あなたは言った。
いずれ、居なくなるのか、消えていくのか、どちらにしろ人類はこの星からいなくなるだろうと。
ほんの少し苦笑して、悲しそうに目を細め。
そっと僕に触れながら。

「…あなたも、いなくなるのですか」
「そうだね。俺はそんなに沢山お金などないから…」
消えていくの、だろうね?
そう囁いて笑う顔は、酷く穏やかで。




***




人類全員がこの星から逃げることなど、不可能であることは誰しもが予想しえたことであった。
そしてそれは現実となる。
大まかに言えば、技術と予算と人の数が全く合わなかったからである。
逃げることが可能な人間など、全体から見ればあまりに少なく、ほんの一握りに過ぎない。年齢でより分けられ、年老いた者は真っ先に除外された。健康診断の結果。色々な線引きが行われた。
しかし、究極のところ、その線引きで該当したとしても、よほどの強運か、お金が有り余ってでもいない限り、逃げることは叶わなかった。
つまりその線引きの意味は大抵の者にとって些末な話題に過ぎず、関係のない話であったのである。

KAITOのマスターも、例に漏れなかった。
お金もない。知り合いに大層な人がいるわけでもない。
彼は、随分前から諦めていた。


「なぁカイト、おまえに頼みがある」
ずるいと、KAITOはマスターたる青年を睨んだ。
主である人物の命令には、逆らえない。逆らうことはできない。
逆らいたくもない。
ついぞ、この男に逆らおうと思ったことはなかった。それは主人を持つロボットとしては当然の思考であり、さらに言えば己にとって、不良品とさえ言われた自分を買った奇特な唯一の主であったことも起因する。
しかし、きっとこれから彼が紡ぐのは、KAITOにとって嬉しくない言葉だ。
予想がついても、KAITOは抗う術を持たない。

「見届けて欲しい。この地球がまた、美しいと呼べる星になるところを」
いつもの声音で、柔らかく青年は言った。共に過ごして来た存在に、強制とも言える願いを。


途方もない、話しに思えた。





      to be continued...

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

願いと成就 1話

気づいたらピアプロ小説おkになっていまして。(遅いとか言わないの!)
驚きのままに眠っていた子を叩き起こしてちょっと筆入れなおして一話だけあっぷ。
続きはまだお待ちくだされ。(待つ人いるのだろうかw)

素晴らしい曲、「Waiting in Earth」から世界観を勝手に想像いたしました。
私的解釈盛りだくさんなのでご注意くださいませ。

イメージさせて頂いた曲はこちら→http://piapro.jp/content/7iwvudwvp7fsvvek

閲覧数:267

投稿日:2008/12/06 15:33:25

文字数:892文字

カテゴリ:小説

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