こんなガラクタを拾ってくれた―――キミが居るから。
*
卒業式。
できれば迎えたくなかった、学校最悪のイベント。
なんでお別れしなきゃならないの。
あたしは、皆が大好きだったのに。
ベッドから起き上がり、制服に袖を通す。
ああ、この制服とももうお別れなんだな―――
いつもはシュルシュルとすばやく着替えるけど、今日はゆっくり、らしくなく感謝をして制服を着た。
いつも3つも曲げているスカートも、今日は2つ折にしようかな。
スカートが短いっと声を上げる生徒指導の先生の顔を思い出して、またらしくもなく思い出し笑い。
今日くらい、怒らせないであげたい。
だって、お別れなんだから。
流行の歌が響いて、スマホがメールを知らせた。
「誰だろ」
〔件名〕Re
〔本文〕いよいよ卒業だな。泣くなよー(笑
ミヤだった。
確かメール送ったの一昨日だよね?
「ホント、返信遅いよね」
またしてもらしくなく恋する乙女であるあたしにとっては、ちょっと寂しいことでもあって。
スマホをポケットに滑り込ませると、急いで家を出た。
*
「おせーよ」
「…駄目なの?」
ばか、とだけ言ってミヤはスマホでなめこ栽培を始めてしまった。
なんでこんなときまでなめこ?と思いながらあたしまでなめこ栽培を始める。
アプリって楽しいね。うん。
開け放たれた窓からは、春の香りがした。
まだ殺風景な校庭を見て、思う。
ああ、卒業なんだ。
校庭の季節の移り変わりなんて目にもくれていなかったけど、もっと見とけばよかった。
もっと思い出作っとけばよかったな。
今更言ったって何にもならないんだけど。
名残惜しい、とか切ない、ってこんなことだろうか。
感傷的な気分になるには、あたしはまだ幼なすぎた。
けれど、幼さゆえの価値観だってある。
幼さゆえの大切な事だって、たくさんある。
でもあたしは大人になりたかった。
意味もなく、大人に憧れていた。
それが大きなものを失う原因だと分からずに。
そして分からないあたしはまだまだ子供なのだった。
あたしはガラクタだ。
大人になりたがって、背伸びして、背伸びばっかりしてるから、どんどん汚くなっちゃうんだ。
ならミヤは宝物だ。
あんなに素直で、輝いてるから。
子供だってことを認めているから。
子供であることを大切にする人だから。
ガラクタはガラクタとくっつくのが筋ってものでしょう。
キラキラ輝く宝物には、汚い手を伸ばしてはいけない。
大人になったフリをした、汚くて、小さな手で。
つかめるものは、なんだろう?
「グミ?」
「…ぁ、ごめんミヤ。なんか言った?」
「大丈夫?ボーっとしてたけど」
「ん…大丈夫」
へんなの、と笑ったミヤはすっごく無邪気で。
ああ、こいつはやっぱり素直で人のいい奴なんだな…と思ってしまう。
「てか、平気なフリすんなよ」
「は?」
「絶対なんか抱えてるだろ。我慢すんなよ」
「…早く大人になりたい。でも卒業は嫌だな、と思って」
「ほっといても大人になれんじゃん?自然が一番じゃね?」
「…うん」
ミヤは宝物で、あたしはガラクタ。
その証明をミヤが意図せずともした。
分かってるよ。分かってる。
だから、それ以上、言わないで。
*
卒業式は終わってしまった。
泣くもんかと歯を食いしばっていたおかげで泣かずにすんだ。
こんなの、ホントのあたしじゃないのにな。
「グミせんぱぁぁぁぁぁぁぁい!」
「わっリンちゃんっ…と、糞バナナ」
「せっかく祝いに来たのに最後までそれかよ」
「グミせんぱい、卒業しないでぇぇぇ!留年してぇぇぇぇ!」
「リンちゃん、泣かないの。またいつでも遊びに行くから」
大粒の涙をぽろぽろ落とすリンちゃんは、やっぱりミヤと同じ宝物なのだろうか。
すましているレンはあたしと同じガラクタなのだろうか。
彼らはきっと戸惑うだろう。
けれど絶対、レンは最後にはリンと同じ宝物になれる…気がする。
外はこれでもかって言うくらいの快晴。
風が春を運んでくる。
「…泣けよ」
ミヤが頭の上に手を置いた。
こんなに大きかったっけ。
入学したときはあたしより小さかったのに。
頭の上に全神経が集中する。
心臓が故障するんじゃないかな――
「オレら、まだ15だし、ガキじゃん。平気なフリなんてすんな。泣きたいときは泣けばいいと思うけど」
「…っ…ミヤの…ばかっ」
あたしは泣いた。
みんなと離れたくない。
卒業したくない。
教室で、風に吹かれて語り合った日がいつまでも続くと思っていたのに。
先生の授業を聞き流して手紙交換したり、喋ったりする日が。
ミヤとじゃれながら、ドキドキする日が続くと思っていたのに。
みんな違う道を歩いていってしまう。
みんなで同じ道を進むことはできなくて。
「ひとりは…嫌だ…!」
あたしは、誰よりも子供で、誰よりもガラクタだった。
けれど今、ガラクタを卒業したような気がした。
ほんの少し、綺麗になった手で、ミヤを掴めるだろうか。
「…オレが一緒じゃん」
「…ぇ?」
「高校。ひとりじゃないだろ?」
「そう、なの?」
ミヤはあたしより頭が悪かったのに。
「なんでだと思う?」
「がんばったんだね、将来のためにって思う」
「違うし」
「じゃあなんで?」
「――好きだから、じゃね?」
立ち尽くした。
大人になったフリをしたこの手は、確かにミヤを掴んでいた。
今は、少し綺麗になったこの手で。
「ホントは…あたしも…」
ミヤと手を繋いでみた。
宝物のミヤの手につられて、あたしも宝物になれないだろうか――
本当は誰よりも子供だってことをミヤは知っていたのかもしれない。
そして、救ってくれたのかもしれない。
だとしたら――
校門をくぐるとき、大きく手を振った。
「ばいばい!」
学校、そしてガラクタのあたし。
今からあたしは、宝物になります。
葉のひとつもない並木道が、どこまでも続いていた。
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