『好きなんだろ?』
クラムにそう言われて正直驚いてた。他人に自分の気持ちを察される事等これまで無かった。どうも私は感情と言う物がよく解らない、本や映画を見て涙を流したり、悲惨な事件のニュースを見て怒ったりしている友人と見ても理解出来なかった。頭ではどう言う物か判るが感覚としてそれが何なのか思いも寄らなかった。
「…私が…浬音さんを…?好き…?」
「少なくとも俺にはそう見えたけど?嫌っちゃいないだろ?いつも気に掛けて、
守ろうとしてただろ。」
「…………………………………………。」
「…自分で解ってなかったのか?どう思ってたんだ?」
どう、と言われると一言では表現し辛い物があった。ただ心配で、目に入って…何時から…?最初は…そうだ、課題で彼女を抱き上げた時だろうか、あまりにも軽くて、弱々しくて、心配になった。とにかく元気になって欲しくて、笑顔で居て欲しくて、怯えてるなら恐がらない様に、泣いているならせめて涙を拭く位、何かしてやりたいと思った。
「クラム、好きとは何だ?」
「はぁ?!」
「お前の言う『好き』や『愛してる』と言う感情はどう言う物だ?」
「いや…そんな事言われても…。」
「お前は『リトルフラワー』が好きなんだろう?ならその感情はどう言った物かを
言ってくれれば良い、さぁ、頼む!」
「メモを用意するな!」
「判った、メモはしない、教えてくれ。」
「教えてくれって…。」
途端にクラムは顔を耳まで赤くして目を泳がせて黙ってしまった。聞き方がまずかったんだろうか?暫くすると溜息を吐いてから口を開いた。
「…優花の笑顔が見れれば、俺は幸せ。そんだけ。」
「笑顔?」
その一言で、頭の中でバラバラに散っていた物がストンと収まった様な気がした。元気になって欲しい、笑顔が見たい、恐がらないで、泣かないで欲しい、そこに居て、笑ってくれれば、それで幸せ。…成程…そう言う事か…。
「あ――!!もう!!何でお前にこんな事言ってんだよ!!本人にすら言ってないのに!!」
「此処を降りたら本人に言えば良い。」
「言えるか!馬鹿!」
「そう言う物ですか。」
「何?メール?」
「ええ。」
観覧車が地上に着くと、グリフォンと帽子屋の姿は無かった。代わりにメールで呼んだ彼女の姿があった。
「呼び出してすみません、花壇さん。」
「あのハレルヤさん…プレートを返して欲しいって言うのは?」
「ええ、私のプレートをクラムに預けて下さい。」
「え?俺?」
参ったな…自覚したと思った時には彼女の心は別に向いてる…。それでも…その笑顔が見れる事が幸せだと思う。
「私は貴女が好きです。貴女が彼を想う様に。」
「えっ…あ…あの…!」
「幸せになりなさい。彼と一緒に。」
「ハレルヤさん…。あの…ご、ごめんなさい!それと…有難う…ございます…。」
日が落ちて暗くなりかけた施設を少しくすぐったい様な感覚を覚えながら歩いた。
「良かったのか?」
「別に諦めた訳ではありません。彼女が泣く様な事があれば直ぐにでも奪いに
行きますよ。」
「おー頑張れ頑張れ。」
「取り敢えず今は…ゲームに勝ちましょうか。」
「うし、やるか!」
その手に互いのプレートを持ち、反対の手で互いの手を打つ、乾いた快い音が、そこに響いた。
DollsGame-124.ハシバミ-
(`・∀・)人(ー ̄ )ハイタッチ!
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もっと見る――Q.今までに死に掛けた事はありますか?
――A.多分今がそうだと思います。
「見――た――わ――よ――!!」
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「ちょ…!制裁って…!あっぶねぇ?!」
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