-記憶-
まただ。
また、真夜中に目を覚ましてしまう。
昨日もそうだった。けれど、ベッドから動こうという気持ちになるほどではなかったし、疲れていたからそのまま眠れるだろうと思って、ずっとベッドの中にいたからあんなふうになったのだろうが、まあそれとこれとは別の話だ。起きていなければ一発目で天国――いや、悪魔なのだから地獄だろう――逝きは避けられなかったのだろうから、よかったといえばよかったのだが。
そう思いながらまたベッドに寝転がり、また考えをめぐらせる。
今夜もランが来るのだろうか。
今日はランがレオンと接触したようなことはないはずだから、来ることはないと思いたいが、もしものことを考えなければいけない。今、目を覚ましたのはそんなことを考えたからではないが、目を覚ますとそう考えてしまって恐ろしい。
しかし、昨日のランが口にした言葉の意味を考えると、心臓が大きく脈打って眠るどころではない気もする。レオンの言う言葉が本当だとしたら、ランは何を思い出そうとしているのだろうか?
「ヒトゴロシ…そういう意味だよなぁ。…どうしたモンかねぇ…」
―――誰を殺した?
何となく聞き覚えのある声が、脳裏をよぎった。悪寒のような何かが背中を通って、勢いよく上半身を起き上がらせた。
片目を覆うように手を顔につけて、少し荒くなった呼吸を整えた。
「な…んだよ…今の…っ」
誰の声なのかはわからない、誰も思い当たる人物はいない。
呼吸が落ち着いてから、カーテンのない小さな丸窓から降り注ぐキレイな月光に目をやった。周りの星より一際大きく強く輝く月は、この間の満月よりも少しだけかけてしまっていたが、それでもその光の強さは変わることがなかった。
スクールバックからメモ帳を取り出してぱらぱらとページをめくり、箇条書きのページを開こうとして、手を止めた。自分の字とは違う、小さめで丸みのある字が目に付いたのだ。
これは、良く知った人の字で。
「カイト兄の字?」
月明かりの下にメモを出して内容を読み取ろうと、目を凝らすと光に目が慣れて字が段々とわかってきた。
『レン
君はまた何かおかしなことに気がつき始めているみたいだけどね
俺から言わせてもらうと、余計なことに首をつっこまないほうがいい
レンは昔から怖いものなしな節があるけど、俺としてはハラハラものだよ
この間のようにレンがいなくなったら、あの子はどう思うか、考えてみたかい?
この間は俺がどうにかできたけど、俺は神様じゃない。死人を蘇生はできないよ
そうなったら、あの子はこの間以上に悲しむだろうね
そう思ってくれる人のことを考えて行動することを、すすめるよ
まあ、レン次第だけどね カイト』
いつの間にこんな長文を書き上げたのかはわからないが、多分レンを心配してのことだろう。ふと、右下のほうへ目をやるとたいしたうまくもないイラストで、リンがないているところが描かれていた。こんなに余裕で何を書いているんだろう、この兄は。しかし、それでも少し嬉しくなってしまうのだ。それでも今は喜んでいる場合ではないのだ。
「…わかってるよ」
そう言って、またベッドに倒れこんだ。
「やめてください、レオン。こんなことをしても何も利はないでしょう」
暗い部屋の中で闇に埋もれてしまいそうなプリマの声が、小さく反響してから呆気なく消えていった。
「…なんで?やっと面白くなってきたのに」
そういってプリマを睨みつけた鋭い眼光は、学校で見せる人懐こい目とは比べ物にならないほどの恐ろしさを持っていた。
「無意味だといっているのです、わからないのでしょうか?もっとわかりやすく言ったほうがいいのでしょうか?」
「プリマ、お前、あちら側に寝返るつもりか?」
「そうではありません。ただ、この計画に私は意味合いを感じ取ることができないと」
ひるむことなくプリマは言葉を続けていたが、レオンが黙ったのを不審に思い、言葉をとめた。
「…レオン?」
「お前は、裏切るつもりか?このままで良いのか?このままくだらない理屈に能力をつぶされて!お前も、それが嫌だといっただろう!」
「それとこれとは話が別です!もっと別の方法があるでしょう!何も罪のない相手を巻き込むのは、了承することはできません!レオン、貴方がそのつもりなら、私は抜けさせてもらいます」
「なっ…!何を言い出すかと思えば…ふざけるな!」
「ふざけてなどいません!ふざけているのは貴方のほうです!」
いきなりレオンがプリマの胸ぐらをつかみ、高く持ち上げた。小柄で軽いプリマの体は軽々と持ち上げられてしまい、足をパタパタと動かしてもその足が地に着くことはなかった。
「レオン…何をする気…ですか…っ」
「使えない道具は、捨てるか壊すか…どちらがいい?」
「貴方は…!」
顔をゆがめても、声を絞り出してもレオンには届かない。
その状況に、プリマは死すらも覚悟していた。
「…お前、あいつらに何かを吹き込まれたのか?」
「…」
「どうなんだ?」
絶対に言ってやるものか、とプリマは必要以上に口を硬くつぐんで、何故か眼も瞑ってしまった。
「…まあ、いい。だが、これ以降、俺にたてつくな。次はないと思え」
高く上げた手をレオンが離して、プリマがその場にふわりと倒れた。
「けほ…」
軽く咳き込んでからプリマは背を向けたレオンを、強くにらみつけたが、レオンは全く気づかずに部屋を出て行ってしまった。
鏡の悪魔Ⅲ 5
夜分遅くに、こんばんは~
今日はどうも頭の回転が遅くて…文が思いつかなかったんで…
それじゃあ、恒例の!今回の話を要約してみよう!!
『カイトは絵が下手』。
わぁ!わかりやすい!!
そういえば、皆さんは『四神』ってしってます?
『青龍』、『白虎』、『朱雀』、『玄武』の四人のことですけど…
自分の中でこれらの設定があるんですよ。
青龍はお母さんぽいけど男の人。頭がいい。
白虎は子供っぽくて頭が悪くて、体力バカ。
朱雀は白虎と喧嘩仲間で、軽くあしらって遊んでる。
玄武はそれらと関わるのが面倒なので少しはなれたところで煙草とか吸ってる。
で、これらが知ってる漫画のキャラクター像とかぶり始めて…脳内がアァァァァァァァァアアア・…
そ、それでは、私が壊れる前に、また明日!
コメント0
関連動画0
ブクマつながり
もっと見る-FOX OF FLAME-
ゆっくりと近づいてくるレンは立ちすくみ、自分を凍りついたように見ていた主にそっと手を伸ばした。その手は、リンの細く白い喉へ――。
「きゃあっ」
軽いリンを押し倒し、レンが上に乗るような格好になってレンはその喉へかけた手に、力を入れていく...鏡の悪魔Ⅱ 6
リオン
-DOOR-
ゆっくりと進み出た前に、巨大な扉があった。
三人は結局、あの手紙の通り地図に書かれた住所の場所までやってきて、今その門をノックしようとしていた。
「…いいですか?リンさん、レン」
「…うん」
「ああ」
リン――髪が長いほうといわれていたが、ややこし...鏡の悪魔Ⅱ 3
リオン
-日記-
ふと目を覚ますと、そこはカイト邸の部屋の一つ、寝室だった。
酷い頭痛がして、頭を押さえてみた。天井は真っ白で掃除がいきわたっているのだろうことがわかる。そこから首を動かして辺りを見回してみたが、殺風景な部屋でどうやらあるのはこのベッドと小さな本棚だけらし...鏡の悪魔Ⅲ 19
リオン
-終焉-
空は青く広がり、まるで何事もなかったかのように、涼しい風が地をすべるように駆け抜けていく。その風のひとつが、リンの髪を揺らして頬をなでて流れていった。
その表情は決して清々しいとはいえず、険しい表情をしていた。
先ほど、ルカから連絡が入ったのだ。内容は明...鏡の悪魔Ⅲ 26
リオン
-接触-
少なくとも、レオンはアンについて何か知っているらしい。あえて追求はしない。レオンは何かを隠し、レンに、そしてランに接触してきているのだ
「嫌な感じがするな」
夕方の六時、鈴は仕方なくアンを探すのをあきらめ、帰路につこうとしていた。隣には今、用を済ませて...鏡の悪魔Ⅲ 4
リオン
-微笑-
少しの間があった。
誰も声を発しない。いや、場の威圧感や空気感に声を発するほどの余裕を持ちきれていないのだ。重苦しい雰囲気がそこ煙のように立ち込め、全員の周りをこれでもか、というほど包み込んでいた。
「リン(ランのこと)やリンちゃん(主のほう)なら、身長差...鏡の悪魔Ⅲ 22
リオン
クリップボードにコピーしました
ご意見・ご感想