「ミク、ちょっと良いかな?」
ミクの部屋をノックする雅彦、中からミクが出てくる。
「はい、構いません」
そういって、雅彦を部屋の中に通すミク。
「雅彦さん、どうしたんですか?」
「いや、ちょっとね、沢口さんと話をすることになったけど、まだちょっと色々とあってね」
「何ですか?」
「まあ、期待半分不安半分といった所かな。沢口さんが面白いことを話していただける期待はある。でも、それと同じ位に罵声を浴びせられるかもしれないという不安も残っているんだ」
「そうですか…」
ミクには雅彦が抱えている不安が分からない。アンドロイドの一種別であるボーカロイドとして生まれて来たミクと、始めは生身の体を持つ人間として生まれて、そのあとで体をアンドロイドに置き換えた雅彦では、根本的に立場が異なるからだ。雅彦の不安をミクが理解すること自体が難しいのだ。
「幸田さんにはその不安をぶつけてみましたか?」
「ああ、ぶつけてみたよ。幸田さんによると、沢口さんはアンドロイドに対して否定的な見解はいっていないらしい」
「なら、大丈夫ではないでしょうか」
「うん、僕も頭の中では大丈夫だろうと思っているんだけど、それでもまだ不安がぬぐえなくてね」
ミクは悩んだ。ミクには雅彦の不安が分からない。そんな中でも雅彦の不安を和らげるようなことをいわなければならない。雅彦はその不安を何とかして欲しいと思って、ここに来ているのだろうから。
「すいません、私、雅彦さんとは立場が違うから、ちゃんとしたアドバイスはできません。ですけど、もっと沢口さんを信じてください。そうすれば、きっと良い結果になると思います」
実の所、ミクはこれが上手いアドバイスだとは思わなかった。アドバイスのように見えて、実際は雅彦の不安を何も解決していないように思われるからだ。そのアドバイスを受けて、しばらく考える雅彦。
「うん、やっぱり、それしかないかな。分かったよ、僕は沢口さんを信じることにするよ」
笑顔でこたえる雅彦。その様子にほっとした様子を見せるミク。
「…でも、やっぱり、不安はぬぐえないかな。ねえ、ミク」
「何ですか?」
「ミクを抱きしめて良い?」
「え?抱きしめるんですか?」
雅彦の提案に、少し困惑した様子のミク。
(雅彦さんて、甘えたがる所はKAITO兄さんに似ているわ)
そんなことを思うミク。実際、KAITOとMEIKOは、家族の前でも大っぴらにスキンシップをする機会が多いが、家族の目に触れない所ではもっとスキンシップをしているらしいということは、時折MEIKOが苦笑交じりに話を聞いており、スキンシップはKAITOの方からいっていることも聞いていた。雅彦は確かにKAITOよりもずっとスキンシップをしようといってくる頻度は少ないが、雅彦とミクの間では、スキンシップしようというのはほぼ雅彦の方からである。MEIKOは長年KAITOから積極的にスキンシップを受けた影響で、KAITOからのスキンシップ無しではいられないようになったらしいが、最近はミクも似たような感じになってきたことをミクも自覚していた。雅彦に毒されているといるだろう。逆にミクから話をする時は音楽に関する相談が多い。発声等、音楽のテクニック的な相談については、最近雅彦も色々とミクの相談に乗るために、勉強はしているようだが、それでもミクの目からすると、知識はつけ焼刃レベルである。KAITOやMEIKOに相談した方が実のあるアドバイスが返って来るが、雅彦は二人や他のボーカロイドとは違う視点からアドバイスをくれることが多く、ミクもそれを期待してアドバイスを受けている。しかし、ボーカロイドのハードウェアが絡んでくる話だと長年研究をしている雅彦は他の追随を許さない。そのため、複合的な要因が絡んでくる話の場合は、KAITO、MEIKO、雅彦の三人に相談に乗ってもらうことが多かった。
そんなことを考えるミク。ふと見ると、雅彦が少し不安そうな表情を見せていた。その表情に、ミクの母性がくすぐられる。
「…ミク、駄目かな?」
「良いですよ」
そうミクがいうと、雅彦の顔が明るくなった。そして、次の瞬間にはミクの体を抱きしめていた。そうやってミクを抱きしめている雅彦は、まるで幼い子供である。普段はミクより雅彦の方がかなり大人びているのに、時折こんな一面を見せることに内心苦笑しながらも、ミクも雅彦に抱きしめられる感覚は好きでなので、思う存分堪能していた。
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