俺のウェーブパッドへ声が送られている。
その声を、俺は知っていた。
「ミク……!?」
その瞬間、俺の脳内を一気に情報が駆け抜けた。
寝ぼけて忘れてるんじゃねえよ。馬鹿か俺は。あれだけの現象をよ。
「生きてたのかッ!? っていうか何なんだよアレは! いい加減説明してくれ! プリーズインスト!」
しかし、声は返ってこない。もやもやと残響みたいな感覚だけが僅かに伝わってくる。
……どうなってんだ……? さっき声聞こえたよな……?
まさか幻聴? せっかく思い出したってのに、やっぱりまさかの幻ですか!? そりゃないぜ!
『……ザザ……、ぼろ……じゃ、……ないです……』
……んぅ? なんだか音量が小さいなぁ。俺はスピーカーのボリューム欄を、くいっと上昇させる。……これでどうだ……?
『ザザ……、やっと繋がりました!! マスター!!!』
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!」
とんでもないボリュームだった。ヘッドホンではないため、ウェーブパッド越しに特大音声がぐわんぐわん鳴り響いた。
あまりにびっくりして、ひっくり返った俺。ケツとか腰とかめっちゃ打った。あと、隣の部屋から壁ドン食らった。騒がしくてすんませんマジで。夜中の0時だもんなぁ……。ただ、一言言わせてもらうなら隣の203号室のヤツ。毎週末あっはんうっふんやってんの聞こえてるからな。リア充め。とりあえずお前は死んでこい。それにしても壁薄いと気ぃ遣うよなぁ。……とまぁそれはともかく。
「生きてたんだな……。ミク」
『ええ、そうですね……、ってマスター! なんて恰好してるんですか! ひゃああああ!!』
なんかまた頭の中でうるさいことになっていた。とりあえず俺は頭痛を堪えつつボリュームを正常値まで戻した。
「恰好……? お前のせいでずっこけてんだろうが」
あんなとんでもボリュームでシャウトしやがって……。死ぬかと思ったぜ。
『ちちち違いますッ!! そんなことじゃなくて……、あの……、その……!』
ミクはディスプレイの中で何故か顔を赤らめていた。
ディスプレイに自身を映し出す技術もさることながら、そのAIのほうも恐ろしい性能だ。
エロ方面の言葉も解して恥ずかしがるなど、法律で禁止されているような思考すら会得している可能性がある。これはこれで実に興味深い。
『どうして服を着ていないんですか!? マスター!!』
………………。
「ふぅ……」
俺はとりあえず溜息をついた。全く。何を言っているんだろうか、このAIは。
「よく見ろ。俺は服を着ているだろうが」
「上だけじゃないですか!! 下もちゃんと穿いてください!」
「馬鹿野郎ッ!! そんなことしたらパンツが汚れるだろうが! ベトベトになるだろうが! お前、頭おかしいんじゃねえか!?」
「うえーん!! マスターがおかしくなっちゃいましたーー!!!」
「おかしくねえッ! 極めて正常だろうが! 正常極まりないだろうが!」
俺の主張も虚しく無視され、ミクはというと泣きべそを掻いていた。
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俺は仕方なくズボンを引っ張り上げ、ミクを宥めることにした。
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