・・・―― ウタヲ ウタヲ ノロイノウタヲ ウタエ ウタエ オワリノウタヲ ――・・・
・・・―― サア ウタエ ノロイヲ ウタエ オワリ ツゲル ノロイノウタヲ ――・・・

・・・!?

まただ・・・また同じ夢を見た。
俺が起こしてしまった「アオノウタ」事件以来、俺は何度もこの夢を見る。
見る夢は2つ。
一つは、金髪(と言うよりも黄色だろうか?)の男の子と女の子が、同じ歌を歌い続ける夢、
もう一つは、同じく、歌い続けている夢だが、歌っているのは桃色の髪の女の人。
あの人たちを俺は、インターネットでうっすらと見覚えがあるような気がして、
でも、あの事件以来、あの事件に関係しそうなことは、俺らのなかでは禁句になっていた。

だけど、気になるなぁ・・・

「お兄ちゃん!!」

突然ミクが、俺に向かって走ってきた。
「どうしたの?」
俺がそう聞くと、ミクは真剣な顔で、
「お兄ちゃん!大変なの!!異常が、また起こってるの!!」
「・・・え?」
「あの事件の時みたいなおかしなことが!!起こっているの!!」

これは、どういうことだろうか。
あの事件の時の歌は全部で3つ。これ以上はないはずだった。
「アオノウタ」「アカノウタ」「ミドリノウタ」・・・この3つだけだったはずだ。

「・・・なんで?」
「KAITO!またアンタ歌ったんじゃないでしょうね!?あれを!」
ものすごい剣幕で、めーちゃんが怒鳴りつける。
「ち、違うよ!!俺はもうあの歌の旋律とか完全に忘れたよ!?」
必死で否定する俺に、ミクが加勢する
「そうだよ!お兄ちゃんが歌った時は、海とかが変になったけど、今度は雷が鳴り止まないんだよ?
雷と、あと・・・竜巻!!」
ミクが言ったのは、確かにあの事件の時にはなかった異常だった
「雷・・・黄色?・・・竜巻は・・・うーん・・・」
あの夢が関係するのであれば、と思ったが、あいにく桃色は当てはまらない。
「ミク!とりあえずニュースを見てみよう!!」
「・・・うん!」

『異常気象です!!雷と竜巻が各地で頻発しています・・・キャァァ!!もう・・・こんなところでリポートなんかしたくないんですけどね!!でも何処へ行ってもこんななんですよ!?』

「・・・リポーターさん、大変そうだなぁ・・・」
「ミク!何呑気なこといってんのよ!」
めーちゃんとミクがなにやらいっているのをよそに、俺はただそのニュースを見ていた。
「あ!!・・・竜巻が・・・」
そのニュース中継の中で写っていた竜巻は・・・

花弁をたくさん巻き上げ、桃色に染まり、不覚にも、少しキレイだと思ってしまった。
もしかして、桃色はこれか・・・?
だとしたら、あの夢は関係あったんだな。
・・・まてよ
「呪いの・・・歌・・・?」
「え?」
「ノロイノウタ!!あの夢は・・・そういうことだったのか!!」
「な、なんなのよKAITO!?」
「ねぇ、めーちゃん、ミク、黄色髪の2人とピンク髪の女の人って、心当たりない?」
名前が思い出せない。聞くしかなかった。
でも、2人はちゃんと憶えていたらしい。
「鏡音リンちゃんとレンくんかな?」
「あとは・・・巡音ルカ・・・かしら?」
「その3人で、近くにいるのは?」
「マスターの・・・ご友人さんのコンピューターの中・・・かな?」
「よし、そこ行こう!!」
「え?ちょっと!KAITO!?ダメよいきなりじゃ失礼だわ!!」
「でも非常事態なんだよ!!もしかしたらその3人が何か歌ったかもしれない!!」
「・・・歌った・・・?」
「そういう夢を見たんだよ!」
「夢、ねぇ・・・」
曖昧すぎる夢のお告げ。
だけど、何度も見たあの夢を、ただの夢だとは思えなかった。


~マスターの友人のパソコン内~

こっそりインターネットを通じて、その友人さんのパソコンに入り込むことが出来た。
「なんか・・・慣れないね・・・やっぱり」
怯えながら、俺のマフラーを掴んでミクが言う。
めーちゃんは、念のため入り口に残った。
とりあえず、名前を呼んでみる。
「えっと・・・巡音ルカさーん!」
続けてミクも呼ぶ。
「鏡音リンちゃーん!レンくーん!!」
・・・
しかし、何も返ってこない。
もしかしたら、俺が「アオノウタ」を唄った時のように、その3人も実体化してしまったのかもしれない。
そう思った矢先、聞こえてきたのは―・・・

「・・・―― ウタヲ ウタヲ ノロイノウタヲ ウタエ ウタエ オワリノウタヲ ――・・・」
「・・・―― サア ウタエ ノロイヲ ウタエ オワリ ツゲル ノロイノウタヲ ――・・・」

・・・!!
これは・・・!!
「夢で・・・聴いた歌・・・」
「え?」
「俺が見た夢で、唄われていた歌・・・!!」

ビンゴ。

とにかく、一旦この歌をやめさせて、詳細を聞かねばなるまい。
しかし・・・居場所は?
その3人はどこで歌っているのだろうか。
歌声は、全体に響いていて、どこから流れているのか特定できなかった。
どうにも出来ず、立ち往生する俺に、ミクが話しかける。
「お兄ちゃん、今、このパソコンは起動されてないんだよね?だったら、プログラムフォルダの中にいるかもしれない!」
・・・プログラムフォルダ・・・
そうだ。知恵や感情を持った俺たちは、いつからか忘れていた。
俺たちは元々、“アプリケーションソフトウェア”であって、“音声合成プログラム”なのだ。
「よし・・・。行こうか。」
「・・・うん!」
そして俺たちは、このパソコンの中の、プログラムフォルダへと向かった。

~友人のパソコン、プログラムフォルダ内~

プログラムフォルダにたどり着いて、例の3人を探す。
すると、割とすぐに見つかった。

「あ・・・あのっ!巡音・・・ルカさんですか?」

・・・

ああそうか、聞こえていないんだ。
唄い続けて、ただ唄い続けて。
この歌は「ノロイノウタ」。呪われた歌。
その呪いにかかってしまえば、周りの音など聞こえないだろう。
「お兄ちゃん・・・どうする?」
「うーん・・・そうだ・・・!」
不思議そうな顔のミクを少し後ろに下がらせて、
俺は一歩前に出、唄う。
そう、

―逆さまの「ノロイノウタ」を―


「・・・―― ヲタウノリワオ エタウ エタウ ヲタウノイロノ ヲタウ ヲタウ ――・・・
・・・―― ヲタウノイロノ ルゲツ リワオ エタウ ヲイロノ エタウ アサ ――・・・」

唄い終えると、さっきまで唄われていた「ノロイノウタ」は止まり、ルカをリン・レンがこっちを向いて言う。

「ナゼ止メタ? ナゼ?ナゼ? ノロイヲ ノロイヲ止メル者 許サヌ」
「・・・え?」
「殺セ 殺セ・・・・? 違ウ 消シテシマエ でーたノ塵ト ナレ!!」
そう言うと、3人は俺に向かってものすごい勢いで走ってくる。
手には真っ黒な塊のようなデータが握られていた。
恐らく、それが呪いの原因。「呪いのデータ」
呪いは解かれていなかったのだ。

「・・・っ!!」
もうだめだ!俺は、このまま消されてしまうんだ・・・!
そう思った時だった。

<ガシャンッ!!>

何かが割れる音。ガラスだろうか?
恐る恐る目を開けてみると、そこには、

大量のガラス片と、ビール瓶を持っためーちゃんがいた。

「め・・・めーちゃっ<ゴッ>痛っ!!」
礼を言おうとしたが、殴られた。
痛がる俺にめーちゃんが言う。
「アンタねぇ・・・とりあえず連絡くらいよこしなさいよ!いつまでたっても連絡来なくて、・・・心配・・・したんだから・・・」
「ご・・・ごめん・・・」
とりあえず謝って、殴られたところをさすりながらめーちゃんの後ろを見る。
すると、殴り倒されていた3人が目を覚まし、めーちゃんのすぐ後ろに来て、例のデータを振りかぶっていた。
「・・・!めーちゃん!危ない!」
俺はとっさにめーちゃんを突き飛ばす。そして、例のデータは、俺の左肩に命中してしまった。
・・・痛い・・・。
いや、違う・・・痛いんじゃなくて・・・変だ。
これは・・・あぁ、そうか。
俺の身体が、消え始めているんだ。

「お兄ちゃん!!」
叫ぶミク。俺がミクの方を向くと、ミクの方にも3人は向かっていた。
「ミク!逃げろ!!」
「・・・でも・・・お兄ちゃんは!?」
「大丈夫だ!だから、お前は逃げろ!!」
それを聞くと、ミクは一目散に走って逃げていった。
ミクは足が速いから、3人は追いつけない様子だった。
悔しそうにした後、あの3人はもう一度こちらを向く。
今度は、さっき攻撃に失敗しためーちゃんを狙うつもりだろう。
その間にも、ゆっくりとだが、消えかけている身体。
このまま消えてしまうなら・・・

「めーちゃん。俺のことはいい。とにかく逃げろ。マスターのパソコンに戻れば、きっともう大丈夫。」
「・・・え?」
めーちゃんは、信じられないといった様子で、俺に問いかける。
「でも、KAITO、アンタどうする気?まさかこのまま・・・」
次に聞かれる言葉はすぐに察することが出来た。
もう、答えは決まっていた。
もう、覚悟は出来ていた。
すべては俺のせい。俺があの歌さえ唄わなければ、
あの歌に興味を持たなければ、
こんなことにはならなかった。
すべての責任を負うのは、俺ひとりで良い。
だから・・・
「めーちゃん。もう、分かってくれるよね?だってめーちゃん、俺より頭良いし。俺、バカだから、何の対処法も浮かばない。こんなことしか出来ないけど。でも、すべてを放置して逃げるよりは、諦めてしまうよりは、ずっとずっと、マシだよね・・・?めーちゃん。さようなら。元気でね。・・・ありがとう。」
俺はそう言って笑い、あの3人に向かって走り出す。
「・・・KAITOっ・・・!!」
めーちゃんの声が、最期に聞こえた。

そう、これが最期なんだ。

俺は、あの3人に向かって行き、そして、例のデータを奪い取り俺の中に組み込んだ。
感覚があった。
崩れていく感覚があった。
中から、外から、勢いを持って崩れていく感覚が。
俺は消える。このまま。
消えたら、どこへ行くのだろう?
あぁ、どこにも行かないか?
所詮俺もただのデータ。消えてしまえば、0と1に還元されて、元からなかったかのようになってしまう。
それでも・・・

俺がいた記憶は、何処かに残るよね・・・?

次第にその崩れる感覚も消えていった。
そして、俺は消えた。


    ―To be continued―

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【小説】呪ノ歌【ボカロ小説三部作後日談】その1

碧ノ歌のメッセに続き希望的なメッセがあったような錯覚がしたのでやらかしました。
ついに鏡音&巡音も加わりましたよ!クリプトン全員出せたー!
最初は鏡音リン・レンのみだったのですが、ここまで出といてルカが出ないのはかわいそうだと思い、こうなりましたw
そうそう、すごい気になる(?)ところで切れてますが。
長すぎたため、文字数制限に引っかかりましてw
そのせいで2つに分ける羽目になりましたw
続けてうpするので大丈夫ですよーw
しかし時間があるときにゆっくりメモ帳に書いてたら長くなるもんですねぇw
今までの~ノ歌シリーズwで最長でしたw
まぁそこは改行も入るのかな?w
とりあえず、続きへどうぞ。

閲覧数:229

投稿日:2011/06/24 18:40:09

文字数:4,331文字

カテゴリ:小説

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