いつもは騒がしい茶猫家に、今日はピアノの音色が響く。

何事かと早く起き出した茶猫は、右手で三連符を叩き続ける人影を発見した。

(…ルカさんか)

真剣な表情で楽譜と鍵盤を交互に見ているが、ちゃんと弾けている。

(初見演奏ですか出来るんだ羨ましい)

おい、お前11年ピアノやってただろ出来ないのかよというツッコミはしてやらないであげてください。

それにしても、うちのルカさんは真剣な表情をしていれば美人なのにどうしてあんなにほわほわしてしまうのか。

とりあえず朝食を作るために台所へ向かった。


何があったっけな、と冷蔵庫の中身を確認する。

卵とロースハム。ハムエッグでも作っとけと言われているようだ。

でも目玉焼き面倒だから溶き卵で作ってしまおう。


ちゃかちゃかと卵を溶いていると、メロディーのテンポがだんだん速くなって、聴き覚えのあるものになった。

その曲名を思い出し、茶猫はルカの所へと走り出した。


ピアノの譜面台に置かれた楽譜の題名を見る。

そこに書かれていたのはやはり『L'adieu 』…
…日本語題、『別れ』。

誰とのことか、茶猫はすぐに気づいた。

うちのルカさんとはあまり交流は無かったけれど、寂しかったのだろう。


三連符は、悲しげに生まれては消えていく。


「ルーカさん、おっはよー!!」

わざと明るく大声で背後から肩をぽん、と叩く。

「ふおわあああああああ!?って茶猫かぁ…」

よっぽど集中していたらしい。気づいていなかったようだ。

茶猫はひょいっと楽譜を持ち上げ、ぱらぱらとページをめくり、とある曲のところに付箋を貼った。

「ルカさん、別れを悲しむのもいいけど、また会う日のために準備をするのもいいよね。というわけで、これ練習していてよ」

渡された曲の題名を見て、ルカは笑顔でこう言った。


「とびっきり上手く弾けるようになっておくね‼︎」



さて、曲名は何だろう。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

L'adieu

去り征くちずさんへ、うちのルカさんより。

いつかまた、会えると信じていますね。

閲覧数:184

投稿日:2014/12/07 12:10:02

文字数:822文字

カテゴリ:小説

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  • ゆるりー

    ゆるりー

    その他

    ルカさん(´ ; ω ; `)
    ただし題名はわからぬ

    一応
    【五線譜(15)】
    *思い出の曲が書かれた五線譜
    *私は読めない

    2014/12/07 14:05:34

    • Tea Cat

      Tea Cat

      題名はまた会う日まで秘密なのだ。

      五線譜は大切にするよ??

      2014/12/07 15:53:13

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