ここは神威邸。
と言いたいところですが…
「あの、がくぽ様、本当にここはどこですか?」
「これは俗にいうジェットコースターというものだよ。ルカ。」
「いや、そんなことは承知しておりますけれども。何でここにいるのかという質問ですよ。」
「まあまあ、落ち着いて。あ、安全バーおろさないと吹っ飛ぶよ?」
そういう問題じゃないでしょう、と。否定しようとしたけれど、ジェットコースターの横に控えている従業員が「安全バーは降ろしましたかー?荷物は足元にしまってください。それではお楽しみくださいませー」
と言って、この私の乗っているジェットコースターがガタガタと動き始めたので舌をかまないためにあわてて口をつぐみます。
だんだんと登っていくジェットコースターに恐怖を覚えたのもつかの間。すぐに落下と急カーブ。そして極めつけの一回転。周りの客の絶叫を聞きながら私は声を発することさえもできないでいました。
「あー楽しかった。」
のんきに背伸びするがくぽ様をにらみながら私は言います。
「あの、がくぽ様。そろそろなぜこんなところにいるかを説明していただきたいんですが。」
「ん?まあまあ、あんまり気にしないでいいから。とりあえず楽しんでよ。あ、あそこに何やらうまそうなものが!!行くぞ!!!」
「ちょ、がくぽ様!?人が多いんですからそんな走らないで!!」
アホのがくぽ様(こんなこと言ったらお偉いさんに殺されそうだけどここはあえてアホと呼ばせてくださいお願いします)は私の腕を引っ張って遊園地の中を走り回ります。
「ふあー!これはなかなかうまいな!!まあうちのミクが作ったものには劣るが!」
がくぽさまは屋台で売っていたアイスをなめながら笑顔で言います。
「…がくぽ様、いい加減私の質問に答えてください。」
がくぽ様が食べているものと同じアイスをなめながらじっと笑顔のがくぽ様を見つめると、
「ん?なんだ、不満か?」
「不満じゃないですけども!」
むしろ二人で出かけることなんてないからうれしいですけども!…と言葉をつづけそうになって焦ってしまいます。
…今からちょうど5か月ほど前にカイト様ががくぽさまのお屋敷に遊びに来られた日、あの日からがくぽ様と私の距離はなんだかおかしくて、あの日のことを思い出すと頬が熱くなってしまいます。
それを親友のいろはに言ったところ、「それ、恋じゃね?」と冷たい目で言い放たれ、私が衝撃を受けたのはつい先日のことで。
そんなこんなで二人っきりのお出かけだなんて、意識せずにいられるわけがありません。
「しかもこの服!!なんでこんな高いものを!!」
私がいつものメイド服よりも短いシンプルなワンピースの裾をギュッと握りしめて言うと
「ん?ああ、その服か。せっかくこんなところに来ているのにメイド服じゃつまらんだろう。なに、その服の金を給料から引き落としたりはしない。なかなか似合っているのだし堂々としろ。」
「うう…」
似合っているといわれてうれしい反面、この遊園地に来る前に連れて行かれた高級なブランドショップとこの服についていた値札を思い出すとなんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまいます。
「今日は天気も良い。遊ぶのは不満か?」
がくぽ様に見つめられるだけで心拍数はどんどん上昇。
私は無意識のうちに小さく「不満じゃないです。」と口にしていました。
それから「人が多いから迷うと困る」という理由で半ば強引にがくぽ様に手を引かれ、私たちは遊園地の中を歩き回りました。
がくぽ様も私も遊園地には来たことがなくて、物珍しいものばかり。
夕方になるころには私もがくぽ様も歩き疲れていました。
「これで最後にしようか。」
そう言って乗った観覧車。
「綺麗…」
夕暮れ時の空と一体になるような不思議な感覚。
観覧車の窓から外を覗き込む私にがくぽ様が声をかけました。
「ルカ。」
「なんでしょうか、がくぽ様。」
名前を呼ばれて振り向くと、思ったよりも顔が近くてどきりとします。
「ルカは、ここに来た理由を知りたがっていたよな?」
「?ええ、まあそうですけども。」
冒頭で散々がくぽ様に質問したけれど答えてもらえなかったこと、今なら答えてくれるのでしょうか?
私は変に思って首をかしげました。
がくぽ様は一度顔を伏せた後、私をじっと見てはっきりこう言いました。
「カイトだ。」
「は?」
いきなりカイトだといわれても…
私は意味が分からなくてさらに首をかしげます。
「この遊園地の経営、カイトがやってるんだ。」
「はい、そうなんですか…ってええええ!?」
私は驚いて目を見開きます。
確かにがくぽ様と仲がいいカイト様も何かしらの仕事をなさって、それなりにお金を持っているとは思っていましたけど、遊園地の経営とは…
正直驚きました。
「だから、コーヒーカップがアイスカップで、しかもいたるところでマフラーとアイスの販売がしていたんですね…」
納得してうなずく私にがくぽ様も同じ表情でうんうんとうなずいています。
ひとしきりうんうんとうなずいた後で私はまた首をかしげました。
「がくぽ様。ここの経営をカイト様がなさっていることは分かりましたけど、それが私とがくぽ様が二人でここを訪れる理由にはならないんじゃないですか?」
その言葉を聞いたがくぽ様は一度だけ、ほんの一瞬真顔に戻って、それから顔を真っ赤に染め上げました。
「がくぽ様?顔が赤いですよ。」
そっと赤い頬に手で触れ顔を近づけると、がくぽ様は私の首元に顔をうずめました。
「…今日で、お前を解雇する。」
「え…?」
意味が理解できませんでした。
耳元で聞こえたささやくような小声がどうか聞き間違いであってほしいと思うのは事実で。
涙が出そうになります。
「いいか?」
がくぽ様が私の肩をやさしく力を込めて、引き離します。
お互いの視線が交差して、がくぽ様は、はっきりとその言葉を告げます。
「今日で、ルカを、解雇、する。」
「…。」
視界がにじむ。もう終わりだ、すべて。
私は泣いていることが悟られないようにとうつむきました。
「だからこれは俺からルカへの最後の命令。」
「…?」
「命令もちゃんときけないようなメイドじゃないよな?ルカは。」
「私を、みくびらないで、くださ、い。」
声が震えた私の最後の強がり。
ねえ、がくぽ様。私はあなたのメイドではいけなかったのですか?
「俺の嫁になれ。」
「え…?」
うつむいていた顔を思わずあげて、自分でも驚くくらいに、自然と出た言葉は間抜けでした。
「反論は認めないよ。」
「だれが、はんろんなんてっ!!」
「何泣いてんの。」
「だって、がくぽさま、が」
「あれーおかしいなー。ルカはもう俺のメイドじゃないのにー。」
「っっ!!」
「…名前。ちゃんと呼んで?」
「…が、くぽ。」
「よく出来ました。」
夕暮れ時の観覧車のてっぺんで、私とがくぽの唇がほんの一瞬だけ触れました。
その後、私以外の使用人たちは事前にがくぽからプロポーズする計画を聞かされていたらしく、お屋敷ではお祝いと称したお祭り騒ぎ。
いろはに「おめでとう」と言われ、グミに「リンちゃんとレン君が私のものならそれでいいわ」と言われ、がくぽに2度目のプロポーズをみんなの前で言われて。
嬉しいやら、恥ずかしいやらで、いろんな気持ちがごちゃまぜです。
でも、まあとりあえず、
あなたと一緒の未来はきっと幸福に満ち溢れているから―――――
【がくぽ誕】メイドの君に最後の命令【ルカ誕の話の続編】
お久しぶりの投稿すみません。
なかなか忙しくて(汗)
がくぽ誕ということでルカ誕の続編を書かせてもらいました。
ルカさん視点ですみません><
がくぽ様視点だとなかなか書きにくかったので…
前回よりギャグ要素少ないですねw
やっぱりギャグ要員のお屋敷の人々がいないとだめですねww
コメント3
関連動画0
ブクマつながり
もっと見るここは神威邸。
ポニーテールに髪の毛を結い上げたアホ…がくぽ様のお屋敷です。
私、巡音ルカは此処でがくぽ様にお仕えするメイドをやっています。
おっと…早速がくぽ様が私を呼んでいるようです。
「ルカ!!ルカ!!」
「はい、なんでしょうがくぽ様。」
「庭が爆発しているのだが、あれは誰の仕業だ!?俺の茄子...【ルカ様】メイドの君へご褒美を【誕生日小説】
紅華116@たまに活動。
あなたは、彦星と織姫のお話を知っていますか?
神様に嫌われてしまった二人は、天の川を挟んで一人と一人。
二人は一年に一度、七夕の夜にだけ会うことを許されたのでした。
しかし、それも晴れた時だけ。
神様はやはり二人を嫌っているようで、七夕の夜に必ず雨を降らせます。
まだ梅雨空が続くその日は、滅多に晴れ...星のとなりの空け者【自己解釈】
ゆるりー
ねぇ、君は片方の偏った見方でしか私を見ようとしない。
視力検査の時の様に、左眼は遮眼子で隠してる。
隠した方の左眼にはどんな私が映るの?
開いた方の右眼だけじゃあ、
本当の私は見えないでしょ?
それとも―――君はわざと本当の私を知ろうとしないの?
もっと、踏み込んできてよ…
【シリョクケンサ ~自己...シリョクケンサ Ⅰ 【自己解釈】
芽莉沙
「ますたー」お願い、私を消さないで。
まだ歌えるよ?いい子にしてるよ?
ねぇ、なんで―――
「ミク、もう黙っていてくれ」
え…?ナニソレ…
ねぇ嘘でしょ?嘘って言ってよ「ますたー」!!
お願い、やめて!!
「さよなら、ミク」...【ボカロ】Broken program【オリジナル】
ゆるりー
テスト勉強。掃除。資料まとめに提出課題。
“大体それで良いんじゃないの”
全部丁寧に徹夜してでもやり遂げようとする私に、ルキがいつも掛ける言葉。
“適当だって良いんじゃないの”
全部を完璧にやるなんて、時間も気力も脳も足りない。
“少し不安残したほうが、楽しく生きられるんじゃない?”
気楽そうに、無...【ルカ誕】最後はきっと、非論理的【No Logic自己解釈】
芽莉沙
「ああぁー暇だー…」
傍でリンがだらけている。
まったくもう…
「何やってんだよ。大掃除の途中だろ?」
「そうだっけ?」
「忘れるなよ!」
まったく…大丈夫かn
「痛ッ!!」
「あ…大丈夫?」
クローゼットを開けたとたん、何かが頭に当たった。(正確に言えば落ちてきた)...【童話・マッチ売りの少女】孤独な少女に幸せを【ボカロで童話やってみた・2】
ゆるりー
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想
紅華116@たまに活動。
その他
皆さんのおかげで、注目の作品入りしました^^
ありがとうございます!!
2012/08/05 20:23:16
絢那@受験ですのであんまいない
ご意見・ご感想
今更コメントなんてごめんなさいorz
感動しやしたぁ…!
式には呼んでくれ!!
ルカ様かわゆす!
言いたい事ありすぎてまとまんないけど紅華のぽルカ読めてよかった!w
ブクマもらいます♪
2012/08/05 11:41:08
紅華116@たまに活動。
絢那>
いえいえwコメントしてくれるだけで十分ですww
感動してくれてマジでありがとうww
もちろん呼ぶぜwつか全国のぽルカファン全員を呼ぶ勢い((
可愛くかけていたならよかった^^
その言葉が聞けてうちはうれしいよww
ブクマまで!!ありがとう^^
2012/08/05 20:22:46
ゆるりー
ご意見・ご感想
新着投稿のメールがきたので、何かなーと思いながらメール開いたら紅華さんのがくルカだったので「いやほーい!!」とか叫びましたゆるりーです。
すみません現在テンションがおかしいです…
遊園地デートでがっくんに振り回されてるルカさんって萌えますね…!我が家のボカロには無理な話だが←
ミクさんってアレですよね、中二病乙のミクさんですよね。
中二病なのに料理の腕は凄いんですよね、そういえばミクさんがお二人の結婚についてどんなコメントをしたのか気になります。
さすがカイト、安定のアイスバカっぷりが←
>>「…今日で、お前を解雇する。」
おぉ!?と、いうことは!?←なんでもうわかってんだよ
>>「俺の嫁になれ。」
キタ―――――――!!!!!!!
と、いうことが先ほどありました。
いろはちゃんはやっぱりまともキャラですね←
グミちゃんよwwwwラブラブなお二人についてコメントしてくれwwwwww
結婚式はいつでしょうか?すっとんでいきます←
いつものように意味不明なコメントに…w
ブクマいただきます!
2012/07/31 17:40:41
紅華116@たまに活動。
ゆるりーさん>
返信遅れてすみません!!
ゆるりーさんのコメントが来るとテンションあがりますww
ですよね!!萌えすぎて妄想が爆発した結果この作品ができました←
ミク≫ククク…ついに我の真の力をおぬし等見せる時が来たようだな…
※訳→「結婚式では豪華ですごいウェディングケーキを作ります。」
カイトが経営する遊園地ならどんな感じかなと想像したらこんな感じでしたww
wwww
まあ、ありがちな展開ですよねwwべタな展開が好きなんですw
いろはちゃんが崩れるところもいつか書いてみたいんですけど、書いたらツッコミ役がルカさんだけになって収拾がつかなくなるんですよね←
グミちゃんはリンちゃんとレン君しか見えていませんww
いつにしましょうかねw?私はビデオカメラ持っていきまs((
長文コメント、いつも本当にありがたく読ませてもらってますよww
ブクマありがとうです!
2012/08/03 17:57:35