それからずんねえさまの料理に舌鼓を打ったあと、私とウナちゃんはぱじゃまになった。
 いつもならこの時間は、携帯ゲーム機の時間にしていたが、不思議とやる気にならない。
 心地よい疲れが私の体にまわっていた。
 そんな折、瞼が閉じかけているところで、カリカリと奇妙な音が聞こえてきた。
 ウナちゃんのところからだ。
 私は起きてウナちゃんのほうへ覗いて見た。
「ウナ、宿題か」
「うん、これが終われば終りだから」
 私は宿題半分しかやってないことを思い出して、少し不機嫌になった。
 しばらくしてシャーペンの走る音が終わると、ウナちゃんがこちらに向いてきた。
「なあきり。きりにはなにか夢があるか」
 ウナちゃんは右手で頬をポリポリと書きながら訊ねてきた。
 夢?! 瞼をつぶれば、それがいつでも見れる。
 でもウナちゃんが言っているのはそんなことではないよな。
 私は首を横に振った。
「歌手になりたいんだ。みんなに歌を届けたいんだ」
 ウナちゃんが真剣に言った。
「ウナの声、良いと思う」
 私はかろうじてそう言えた。
「そっか。よかった。きりなら厳しいことを言うかと思ってた」
「でも」
「言われても気持ちは変えなかった」
「きりと友達になれてよかった。きりじゃなかったらいえなかったよ」
 夢か。そんなもの持ってない。
 楽しく過ごせれば良いやと考えていた。
 ウナちゃんがトイレから戻ると、電気を消した。
 私はさっきまでの心地良い眠気が消えて、上の空になっていく。
 ずんねえさまの夢はずんだもちの美味しさをみんなに知ってもらうこと。
 イタコおねえさまは、イタコでいろんな人を助けたい。
 私は……。
 そのまま答えは出ずにいつのまにか意識がなくなって眠っていた。

 残りの二日間は大変だった。
 ウナちゃんのきりんたんぽ焼きがなかなか上手くいかないのだ。
 仕舞いには泣いてしまった。かなり悔しいのだ。
 ウナちゃんは負けず嫌いで、きりたんぽに負けていることが悔しいらしい。
 私とずんねえさまの必死のフォローでお祭り前日の最終日には、ようやくお店で出せる焼き加減になっていた。
 ちなみにずんねえさまの要望でずんだ味も出すことになった。
 味は美味しいと思うが、きりたんぽといったら味噌だと思う。
 そして当日。
 私たち三人は、参道近くに店を構えていると匂いに誘われたのかたくさんのお客さんがやってきた。
「味噌味が負けるわけにはいかない」
「ずんだ味こそ至高」
「蒲焼味を提案しておくべきだった」
 瞬く間に売れて行って、ついに完売した。
「「「やったー」」」
 私たち三人は手を取り合ってよろこぶ。
「はい、二人とも。お小遣い」
「ずんねえさまありがと」
「わーいやったー」
 お祭りは三日間続く。ミニ屋台は一日で終り。
 あとの二日間は稼いだお金で遊べる。
 二人でなにして遊ぼうか。
 屋台の片付けを終えると、
「じゃあ私、運営のところへ行ってくるから」
「先に帰ってるね」
「ずんさん、お疲れ様」
 私たち二人はずんねえ様に別れを告げて家路についた。

 その後の残りの二日間は楽しかった。
 ウナちゃんと食べあいっこしたり、祭りの催し物を見たりと楽しい日々を過ごした。
 お小遣いは二人で考えて、花火にした。
 今私たちの前で、ずんねえ様が花火の準備をしている。
 みんな浴衣だ。イタコお姉さまも今日はきていた。
 目の下にクマがある。ちょっと怖い。
 仕事で大変な目にあったのかな。苦労を察した。
 ずんねえ様はライターで大きなろうそくに火をつけた。
「はじめるよー」
 私とウナちゃんは顔を見合わせて頷く。
 手持ち花火に火を点けた。
 シャーっといった音とともに、綺麗な花が咲いた。
「わー」
「イタコ姉さん、えーい」
「ぎゃあああああ、やめてえええええ」
「ずんねえ様、人に花火を向けてはいけません」
「私仕事で疲れてるのよーーーーーイタコだけに」
 大丈夫そうだった。でも人に向けてはいけない。
 私たちは二人はじっと立って花が咲いていく姿を見る。
 幸せな時間。
「きり。明日帰るね」
 それがウナちゃんの一言で崩れた。
「え、なんで」
 また退屈な日々が始まる。
「明日なにして遊ぶ?」
「ゲーム」
「うん。いいよ」
 それから私たち4人はだべったりしながらたくさん花火が終わるまで騒いだ。

 今日はウナちゃんとゲームをする時間だ。
 モンスターを狩る仕事をしている。
 二人して熱中した。
 気づいた時にはすでに昼になっていた。
 ずんねえ様がそうめんを作ってくれていた。
 私たちはそれに舌鼓を打った。
「ねえウナちゃん、駅まで送り迎えいる?」
「いいえ、必要ないです」
「また来れる? 私お盆のときは仕事忙しくてあまり会えなかったわ」
「はい、また来年どうですか」
「ウナ、ゼッタイ来いよ」
「うん。きりもよろしくな」
 ウナちゃんが帰りの荷物をまとめた。
 私たちはそれぞれにお土産を持たせる。
 私のはきりたんぽ。ずんねえ様はずんだもち。イタコお姉さまはお守りだ。
 ウナちゃんは玄関に立って、言った。
「じゃあな」
「また来てね」
「今度はお盆じゃないときに」
「でも祭りは行きたい」
「ああ、きり。また行こうな。バイバイ」
 ウナちゃんはそういうと家を出て行った。
 私たちも外に出て、ウナちゃんが見えなくなるまで手を振った。
「まったなーーーーーーー」
 見えなくなって家の中に戻る。
 私はなんだかつまらなくなって、部屋へと向かった。
 ベッドに倒れこんで、いつもの天井を見た。
「なにかしたいな」
 ウナちゃんじゃなくても良い。
 あいつら(すいとか)と遊ぶのも良いかもしれない。
 そうだ。あいつらをゲームに引き込むのも良いし、あいつらもなにか良いこと知っているのかもしれない。
 そんなことを考えていると、部屋の戸の前に人の気配がした。
「きりたん。ゲームは……」
 ずんねえさまが戸を開けると同時に私は立ち上がった。
「ゲームは一日一時間ですね、ずんねえ様」
 それに、外でゲームするなら文句は言われはしないだろう。
「え? ……え?」
 私が元気よく立ち上がったのを見てずんねえさまは驚いていた。
「ずんねえ様。あいつらと遊んでくる!」
「え? ……あ、気をつけてねー」
 私は部屋から飛び出し、驚いてぎょっとしているイタコお姉さまを押しのけ、外に出た。
 外では、太陽がサンサンと輝いている。
 ちょっと前の私では怖気づいたが、今はもう敵ではない。
 夏休みの間、あいつらと遊びつくそう。私はそれを胸にして、家を出た。    END

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

『とうほくびより!』2/2

「きりウナ」の物語です。
 きりたんがウナちゃんと夏休みを迎えて、少し成長するお話かな。

 楽しんでくれたら幸いです。


 このお話を作って私自身の技術も少し成長できたように思う。
 これからも精進していきたいです。

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投稿日:2019/09/01 17:01:33

文字数:2,755文字

カテゴリ:小説

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