●ライバル店に潜入だ!

じっさい、どこから見ても、女の人に見える。

駅前のショッピングビルの「らら」で、女性たちが行列して買っているのは、
リラックス枕の「アマガエルのフォギー」。

カイくんは、このライバル店に女装して潜入?して、
列にまぎれこんでいた。

自分でも結構可愛いと思った色合いの、アマガエルのグッズを、
カイくんは、レジで買うことができた。
「ミクのやつめ。女装までさせなくていいのに...」
彼はつぶやいた。
「でもまぁ、このお店には、男性は入りづらいな」

「色がカワイイねー」「手作りっぽいの、いいね」
てんでに話しているお客さんたち。
耳をそば立てながら、カイくんは思った。
「ふぅん。コレは手作りじゃないけど。手作りっぽい感じがいいらしい」
ひそかに、情報収集だ。


●こんな格好で失礼します

「...やっぱり、カイさんでしょ」
「あ!ソニカさん」
目を丸くするカイくん。
彼の肩をたたいたのは、彼の仕事の知り合いの、ゼロジー文具のソニカさんだった。

「よくお似合いね」
彼女は、女装した彼の姿を見て、ニヤニヤした。
「いや、あの、これは...」
どぎまぎするカイくん。
「いいのよ。ライバル店の、敵情視察でしょう? 大丈夫、バラさないわよ」
彼女は、声を低くした。

すると、ソニカさんの横にいる女性が、目を丸くして彼を見ている。

「あ、ご紹介しましょう。こちら、ニワ・ブックスの天野冬子(あまのとうこ)さん。
雑誌の『すてきにラマーズ・ライフ』の編集者の方です」
「ああ!あの“手作りマガジン”ですね」
カイくんは言った。

「はじめまして」
しとやかそうな天野さんが挨拶する。
「こんな姿でお恥かしいですが。キディディ・ランドの店長の甲斐カイトです」
赤くなって、頭を下げるカイくん。


●新しいキモカワ・グッズ

「きょうは、取材ですか」
「はい」
白い服を着た彼女は笑って答える。
「いつも、雑誌は拝見してます。この前は、ニコビレの雑貨アートや、サンセットギャラリーの新しい“ゆうひ”の店の記事を、特集されてましたね」
カイくんは言った。
「まぁ、どうもありがとう」
クールな表情の天野さんだが、笑顔が優しかった。

「冬子さん、カイさんの妹さんは、ミクさんなんですよ」
2人の会話に、ソニカさんが入ってきた。
「今度、ミクさんの作る“はっちゅーね”も、記事で取り上げてみては?」

「そうですね。でも」
天野さんは、クールに言った。
「“はっちゅーね”は男子のファンが多くて、はっきり言うと“萌え系”ね」
「そ、そうですね」
カイくんは、頭を掻いた。
「萌え系の玩具とかは、うちの本では、取り上げたことがないな」
「そうですか。やっぱり、ものづくりとか、暮らしの工夫とかがテーマですかね...」

カイくんがしゃべる姿を見て、ソニカさんは吹き出しそうになった。
それまで、女性のように、しとやかに振る舞っていたカイくん。
話に夢中になると、どうしても仕草が男に戻る。

腕を組んで話す彼を見て、ソニカさんは思った。

「このジャンル、いいわ。新しいキモカワ・グッズになるかな」v( ̄ー ̄)v

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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玩具屋カイくんの販売日誌 (104) カイくんの女装作戦 (「らら」のヒット商品 Part2)

筆者は男ですが、仕事以外では、雑貨店は店によっては、男ひとりだと入りにくいときもありますね(笑)

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投稿日:2011/05/15 20:50:40

文字数:1,322文字

カテゴリ:小説

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