ふと目覚めると、僕はひとりだった。
まわりを見回すと、そこは黒く塗りつぶされた真っ暗な部屋。
何も見えない、何も聞こえない、本当に何もない闇の空間。僕はひとりで震えた。
目が慣れてきたのか、天井に大きな穴が見えた。
もっとよく見れば、その穴には巨大なぜんまいがあった。
何故こんな所にこんな巨大なぜんまいが?
ぼんやりとそう思っていると、そのぜんまいのある穴から、得体の知れぬ不気味な声が突如響いた。
「罪深き少年よ。
お前はこの先永遠に、この部屋からは出られぬ」
と、その声は言った。
その瞬間、僕は全ての記憶を思い出した。
自分が生まれた代償に母親の命を奪った事。
姉のわがままを増長させた事。
ある青年が愛した人の心を奪った事。
愛した人を自ら殺した事。
悪逆非道の王女の身代わりとして、民を欺いた事。
自らが重ねた罪の数々を思い出した。
それと同時に、ここにいる理由と結末に気づいた。
そして、もう、あのころには戻れないのだと。
ふと気づけば、赤い手錠が両腕にはめられていた。
それはきっと、誰かの流した血の色なのだろう。
そう、亡国の革命への為に流した、真っ赤な血。
両の足首には青い色の鎖がはめられていた。
それはきっと、誰かの涙の色なのだろう。
そう、心から愛した人を失った喪失感の、悲しみの涙。
「るりらるりら」
と、どこからか聞こえてきた歌は、誰が歌う子守唄なのだろうか…。
どれほどの時が流れたのだろう。
動かぬぜんまいに尋ねても、答えは返ってこない。
しかし、どこからともなく聞こえてくる歌声だけが僕を癒してくれるのだった。
ある日僕は気づいた。
「るりらるりら」と聞こえてくる、その歌の真実の意味を。
そして僕は子守唄に、新しい言葉を付け足した。
『君は王女 僕は召使』
ぜんまいの隙間から、ポツリと落ちてきた小さな温かい光。
それはきっと、
君がくれたメッセージなんだ…-――
ずっと動かなかったぜんまいは、ゆっくりと廻り始めた。
廻り始めたぜんまいは静かに語った。
「罪が消して許されることはない」
だけど、『水』という言葉、『悪』という言葉を。
僕らは、それらを唄へと変えよう。
赤い手錠が外れ、優しく僕に語りかける。
「これからあなたは生まれ変わるのよ」
青い足枷が外れ、僕に力強く話しかける。
「今日が君の新しいBirthday」
世界のすべてがぐるぐると廻り、そして視界が白く染まる。
さあ、もうすぐ君に会いに行くよ…。
待っててね…リン…
「『鏡音レン』、今やっと起動しました。全て正常に動いています」
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当小説はmothy_悪ノP様の「悪ノ娘」、「悪ノ召使」の二次創作です。
mothy_悪ノP様には全く関係はございません。
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独自の解釈を多く含みますので、それを嫌悪する方は見ないことをお勧め致します。
何か問題等ありましたら言ってください。...【二次小説】悪ノ国ノ物語~Ⅰ~

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