UV-WARS・ミク編#024「VOCALOID対侵入者」

投稿日:2018/05/01 07:42:25 | 文字数:4,248文字 | 閲覧数:102 | カテゴリ:小説 | 全3バージョン

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構想だけは壮大な小説(もどき)の投稿を開始しました。
 シリーズ名を『UV-WARS』と言います。
 これは、「初音ミク」の物語。

 他に、「重音テト」「紫苑ヨワ」「歌幡メイジ」の物語があります。

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UV-WARS
第二部「初音ミク」
第一章「ハジメテのオト」

 その24「VOCALOID対侵入者」

 少し前に話を戻す。
 テッドの家の前に、灰色の乗用車が横づけになった。
「もう一度確認する。制限時間は10分だ。時間内に対象を運び出せなかった場合は、対象の存在を確認し、ただちに撤退する」
「了解」
「イエッサー」
 車の中から車と同じ灰色の作業繋ぎを着た三人の男達が降りてきた。
 二人は小型の斧を持って家の周りを走り出した。
 そして、慣れた手つきであらゆる電線を切断し始めた。
 残った男は家の周囲、四隅に妨害電波を発する機械を設置し始めた。さらに小型の機械を取り出し、何かを探していた。
「オーケーだ。残りは屋内のバッテリーだけになった」
 そのとき、ガラガラと音を立てて、一斉に窓という窓の全てのシャッターが下りた。
「うおっ?」
 一人の男が声を上げた。
「ちっ、全部、シャッターが降りたか…。おい、確認してこい」
「了解」
 二人の男は素早く家の周りを回って戻ってきた。
「玄関以外は全部…」
「やはり、な」
「どこかでモニターしてるんでしょうか」
「停電を台風と判断して自動でシャッターが下りるとか」
「わからんが、壁に穴をあけるのは時間がかかりすぎる。玄関を破壊して侵入する」
「了解」
「イエッサー」
 三人の男たちは、斧を手に持ち、玄関に回った。
 玄関に立った時、カイトの声が流れた。
「鍵を開けるときは、合い言葉をどうぞ」
 リーダーらしい男はただ「やれ」とだけ声を発した。
 二人の男が同時に斧を振るってドアを破壊した。
 三人が玄関の中に入ると、大きなサイレンとルカの声が響いた。
「侵入者に警告! 直ちに立ち去りなさい すでに警察には通報済みです」
 リーダー格の男は、内ポケットからサイレンサー付きの拳銃を取り出し、音を出しているスピーカーを撃ち抜いた。
 同時に、ドサッと天井から一枚の板が落ちてきた。
「なんだ?」
 男は怪訝そうに落ちてきた板を見つめた。男が屈んだそのとき、リーダー格の男が声をかけた。
「迂闊に触るな」
「へ?」
「対泥棒用鳥もちだ」
「泥棒ホイホイ、だよ」
「あ…、あれですか」
「シートをかけろ」
 男はデイパックから折り畳んだブルーシートを出して広げた。
 落ちてきた板を覆った時、ガタッと大きな音がした。見ると、廊下の所々が黒い口を開けていた。
「明らかに…」
「モニターされてますね」
「時間がないのに」
「ラダー(梯子)、取ってきます」
 男が一人、玄関から出た。
「ちょっと試してみますね」
「あ、ばか、動くな」
 男が一人、穴を飛び越え廊下の板の上に着地した。
 次の瞬間、その板が割れて男は大きな甕の中に落ちた。
「うわっ!」
 とぷんと男が水の中に落ちる音がした。
「だから、動くな、と言ったのに」
 もう一人の男は、慎重に床を叩きながら前進した。
 床の穴の中は、コンクリートの打ちっ放しだった。それでも、念のため、棒のようなもので何度か叩いて、罠がないことを確認すると甕の中の男を引っ張り上げた。
 甕に落ちた男は平謝りで頭を下げ続けた。
 外に出た男はかなり長い梯子を持って戻ってきた。
 そのとき、玄関が閉まり、周囲が闇になった。
「おい、玄関は開けとけ」
「いえ、勝手に閉まりました。というより、シャッターが下りました」
「おい、ジャッキアップ、しとけ」
「イエッサー」
 水に濡れた男は、自分のデイパックを下ろして、小型の油圧式ジャッキを取り出した。
 梯子を持った男が前に出た。
 穴の開いた廊下の上に梯子が置かれた。
 同時に白い煙が辺りを満たし始めた。
 それは3メートル先の梯子の先端も分からなくしてしまうほど濃いものだった。
 男たちの正面にゆらりと人影が映し出された。黄色いリボンを頭にのせたアニメのキャラクターに見えた。
「ねえ、おじさんたち、泥棒?」
 少女の姿をしたCGが口を開き語りかけた。
 男は驚いたように指を向けた。少女に向かって。
 すかさずリーダー格の男が冷静に言い放った。
「無視しろ」
 男はその言葉に力を得たのか、掛けた梯子の上に、板を敷き始めた。
 白い煙は、手で振り払えば簡単に霧散してしまうものだった。しかし、すぐに奥から湧き出し男たちの周囲を充たしていった。
 一旦は消えた少女の姿が板を置いた男のすぐ横に現れた。
「ねえ、答えて」
 一瞬、男の手が止まりかけた。すぐに作業が再開されたのを見て、少女は肩をすくめてその場を立ち去る仕種を見せた。
 それは、あるはずのない、壁の中の通路を歩いているようだった。
 男は板を敷く作業を続けた。
 そのとき、振り向いた少女は右手に金属バットのようなものを持っていてそれを振り下ろした。
「うわっ?!」
 思わず男は声を上げたが、現実には何も起こらなかった。CGなのだから当たり前といえば当たり前だった。
 少女はくすくすと笑いながら言った。
「早く帰った方がいいと思うよ」
 そう言い残して、少女、鏡音リンは壁の中に消えていった。
 入れ替わりに、似たような服装の少年が現れた。
「おじさん、僕と遊ばない?」
 少年は両手を後ろで組んでいた。何かを隠すように。
 無視して作業を続けていると、少年は後ろに隠し持っていた拳銃を突きつけた。
 男は画像をちらっと確認したが、すぐに作業に戻った。
「えいっ」
 少年は引き金を引いた。
 少年の手に持った拳銃の銃口が光った。
 その銃口から飛び出したのは、無味無臭の、水道水だった。
「うわっ」
 男は驚いて一歩引いた。水は男の顎と首に掛った。
 少年は、拳銃を向けたまま立ち上がった。
「ねえ、後ろのおじさん」
 まさか、話しかけられるとは思わず、煙をどうやって取り除くか考えていた男は、不意をつかれて顔色を変えた。
 しかし、少年の声には返事はしなかった。
 少年は無邪気そうな笑顔で言った。
「今のが、ただの水でよかったねえ」
 少年の言わんとすることを察して男たちの顔色が変わった。
「引き返すなら、今だと思うけど?」
 煙に映ったCGのはずなのに、妙な迫力があった。
 リーダー格の男は一瞬躊躇した。
 そのとき、玄関でシャッターの開く音がして、外から光が差し込んできた。
 光に押されて、少年の画像が消えた。
 同時に玄関に設置された小型の送風機が煙を外に吸い出し始めた。
「おお、よくやった」
 リーダー格の男は玄関にいた男に声をかけた。
「残り時間は?」
「あと、五分です」
「では、前進しよう」
 そのとき、煙もないのに、正面の壁にピンクの髪の二十歳前後の女性の姿が映し出された。
「これが最後の警告よ。今すぐ立ち去りなさい」
 だが、その姿は壁の手前に置いてある網戸のようなものに映し出されたCGであることがありありと判るため、男たちは無視を決め込んでいた。
 その女性は背後から日本刀を抜いて、下段の構えよりさらに切っ先を床に近付けて構えた。
 先頭の男は、その剣先に目を凝らした。
「止まるな!」
 後ろのリーダー格の男の声に、前の男は歩幅を大きく開いた。
 次の瞬間、何かが前の男の背中をかすめ、ずんという鈍い音を立てて落ちた。
 振り返ってみると、それは16ポンドの黒いボーリングの球だった。
「うぇ、あっぶねえ…」
「ま、シロートにしては、ましなトラップだな。普通の泥棒なら、頭に当たって、気を失うだろう」
 気が付くと正面の女性のCGは消えていた。
「残り時間は、あと四分だ。急ぐぞ」
 男たちは突き当りを右に向いた。
 奥の部屋は一層暗くなっていた。
 男はマグライトをポケットから出し、あたりを調べ始めた。
 リビングの調度品が部屋を埋めていた。その向こうに引き戸が見えた。
 男はその引き戸を指差した。
「あの奥だ」
 もう一人の男は素早くリビングを横断し、引き戸を開け中に入った。
 狭い部屋の中でライトの光が激しく踊った。
「目標、ありません」
「本当か?」
 リーダー格の男が続けて中に入った。
 その時、黒い影がみしっと音を立てて男の背後で動いた。
 振り返った光が人の足を捉えた。
 影はリビングを出て台所に入るとバタンと扉を閉めた。同時に、どすんと大きな音とともに扉がみしっと音を立てた。
「ちっ、誰か、いる」
「そいつに目標を聞きますか」
「そうしよう。だが、時間がない。フェーズ2に変更だ」
「了解」
 もう一人の男が台所のドアのノブに手をかけて開けようとしたが、数ミリ動いてドアが止まった。
 何度か押したり、体当たりしたがドアはびくともしなかった。
 男は手斧を取りだし、ドアに叩きつけた。
「合板です。30秒で壊せます」
「よし」
 リーダー格の男は玄関の男に声をかけた。
「おい、フェーズ2だ。見張りを怠るな」
「了解です」
「おれは、念のため他の部屋を見てくる」
 リーダー格の男は風のように家の中を駆け巡った。
 台所のドアをほぼ壊し終えたところでリーダー格の男は戻ってきた。
「対象はいなかった。やはり、ここだな。資料らしきものがあったので、コピーした」
「じゃあ、あとは、フェーズ2だけですか」
 そのとき、玄関から別の男の声がした。
「警察車両がきます! あと1分ぐらいです」
「5秒で終わらせます」
 ドアを壊した男は、ポケットからデジカメを取り出すと、シャッターを押したまま、台所の中に手を入れた。シャッターを連続で切る音が台所に響いた。
 男はデジカメを引き戻し、撮影した画像を確認した。
「OKです。フェーズ2、終了です」
「よし、撤収する」
「予想より、早かったですね」
 男たちは足早に玄関に向かった。
「相手は年齢不詳の『妖怪』だそうだ。この程度で済んで、僥倖かもしれん」
「欲は出さないほうが…」
「そういういことだ。ジャミング発生装置は回収したか?」
「はい、持ってます」
 玄関を出ると残った男が車にエンジンをかけて待っていた。
「よし、出るぞ」
 男たちが車に乗ると、車は急発進した。
 男たちの車は、坂道を上がった所で国道と鋭角に交わっている交差点を、スピンターンで曲がり、テッドが乗った車をバックミラーに映して走り去った。その後ろにはパトカーと白バイが数台映っていた。

(プロフィールはありません)

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