長い長い螺旋階段の終わりにあるのは、
どこにでもある普通のドア。
でも、この先にいるのは、どこにでもいる訳じゃない、
僕のたった1人の家族だ。
レンは、走ってきた勢いでドアを開けた。
「リン!!!!」
そこには……誰もいなかった。
「何で……、リン!?」
レンは慌ててあたりを探す。
散らばった書類、光るライトテーブル、脱出用のハッチ。
そして、レンはガラス越しにリンを見つけた。
リン。
レンは核融合炉へと続くドアを思い切り開けた。
開けた瞬間、ぶわっと熱風が吹いた。
あまりの熱さに一瞬、目をつぶる。
再び開いた時、そこにいたのは、ずっと探し続けた
たった1人の家族、リンだった。
リンは橋の手すりに座り、青白い光と
焼けるような熱風を、もろに浴びていた。
その光で、自分と同じ黄色の髪が、今は白く見える。
リンは、顔色ひとつ変えずに底の方を静かに見つめていた。
「リン」
その声で、ようやくこちらに気づいたリンはゆっくりと
こちらに顔を向け、ここに居るのがレンだと分かると、ひどく驚いた。
「レン……なんで此処に」
「リン、迎えに来たよ。一緒に帰ろう、家へ」
レンが一歩歩み寄った、その時だった。
「来ないで!!!!」
リンが叫んだ。
「リン……何で?」
「ごめんなさい、レン。でも聞いて。
私は、ここに居ちゃいけない人間なの」
リンは、涙を目に溜めていた。
そして、震える声で続ける。
「この融合炉をつくったのは、私。
これのせいで、たくさんの人が死んだ。
実験段階で27人、試験稼動段階で19人。
そして、この前の臨界爆発で約500人。
私は、この2年でこんなにも人を殺しているの。
こんなちっぽけなものの開発のせいで、500以上もの尊い命が奪われたのよ?
しかも、これはまだ不安定なまま、ここに有る。
こんなに意味のないことなんて、他にあるかしら?」
レンは、神妙な顔つきでリンを見ていた。
「消えるしかないって、そう思った。
この融合炉だけじゃなく、私も。
私が居れば、もしかしたらまたこんなものが生まれてしまうかもしれないから。
幸い、融合炉の開発データは私の方ですべて抹消できた。
これで、融合炉をつくる方法を知るのは私だけになる。
もちろん、データ自体にロックをかけていたから、複製やコピーはありえない」
リンは、そう言いながら、どこか諦めたように笑っていた。
「ねぇ、レン?レンは、私がここにいたこと
許してくれるよね?」
「リン……」
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