「・・・おや」
午前1時35分。眠れなくてなんとなくリビングへ足を向けるとカイトがいた。
(何か、落ち込んでるみたいだけど・・・?)
一体どうしたのかと少し気になった私はカイトの隣に座る。
「どーしたのー?何か嫌なことでもあった?」
「・・・あ、マスター・・・」
明るさを装った私の言葉にカイトは力なく声を出す。
・・・ありゃりゃ、こりゃ重症じゃな。
私はそう判断した後、
「落ち込んでるなんて、カイトにしては珍しいにゃ」
さり気ない猫語を使ってみる。ほんとは犬とかの方がいいんだろうけど、あいにく犬語は、うー、わんわん!・・・しか知らないので却下。
「・・・そんなことないですよ。ちゃんと元気ですにゃん」
「・・・!」
まさかの反撃と来ましたか、お前さんや!
しかも、典型的ながらもかなり可愛いという強力さ!
・・・やば、こっちが萌えてどうすんだ。こっちも反撃反撃!
「で、何の用ですにゃ?落ち込んでた僕を励ますために、ここへ来た訳じゃにゃいんでしょう?」
「そうにゃのにゃ。カイトが落ち込んでたから、にゃにかあったのかと思って、こうして猫語を使ってにゃってるという訳にゃ」
「・・・やっぱり猫語においてはマスターに叶いませんね」
ここで、ようやくカイトの笑顔を見た。ような気がする。
「・・・でさ」
私は元の口調に戻すことにした。
「何か、あった?」
「・・・いえ」
カイトは目を伏せ、それから、
「別に、いつものやるせなさが心の中に溜まっているだけですよ」
と、何でもない風を装う。
「・・・うん」
私は何も言えず、ただ頷くことしか出来なかった。
「・・・僕、夜が好きなんです」
不意に放たれた言葉。私は一瞬きょとんとした。
「暗闇が全てを無かったことにしてくれるようで・・・素のままでいられるんです。心の中の暗闇と同じ色ですからね」
お兄さんらしく口元を緩めるカイト。
「マスターは、夜は好きですか?」
「私、夜は嫌い。だけど少しは嫌いじゃなくなったよ。でも、やっぱり昼が好き」
「・・・正反対、ですね」
「・・・・・・・・あ」
その時、君のあの言葉の意味がちゃんと分かったような気がした。地面に、水が染み込むように。
「・・・どうかしましたか?」
「えっ、・・・ううん、なんでもない」
「・・・そうですか」
「・・・」
私はカイトの横顔を見ながら、なんでこんなことになっちゃたのかなって思った。最初は、良かったのに。あの楽しかった、少し幼いカイトとの想い出。今となっては、カイトはすっかり大人びたお兄さんになってしまい、もうあの頃へは手が届かなくなってしまった。
「なんでだろ」
「・・・え?」
思わず呟いた私にカイトが私を見る。
「なんで・・・なんだろ」
こんなに近くにいるのに。今だって、こんなに・・・
「なのに、なんでなんだろ。わかんないよ。どれだけ考えても・・・わかんないよ」
「えっ、マスター・・・?」
「あれ・・・私・・・?」
気づけば泣いていたのだった。泣くのなんて今となってはもう過ぎたことなのに。私はごしごしと目元を拭う。
「・・・」
カイトはそんな私に黙って見つめた。言葉も無しに。
月夜の零れる月の下。カイトと見つめあっているこの瞬間は何よりも代えがたいものなのだろう。でも、この瞬間はずっと続きそうで、いつかは終わりが来る。そのことを、私もカイトも知ってたから、だからこそ代えがたいのだと実感する。
いずれは、カイトじゃなくて別の人になるのだけれど、今だけはこうしていたい。
今だけは・・・。
拝啓 切なさとやるせなさと猫語と想い出とあの頃と月夜が零れる君と
こんばんは、悲恋ものが大好物なもごもご犬です!そういう話読むのはいいのですが、3次元ではお断りです←←
悲恋と同じぐらい好きなのは、やっぱり面白い話ですね!やっぱり。
さて、今回は悲恋路線まっしぐらです。
ついでに趣味路線もまっしぐらです。
・・・しょうがないじゃん、そういうのもついつい書いちゃうんだし。←
次回はまた何かの路線を突っ走りたいと思いますw
それでは失礼したような気がしますが全く反省はしてないで失礼します。←
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