なに、男にも事情があったかもしれないって?
は、どんなに事情にしたってそんな男――……、あ、でも、そういえば変な噂あったなぁ。
リリィちゃんが亡くなってから、まだそんなに経たない頃のことなんだけどさ。
確か、七月の末だったと思う。その日たまたまうちの店に来た女子高生が三人いてさ、偶然、こんな話を耳にしたんだ。


― ― ― ―


「ねーねーハク、八月の一日空いてる?」

「は、八月一日ですか?えっと、確か空いてたと思いますけど……」

「マジで?じゃあさ、よかったら花火見に行かん?もちろん、ルカとウチとハクと猫ちゃんの四人で!」

「は、花火ですか!是非行きたいです!!しかもそんなに大人数で……」

「大人数って程でもないけどね、はは。四人だし」

「いや、三人だ」

「さ、三人?あ、もしかしてルカ、お前行かないとか言うんじゃないだろーなー!毎年恒例の儀式をさぼるなんて部長であるこのウチが認めないぞ」

「儀式ってなんだ……」

「新入部員とキャッキャウフフして親睦を深めるスーパーウルトラな交流イベント!いつもやってることじゃんよ!」

「あー、はいはい」

「今年はね、結構期待してるんだよ!ハクちゃんという清楚なお嬢様もいる事だし!人数は多ければ多いほど楽しいんじゃん!だからルカ、お前が来ないなんて許さないよ!」

「いや、なにも行かないなんて言ってないだろ。私の話を聞け」

「へ?」

「行けないのは私じゃなくて猫村だよ」

「えぇ!?よりにもよってあの真面目な猫ちゃんが?」

「今年は彼氏と行くとか言ってたな」

「か、かか、かかっか彼氏!?」

「あ、そういえば猫村先輩、そんな事言ってましたね。『人生初!やっと彼氏出来たー!!』って喜んでました」

「ま、マジ?」

「マジです」

「……ゆ、ゆるさねぇ」

「え、ちょっと先輩」

「俺より先に……彼氏作ってんじゃねぇよぉ!!」

「先輩!キャラ変わってますよ、先輩!!しかも『俺』って!?」

「グミはどっちかっていうと、男気な性格だから。感情が高ぶるとすぐこうなる」

「そ、そんな隠れた一面が!?」

「ちなみにこうなったら20分は男モードのままだ」

「男モード!?」

「こんなだから彼氏の一人も出来ないんだよ。いい加減自覚してほしいんだけど」


20分後――。


「はぁ……しっかし、そろそろ真面目に彼氏の一人でも欲しいな……。そう言えばハクちゃんは彼氏とかいるの?」

「そ、そんな、彼氏なんていないですよ。というか、作るとお母さんに怒られるんです。そういうのはせめて大学入ってからにしなさいって」

「どんだけ!?いくら家のルールが厳しいったって、恋愛禁止は酷いでしょ!」

「もう慣れてるから大丈夫ですよ。好きな人もいないから平気ですし。ルカ先輩はいないんですか?」

「私?いないかな」

「あーダメダメ、ルカは見ての通りドライだから。むしろ男の方から逃げてくよ」

「む、失礼な」

「だってホントの事だしー。ルカって、例えイケメンに告白されても絶対照れたりしないでしょ?むしろ真顔で断りそう」

「う……失礼ながら想像できてしまいます……」

「ま、実際そうだしね」

「そうなんだ!?え、告白されたの?誰に!?」

「中学の時、同級生に」

「ま、真顔で断ったんですか?」

「まぁね」

「それ、相手絶対トラウマになりますよ……」

「じゃあさ、じゃあさ、どんな男子に告白されたらドキってなる?学校の中で、一人くらいはいるでしょ?」

「いないな」

「即答!?もっと真面目に考えて!」

「真面目に考えたからこその回答だけど」

「マジで!?つまんなっ!」

「でもそういうとこ、ルカ先輩らしいですけどね」

「まぁ、確かに……。でも恋バナ盛り上げようよー。女の子らしく恋バナしたいんだよー!」

「じゃあグミはいるのか?好きな人」

「え、う、ウチ?いや急にフられても……えーっと……い、いないよ!」

「いるんだな」

「ギクッ!!」

「グミの事だから……、そうだなぁ、さしずめ神威君あたり?」

「ギクギクッ!?」

「当たりだね」

「なんで分かんのさ!何それ超能力?それとも手品?」

「ん、適当に言っただけだけど。私の勘って当たるんだね」

「ルカ先輩、ちょっと怖いです……」

「ホントだよ!クールなキャラだけにピタリと当てる所とか怖すぎるよ!」

「いやいや本当にただの勘だから。しかし、神威君か……へぇ、神威君ねぇ」

「なに、ウチが神威君の事好きじゃダメ?確かに神威君には彼女いるけどさぁ」

「あぁ、ミクだっけ?」

「違う違う。同じクラスのリリィって子。よく一緒に話してるの見るじゃん」

「え?でも私この間、ミクと神威君が一緒に駅の近く歩いてるの見たけど。しかも手繋いで」

「う、嘘!?」

「いや、本当だよ。だからてっきり、私はミクと付き合ってんのかなって思って」

「あ、そういえば、私もそれ見たと思います。学校の帰りに生徒会長と手繋いでるの見ました!男子生徒の方は分からなかったですけど……『神威君』って名前呼んでたから、多分そうなのかと」

「え、えぇええ!?」

「もしかして……、二股、でしょうか?」

「もしそうだったらえらいこっちゃだよ!!」

「で、ですね……」

「リリィちゃんとはもう別れたんじゃない?それでその後ミクと付き合い始めたとか」

「そうなのかなぁ……」

「あるいは、複雑な事情があって、二股せざるを得ないとか」

「どんな事情だよ!」

「んー、例えばの話だけどね。最初は神威君もリリィちゃんと付き合っていたけど、その後に神威君はミクに告白された。彼女がいるからって断った神威君だけど、ミクは彼をどうしても諦めきれなくて、神威君を何らかの方法で脅して、無理矢理付き合う事にさせた!!とか」

「あぁ、なるほどそういう事か。あるあ……ねーよ!」

「ないか」

「ないですね」

「けど、私の勘は世界で一番当たっちゃうんだぜ」

「なにちょっとキメちゃってんの!?しかもそれは勘じゃなくて妄想って言うんだよ!」

「ま、確かに妄想だな。でも、仮にそれが現実で起きてたとしたらどう?」

「ねーよ。まさか生徒会長がそんな事するはずないし」

「そう?ミクって表ではあんなほわほわキャラだけど、権力はあるからね。それに、裏では平気でエグい事するって噂もあるよ。それこそ、ナイフで脅したり、弱み握ったり」

「いやいやいやいや、さすがにないっしょ!」

「ないか」

「ないですね」

「はいはい、ルカの妄想話はもう終わりって事で。花火大会の話に戻すか――」

……。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

セルフ・インタレスト ―あとがき― 2/3

誤字脱字、ストーリーの矛盾点などありましたら教えていただけると助かります……。

閲覧数:64

投稿日:2012/08/13 01:08:47

文字数:2,775文字

カテゴリ:小説

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