第四話 ―いったりきたりの花魁道中―
「そこのお嬢さん」
レンは一瞬誰のことかと思ったが、すぐに自分のことだと理解した。
振り返ると、警察官らしき男性が2人立っていた。
「はい。何でしょう」
リンの声マネをする。
「先日、万引きをしていませんでしたか?」
「はい?」
「何人かの目撃情報から、君じゃないかと思うのだが」
「セーラー服、プリーツミニスカート、頭のリボン、身長、見た目年齢。すべてぴったりだ。事情を聴く必要がある。さあ、これに乗りたまえ」
警察官はシンプルな小さめの黒い馬車を指す。
「いえ、私は…」
「そういうのも署で聞く。さあ、こっちに」
レンは腕をつかまれた。
「ちょ、ちょっと…」
無理やり馬車に押し込まれ、馬車は出発した。
なかなか帰ってこないレンを追いかけてきたリンは、物陰から全て見てしまった。
「ど、どうしよう。レンが…」
自分に身に覚えのない罪ではあるが、自分のせいでレンが連れて行かれてしまった。
今は取りあえず宿に戻り、ミクたちに知らせねばならない。
「ミク姉!」
「リンちゃんはいた?」
「つ…、連れて行かれた…」
「え?」
「警察官に連れて行かれた」
「何で!?江戸は政府の許可が下りないと街の人たちに無断で手出しはできないはずなのに…」
「それって、もしかして…」
「もしかして…?」
「誘拐かもしれませんね。警察官を装っているだけかもしれません」
「は、早く追いかけないと!」
3人は宿を飛び出した。
「ここからどっちに行った?」
今、あのおまんじゅうのお店の前だ。
「西の方。早くしないと。向こうは馬車だからな…」
「うん!」
馬車は急停止した。
ドアが開く。
馬車から出ると、そこは見たこともない『街』だった。
そして突然腕をつかまれ、建物の裏へ連れ込まれた。
「え?ちょっと、ここどこですか!?」
「遊女たちが集まる吉原の隣の街、梅原だ」
「聞いたことないですし、署に行くんじゃなかったんですか!?万引きをしたっていうのは嘘だったんですか!?」
「何を言っているんだ。お前はこれから俺たちに雇われて働くんだ」
後ずさりをする。
冷たい笑みを浮かべながらこちらに向かってくる。
これほどの恐怖感を覚えたのは初めてだ。
「大丈夫だ。君ぐらいの美人ならすぐ『呼び出し』の位をもらえるさ」
「いやです。返してください」
男たちに背を向けると手首を強くつかまれ、後ろ手に縛られた。
そして栗色のマントを着せられた。
「これから、お前は自分の意志でここへ来た設定で行動してもらう。下手なことしたら…」
首を強くつかまれ、倉庫に叩きつけられた。
痛くて苦しい。
「命の保証はしない」
冷酷な声だった。
表へ出て3人は歩き出した。
綺麗な着物を重ね着した女性が新造を連れて、あるいは男性と一緒に歩いている。
とても華やかな光景なはずだが、レンには色あせて見えた。
少なくともこんな目にあったのがリンではなくて良かった。
こんなところで人生を終えたくはないが、逃げ出す手段を見つけ出せない。
何かチャンスがないと―――。
などと、いろいろ考え事をしていると、赤い椿の髪飾りをした白い椿模様の着物の女性が話しかけてきた。
「ちょっとあんたら、その子誘拐してきたんじゃないだろうね。すごく考え事をしてるみたいだけど」
レンは、自分のことかと顔をあげた。
「んな訳ないじゃないですか零子さん。何を言ってるんですかぁ」
悪い冗談はよしてくださいと男性たちは笑いとばす。
こいつら…。
「最近そういうのばっかりだからさ。普通、自分の意志で来る子はいろいろ観察するからキョロキョロしてるはずだから、怪しいのには声をかけているんだよ。悪いね」
「気にしないでください」
女性は歩いて行ってしまった。
「ふぃー。あぶねぇ。零子さん慧眼だな」
「零子さんはよく観察してるのさ。よく街を歩いてるけどあれは防犯のためらしいな」
今なら、女性のもとへ走って逃げれば助かるかもしれない。
これにかけるしかないか―――。
次回に続きます。
コメント1
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ご意見・ご感想
しるる
ご意見・ご感想
めーちゃーん!!ww 花魁とか色っぽ過ぎるって…わぁ///
零子は源氏名みたいなものですねww
そうなの?背中に零ってついてるの?初めて知ったww
しかし…奉行所の者と名を偽って、悪事を働くとは不届き千番!
この桜吹雪が目に入らぬかぁぁぁ!!どど~ん!!www
2012/05/30 01:17:08
june
わあぁぁぁ!!
お奉行様!!
お許しをぉぉ!www
2012/05/30 20:51:21