴った。
夜な夜な城を抜け出して、緑の国へ向かう。
けれども、家臣たちに見つかって、僕の行く手を防ごうとした。
それでも僕は彼女と会い続けた。
次第に彼女の心がわかるようになってくる。
彼女は僕など好きでない。
初めてであった時、なぜあんな笑みをしたのか?
けれども僕のこの思いはとめられない。
僕は誓った。何をしてでも、僕が君を守ると。
だから見せて、心からの笑みを―。
内緒でミク(彼女)と出かけた時に、街で見かけた見覚えのある二人。
何年ぶりだろう。
先代女王の子供、リンとレンだった。
君、リンは「悪の娘」。あの子、レンは「召使」。
今では一緒にいるんだなと安心していると、
ふと、隣にいたミクが微笑んでいるのに気がついた。
僕に見せたことのない笑顔。
僕に見せてほしかったその笑顔。
ミクがレンと恋に落ちたことを知った笑顔だった。
君が幸せならそれでいい。
なのに・・・・なぜか涙が止まらない。
数日後、大臣から緑の国が滅びたことを聞いた。
「王子様、緑の国が滅びました。あの娘の亡骸も発見済みです。」
「うそだ!そんなはずはない!」
最近まであった緑の国が、たかが数日滅びたのだから・・・。
「滅ぼしたのは、黄色の国の者たちです。」
真実を知るのは黄色の国。
僕が愛したミクが愛したレンが彼女を殺したのだ。
僕は愛した人を、
守れなかった。
変えられなかった。
僕は黄色の国へと行く。
広場で赤い鎧の女剣士が開戦を告げている。
「よし!僕も行くよ!」
なぜレンは、彼女を守らなかった。
彼女と惹かれあっていたのに。
僕は青の国に伝わる言い伝えに従い剣を持とう。
昔の二人はもういないんだね。
あの笑顔ももう見れないんだね。
だから僕は、お前らを許さない。
昔のお前らなら彼女を守っていたかもしれないのに。
もうすぐ君を終わらせる。
黄色の国の赤い鎧の女剣士と共に。
これも君の報いだろう。
復讐の刃を城に向ける。
「さぁ、敵(仇)はもう目の前だ!」
城に乗り込み玉座の前。
うつむく王女の顔を剣であげる。
君と同じ顔だけど・・・
「この、無礼者!」
あの子はいう。君と同じ声で。
僕は復讐者。
君は逃亡者。
報いの先には君はいない。
剣の先でただ強く光る瞳。
音をたてて落ちる剣とともに
「この、悪魔!」
僕はいつのまにか泣いていた。
処刑の時間が決まった。
君たちが生まれた時間、午後三時の教会の鐘がなる時間。
ついにその時がやってきて気がついた。
僕は彼女だけでなく、あの二人も助けられなかった。
だけどもう手遅れで、民衆のための午後三時。
僕は剣を下ろす。
君は死んで、君は生きた。
この世に運命なんてない。
運命は自分で変えられたんだ。
僕にこんなことする資格はないけれど、ただ一粒だけ光らせた。
民衆の中に混じる君と共に・・・。
青の王子、カイトは、
大切な人を誰一人と、
助けることができませんでした。
青の王子と共に戦った、
赤い鎧の女剣士はどうなのでしょう?
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