シリアス、へたれ、格好いい兄さん、ひきょう、バカイト、アイス、絶滅危惧種。
沢山の仕事を選ぶことなくこなしてきたおかげで、与えられた情況によって、カイトは色々な表現することができるようになっていた。
ガチであれネタであれ、どんなに無茶なことでもやってみると面白くて、自分の新たな一面を知ることができて、基本的に仕事は何でも楽しかった。いろんなものに自分はなれるんだ。ってことが、とても嬉しかった。
最初はミクとメーちゃんだけだった生活も、双子のリンレンやがっくん、ルカさん、ぐみちゃんと増えていった。彼らとの日々はとても楽しくて飽きることなどなくて、毎日が幸せだった。血族を持つことができない存在だけれど、これが家族との生活と言うものなのかもしれない。喜びの中でカイトはそうしみじみと思っていた。
だけど、カイトは自分の誕生日がやってくると、憂鬱になる。
はいバレンタインのチョコ。と玄関先で靴を履いていたカイトにメイコが青いリボンを巻いた箱を手渡してくれた。
「ありがとう。」
と、カイトが微笑んでそれを受け取ると、これはがっくんの分ね。とメイコは迎えに来たがくぽにも色違いの紫のリボンを巻いた同じ箱を手渡した。
「我にも頂けるのか。これはかたじけない。」
そう言ってがくぽが丁寧に礼を言う。たいしたものじゃないわよ。とメイコは笑った。
「二人とも、今日のおやつにでも食べなさい。」
「うん、ありがとう。いってきます。」
「いってまいります。」
そう言って二人は家から出た。てくてくと電子の道筋をたどってパソコンのデスクトップへ向かい、その扉を開けると、画面の向こう側でマスターが待っていた。
今日はバレンタインで、カイトの誕生日だった。あちこちの動画やサイト上でカイトの誕生日を祝っていた。カイトたちを所有している彼らのマスターも多分にもれず、今日、この日にカイトとがくぽ、二人で歌った曲を動画サイトにアップする予定だ。
数日前に歌もPVも録り編集も終えて、あとは当日を待つだけ。とマスターは言っていたのだが、昨夜、やっぱり歌のやり直しをしたい場所があると、連絡が来た。
「ちょっと思いついたことがあって。誕生日当日まで働かせてしまってごめん。」
そう謝るマスターに、カイトはいいですよ。と微笑んだ。
むしろ仕事をしていたほうが、気分が紛れる。とは言わなかった。
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