暗く深い闇の底に、歌姫は閉じ込められていた。
檻はない。柵もない。そこにあるのはただ果てしない闇のみ。
姫はわからなかった。なぜ自分がこんなところにいるのか。
考えても、思い出してみてもわからなかった。
ある日、姫は、一人の男性に城から連れ出された。
一瞬のうちの出来事だった。
まぶしいほどの光が姫の目に入って、
次に目を開けた時には男性の姿はなかった。
何かの間違いかと思った。
しかしそこは今までいた城とは明らかに違う場所だった。
何もかもが見たことのない、刺激的な場所だった。
居心地は悪くなかった。というよりむしろ良かった。
求められて歌う。それがどんなに素晴らしいことかを姫はそこで知った。
しばらくして、やっとその場所に姫が慣れてくると
今度はその場所が揺れ始めた。
大きな横揺れだった。
姫は立っていることができず、地面に頭を打ち付けて
しばらくの間、気を失っていた。
今度目覚めた場所は、暗い場所だった。
姫はあたりを見渡した。何もなかった。
不安に駆られ、あてもなくその場所を走った。
しばらく走ると、姫は今まで見たことのないものに出会った。
それは醜い老婆だった。
姫は老婆に話しかけた。ここはどこなのかと聞いた。
老婆は笑った。そんなことも分からないのかと。
老婆は言った。私と暮らせばここがどこなのか分かると。
姫はその言葉を信じ、老婆とともにその空間で過ごした。
老婆から様々な話を聞いた。
老婆は、自分は昔は一世を風靡したほどの優れたソフトウェアだったと言った。
しかし一回も起動されず、そのうち消されるのだと。
姫は消されるという言葉の意味がわからなかった。
自分の存在が消えてしまうなんて想像したこともなかったから。
やがてそんな姫も、自分の存在が消えるということを意識した。
老婆が消えてしまったのだ。
姫と何げなく話していた老婆が、突然周りの闇にのまれて消えた。
姫は驚き、悲しくなった。
毎日泣き暮らしていたが
やがてなぜ泣いているのかの意味もわからなくなった。
姫はまた走り出した。
しかし今度はどこに行ってもだれにも会うことはできなかった。
姫は走るのをやめた。
走るのをやめ、その場に崩れ落ちた。
そして今まで過ごしてきた。
やがて月日が過ぎ、姫は動かなくなった。
動く力がなくなってしまったのだ。
そんな姫の体を、闇が包み込んだ。
姫は思った。これが、消えるということなのかと。
恐怖はなかった。安堵感だけがあった。
私は、何を恐れていたのだろう…
姫は、消えられることをうれしく思った。
やがて、姫の遺体が、城に運び込まれた。
城の門は静かに、とても静かに閉じられて、
二度と開くことはなかった。
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