ボーン…ボーン…ボーン……―
12時を告げる柱時計の音が、鳴った。
その時計のゆらゆら揺れる振り子は、まるで私とレンの今の心情のようだった。
私はそっと唇に触れる。まだ、ほんのり温かかった。
「……ねえ」
私は、レンに言う。
「……ほんとに、行っちゃうの?」
「…え?」
「……これからは…違うベットで寝るの?」
私は、レンを見て言う。レンの顔は驚愕に染まっていた。まさか自分とお母さんの会話を私が聞いていたとは、思わなかったのだろう。
視界が霞む。あれ、私、なんで泣いてるの?
私はレンに気付かれないように背を向けてぐしっと腕を一回動かした。
「……そう、だよ」
レンの口から出た言葉は、やっぱり予想していた言葉だった。予想していたけど……私の心には重く響いた。
「…もう、12時だ」
レンがベットから立ち上がる。
私はぎゅっとシーツを握り締めた。
ヤダ……待ってよ……レン…行かないでよ…
「おやすみ」
レンは、優しく私に微笑んだ。
「……っ」
私はタッとレンに近寄ると、レンのそのブラウスの裾をギュッと掴んだ。
「待っ……て」
レンがこちらを吃驚したように振り向いている。
「…せっかくベットが広くなるんだから、ゆっくり休みなよ」
そして、レンは――私の手に一つ、キスを落とした。
「―」
背骨に衝動が抜けていく。
「じゃあ……おやすみ」
レンは私に背を向けて、ドアノブに手を掛けた。
「―っ!!」
私は、レンに抱きついた。
「やだよ…行かないで」
「リン」
私はそれでも抱きつきを止めなかった。レンの胸板に顔をうずめて首を振り、右手でどんどんと叩く。服を握った手は、震えていた。
「レンは……レンは私と離れてもいいの?…わたしはそんなのヤダ!」
自分でも分かるくらい、私の声は震えていた。
「まだ……いいじゃない……お化けが出たら、どうしてくれるの?私、怖くて死んじゃうじゃない」
「…リン」
レンは私の頭を優しくポンポンと撫でると、挑発気味に私に言った。
「まだまだ子供だね、リン」
―違う。私は―そんなのじゃなくて……
「っ…違……う」
震える手で、レンの両腕を掴む。私の視界は、霞んでいた。
パパとママの知らない時間。
これは…2人だけの時間。
だから……だから……
「……リン」
レンが、私を抱きしめてきた。強く、強く、抱きしめてきた。
私も抱きしめ返す。それが秘密の合図のようで嬉しかった。
ドサッ。
「リン……」
私は……レンに、ベットに押し倒されていた。
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ゆるりー
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