ねぇ、君は片方の偏った見方でしか私を見ようとしない。

視力検査の時の様に、左眼は遮眼子で隠してる。


隠した方の左眼にはどんな私が映るの?

開いた方の右眼だけじゃあ、


本当の私は見えないでしょ?



それとも―――君はわざと本当の私を知ろうとしないの?



もっと、踏み込んできてよ…





【シリョクケンサ ~自己解釈~】




夕日が射して赤く染まった高校の保健室。

私――グミは、小さな掛け声と共に大きさの割に軽いトイレットペーパーのパックを3パック位積み上げて持ち上げた。

―――う。前が見えない。

ちょっと積み上げ過ぎたらしい。まぁ、私の身長だと2パックでも前は見えなそうだけど。
でも取り合えずは、左右の壁が見えるからなんとか前に進めるだろう。こんな放課後に人はそんなに居なさそうだし。私はそう思って、トイレットペーパーのバランスを整え直して保健室を後にし、各階のトイレットペーパーの補充に行く。



―――はずだった、んだけど…。



「きゃぁっ!」
「う、わっ!」



何かにぶつかった。
私は、どてんっと綺麗に尻もちをつく。保健室中に散乱するトイレットペーパー達。

ぶつかった相手は声からして―――



「……グミヤ。」


私の声は自分でも分かるくらいにうんざりしていた。


「っ何だよ…」

返ってきた声は同じようにうんざりしていて、視線を上げるとぼやけた輪郭のグミヤがうんざりした顔をしていた。


「な、なんだよじゃなくて!ちゃんと前向いて歩いてよ!」

「グミこそ前見て歩けよ!」

「と、トイレットペーパー抱えてて見えなかったんですー!」


「それ抱え過ぎたグミが悪いだろ!俺はホラ!」


言い合いを中断してグミヤががたん、と音を立てて私に見せたのは、視力表。最新の電光投影式のやつだ。


「これがドアの段差に引っかかって動かなかったんだよ。ったく…」


ため息を付くグミヤ。…うん。てことは、


「……なるほど。つまりそこに突進してきた私が悪いと。」

「あったりまえだ。バカ」

「…だ、だよねー」

えへへ、と笑って誤魔化そうとしたけどグミヤのむすっとした表情は変わらない。うう…誤魔化せてない…。



―――二人の関係は難しい。

友達…よりは上な気がする。かと言ってどちらかが告白した訳でも無いので恋人でもない。格好良く言うと「友達以上、恋人未満」ってやつ?…てゆうか、私は生徒でグミヤは教師(と言うより保険医)だからなんとも言えないと言うか…。
はぁ…いつからこんな関係になっちゃったんだろ。昔は少し歳の離れた幼馴染、ただそれだけだったのに…。

今は、君が遠い。





「ほら、」

立ち上がったグミヤが私に眼鏡を渡してくれる。そんな言葉と裏腹の優しさにちょっとキュンとなったりならなかったり。

―――あぁ、さっきグミヤがぼやけて見えたのはぶつかった時に眼鏡が外れたからか。

そんな事を思いつつ眼鏡を受け取る。と、グミヤがこう言い出した。


「ついでだから、裸眼で視力検査してみる?」

「え、何のついでよ」

裸眼の視力には本気で自信の無い私は内心ちょっと焦りつつ言った。


「まぁまぁ、いいじゃん」

そう言ったグミヤに流されてなんとなく眼鏡をセーターのポケットに仕舞って遮眼子を受け取る。


片目を隠したらグミヤが更にぼやけて見えた。

くっきりと見えないグミヤは、いつもより更に遠い所にいる気がして。


それが、何故かとても嫌で。

―――そんな私がグミヤの目の奥で悪戯げに微笑んだ気がした。



「見え、ないよ…」

自然と私の口から出た言葉は、自分でも何を指しているのか分からない。


ランドルト環が?

グミヤが?

それとも、………自分の心?

それとも、君の………―――



全てが、ぼやけて見える。



なら、グミヤが、


「指さしで教えてよ…」


自分でも驚愕する程か弱く出た私の声。




と、

背中に安堵感のある温かい感触。

耳元で聞こえる低くて心地よいテノールの音。


「……何泣きそうな顔してんだよ」

グミヤが私の肩に腕を乗せて。


―――あぁ…安心、する。

「そんなに、見えないの怖いか?」

ぎゅっと私の肩を抱いてグミヤが問う。

―――私が怖いのは…離れていくグミヤ、だよ…?

だから、もっと近づかないと…

「……うん。グミヤの心も私の心も見えない。だからね、グミヤ。私をグミヤの思うままにしていっ――ふむぅ?!」

勢いで続けようとしたセリフが強制的に意味の無い呻き声に変わる。
グミヤが、私の口を手で塞いだんだ。

…いや、確かに人の背後って口を塞ぐのに調度良い位置だけど!
だ、だからって、

「なっ、なひふるのよぅ!」

……我ながら間抜けな声…。
でもグミヤは理解したらしく、たしなめる様な声で答える。


「ぐーみ。だめだぞ、そんな言葉ほいほい言ってちゃ。俺だったから良かったけど、他の男子の前とかだと襲われてたからな?」


「…へ?」


混乱した頭で上を見上げると、同じく下を見ているグミヤと目が合う。


グミヤが、私の口から手を離したので、何か言おうと口を開いたらすかさず拒まれる。


「じゃーな、ぐみ“さん”」

「っ!!」


そう言い捨てて右手を適当に振って、せかせかと保健室を去って行ったグミヤ。


―――さん付け…。他の生徒が居る時の呼び方だ…。

それはつまり、


“拒絶”



「私は、君の目に映ってないのかな…」


私は一人、夕暮れの無駄にだだっ広い保健室で、散乱したトイレットペーパーと無造作に置かれたまんまの視力表を片づけ始めた。






******


「……危な、かった…。なんで生徒に手ェ出しそうになってんだよ、俺……」



―――二人の関係は、すれ違いながらも確実に、近づいていっていた。




ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

シリョクケンサ Ⅰ 【自己解釈】

40mPさんの「シリョクケンサ」です。

なんか、脳内で温め過ぎて予定よりだいぶ遅れて投稿となってしまいました…;;しかも意味不…←

つ、続きます!多分…((ぇ;

グミヤさんただのヘタレじゃね?もうグミ押し倒しちゃってあっまあまの展開に持ってっちゃっていいと思うよ?
…って思うのは私だけでしょうk(((黙れ

カラオケで歌ってきたいです…><

素晴らしき本家様↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15230821

閲覧数:4,449

投稿日:2011/11/24 00:03:33

文字数:2,473文字

カテゴリ:小説

  • コメント3

  • 関連動画0

  • 鏡世

    鏡世

    ご意見・ご感想

    シリョクケンサやんかっ←

    ミヤグミいいですよねーww
    こんな綺麗な文、鏡世には書けませぬ、、
    文才を下s((

    続き待ってます!

    2011/12/01 17:56:06

    • 芽莉沙

      芽莉沙

      シリョクケンサですよっ←

      ですよね!!ミヤグミ最高っ!!w
      き、綺麗?!にゃあああありがとうございます///((どうしたw

      どうもです><頑張ります(`・ω・)b

      2011/12/03 10:24:47

  • 紅華116@たまに活動。

    ブクマいただきましたー><

    あああああああああああああ!!!!!
    グミヤかっけー!!
    嫁に来い←もちろんグミとセットで!!あ、あと芽梨沙もセットで←
    続きが気になる!!頑張ってねノシ

    2011/11/24 21:19:36

    • 芽莉沙

      芽莉沙

      きゃあああっ///
      あ、ありがとうございますっ…!

      そ、そう…?!でも、保険医グミヤとか想像したらそれだけで鼻血もんだよね!!(((ちょ、
      だめだよ!こいつらは私の家でいちゃいちゃするのd……え、私もセット?ならしょうがないな…←
      はいっ!頑張りまっす!(*・ω・)

      2011/11/25 20:10:23

  • 姉音香凛

    姉音香凛

    ご意見・ご感想

    わあああああああ←

    まさかのしりょくけんさっ!
    そしてあたしが挫折したやつっ!((関係ない←

    やっぱりミヤグミだなっ!なんちゅう素晴らしい解釈!!
    さすがめーさだっ!!((尊敬の眼差s(ぇ

    続き、続き!!((黙ろうか←

    2011/11/24 13:32:25

    • 芽莉沙

      芽莉沙

      おお!メッセ&ブクマありがと><

      挫折したんかいっ!w私もただいま挫折しかけ☆((ダメじゃん

      だよねーw最近ミヤグミが脳内でフィーバーだよ///←
      す、素晴らしい…?!いやいや、そんな事無いよ!こんなの読んでくれたかおりんの方が素晴らしいよ!((

      う…。が、頑張ります…((どうしたw

      2011/11/24 17:14:00

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