病院の廊下を早足で歩く、本当は走りたい思いだけどそこは流石に我慢して。
「あれ?啓輔、もう着いたのか?昼過ぎになると思ってたんだけど。」
「朝一で飛ばして貰った…憐梨は?倒れたって大丈夫なのか?ほら、あいつ体力
そんな無いからさ…。」
「大丈夫だって。まぁ、入って入って、話は中でするからさ。」
含み笑いの騎士に促されて病室へ入った。
「啓輔。」
「憐梨…大丈夫か?倒れたって…。」
「大丈夫、もう、心配し過ぎよ、仕事急に休んで皆困ってるんじゃないの?」
ベッドに座ってる憐梨がクスクス笑ってるのを見て心底ホッとする。病院自体に良い思い出が無いもんだから入院と聞いただけで嫌な予感しかしなかった。余程心配そうな顔をしてたのか、憐梨は眉間を指で押しながら言った。
「そんな顔しないの、パパ。」
「いや、だって心配で…え…?」
「パパ。」
「………………………………。」
「おーい?」
軽く動作と思考がフリーズしてしまった。パパ?イコール父親、おとーさん、ダディ…。
「…パパ?え…と…憐梨…本当に?」
「うん。んっとね、今3ヵ月に入った所、倒れたのもそのせいだって。」
「おめでとう、啓輔、憐梨も。」
「…俺の…子供…?本当に…。」
「えっ?!ちょ…啓輔泣かないでよ?!び、びっくりさせちゃった?!ねぇ?!」
言われて初めて涙に気付いた。びっくりしたのと嬉しかったのと両方良い勝負だったかも知れない。俺自身『両親』と呼べる人はもう居ない。母親は小さい頃に離婚して居なくなった。父親と再婚相手は5年前に事故で死んだ。だから自分の肉親が生まれるのが自分でも気付かない位嬉しくてたまらなかった。
「相変わらずラブラブだねぇ、姉さん達は。」
「砂音…居たのか…。」
「最初っから居たよ!…で、義兄さん、喜んでる所悪いけど菖蒲さん来てるよ。
応接室で待って貰ってるから。」
暫く涙が止まらなくて、皆に宥められた。目が赤くなってしまったのを目薬で誤魔化して応接室へと向かった。ドアを開けると窓際に居た翡翠が軽く会釈をしつつ言った。
「…お久し振りです。ああ、それからおめでとうございます、啓輔さん。」
「あー、やべ、また泣きそう…。」
「覚えがあります。」
「月ちゃん元気か?」
「ええ、もう最近掴まり立ちを覚えて、私の服の裾を引っ張っては『おとーしゃん』
と呼んだりして、おまけにリヌにそっくりの上目遣いまで益々磨きがかかって、
愛くるしい事この上なく…。」
「戻って来ーい。」
「…失礼。それで、前々から依頼のあった調査報告ですが…どうぞ。」
翡翠は少し厚めの茶封筒を手渡して来た。中には結構な量の調査報告があり、一枚ずつ目を通した。
「…確かなのか?この情報は。」
「年齢から見ても妥当です、それから騎士さんの検査結果とも一致します。おそらく
間違いないでしょう。」
「そうか…。」
「どうしますか?」
「…少し、考えたい。いきなり何もかも話せば混乱するだろうから。」
「私に出来るのは此処までです、どうするかは啓輔さんに任せますよ。」
複雑な感情がぐるぐると回る中、一枚の写真を見た。
「父さん…。」
DollsGame-76.花菖蒲-
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